立憲民主党の本多平直議員の発言のヤバさと気持ち悪さについて。
- 立憲民主党の本多平直「50歳の自分が14歳と同意性交で捕まるのはおかしい」
- 刑法・児童福祉法・青少年保護育成条例上の年齢制限
- 本多平直「成人と中学生が真摯な恋愛関係の性交を罰するのは望ましくない」は現行法上正しい
- 「12歳と20歳代でも真剣な恋愛がある」は現行法上アウト
立憲民主党の本多平直「50歳の自分が14歳と同意性交で捕まるのはおかしい」
「14歳と同意性交、捕まるのはおかしい」立憲議員発言:朝日新聞デジタル
複数の関係者によると、5月10日に開かれたWTで本多平直衆院議員(56、比例北海道ブロック)が「例えば50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」と発言した。同月下旬のWTでも「12歳と20歳代でも真剣な恋愛がある」「日本の『性交同意年齢』は他国と比べて低くない」との趣旨の意見を述べたという。
「複数の関係者」ではなく、具体的な名前が出て事実関係を認めました。
立民、性交同意年齢めぐる「50歳が14歳と」発言削除 - 産経ニュース
寺田学座長はWT後、記者団に、50代議員が5月10日の会合で「成人と中学生が真摯(しんし)な恋愛関係になった場合、性交をすることは自然なことで罰するのは望ましくない」と主張する中で、「50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」と発言した事実を認めた。
「50歳近くの自分が14歳と同意性交で捕まるのはおかしい」
以外にも
「12歳と20歳代でも真剣な恋愛がある」
という発言をしていたというのは驚きです。
性交と年齢に関する現行法上の規制を確認します。
刑法・児童福祉法・青少年保護育成条例上の年齢制限
大阪府青少年条例「18歳未満とは真剣交際以外は処罰対象」は間違い - 事実を整える
刑法上では、強制わいせつ・強制性交等・準強制わいせつ及び準強制性交等・監護者わいせつ及び監護者性交等の罪について、13歳未満の者に対しては同意が無いものとみなす扱いが為されています。
では、13歳以上は?というと、児童福祉法や各地方自治体の青少年保護育成条例なんかの名前が付いている条例で、別途18歳未満の者との「淫行」や「淫行をさせる行為」の禁止が規定されています。
児童福祉法
第四条 この法律で、児童とは、満十八歳に満たない者をいい、児童を左のように分ける。
省略
第三十四条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
六 児童に淫行をさせる行為
東京都青少年の健全な育成に関する条例
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 青少年 十八歳未満の者をいう。
(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない
では、「淫行」とはどういう意味なのか?について、福岡県の条例での話ではありますが、その他の条例でも妥当すると考えられている有名な最高裁判決があります。
最高裁判所大法廷 昭和60年10月23日判決 昭和57(あ)621 福岡県青少年保護育成条例違反事件
本条例一〇条一項の規定にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。けだし、右の「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、「淫らな」性行為を指す「淫行」の用語自体の意義に添わないばかりでなく、例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものをも含むこととなつて、その解釈は広きに失することが明らかであり、また、前記「淫行」を目して単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは、犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであつて、前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で、前叙のように限定して解するのを相当とする
「心身の未成熟に乗じた不当な手段or自己の性的欲望を満足させる対象と扱う」
これらが認定される場合に罪となることを判示しています。
「婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係」があれば処罰対象ではない、とは言えますが、「それらが無ければ処罰対象である」という関係ではありません。
本多平直「成人と中学生が真摯な恋愛関係の性交を罰するのは望ましくない」は現行法上正しい
したがって、本多平直議員が「成人と中学生が真摯(しんし)な恋愛関係になった場合、性交をすることは自然なことで罰するのは望ましくない」と言っている部分は、現行法上の理解としてはただしい「ことに」。
もっとも、「50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」という部分は、本当に真摯な恋愛関係があると言えるのか?という話になってしまいがちであり、不要な例示だと思います。
「12歳と20歳代でも真剣な恋愛がある」は現行法上アウト
他方で、本多平直議員は「12歳と20歳代でも真剣な恋愛がある」とも発言していたと朝日新聞が報じていますが、これは現行法上アウトなので、「刑法改正しましょう」という信念が無ければ言っちゃダメな発言です。
もちろん、法的な観点では無く、素朴な概念上はそうした状況もあり得るでしょうが、法的には「真剣な恋愛」は無いものとされ、処罰対象です。
性交同意年齢は判断能力の未熟な青少年を性的に保護するために設けられたものですから、それを否定するなら相応の根拠を論じるべきでしょう。
結局、本多平直議員は現行法体系のことなんて何も知らずに、漠然とした感覚で発言していただけだったということだと思います。
そこに信念なんて無いし、国民生活に対する思慮ではなく、もっぱら自己の欲棒から現実が離れているのが嫌だっていう性質の発言としか思えません。
性交同意年齢については現行法上の規制の運用と現在の改正議論を踏まえて発言するのが大前提であって、本多議員のようにお気持ちだけ論じると言うのは、立法論としてもアウトなわけです。
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