事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

家族会「石破首相が連絡事務所や合同調査委員会の設置を説得したとの記事は不正確、家族会から不賛成とお伝えした」

拉致被害者家族会を石破叩きの道具にしたのか

北朝鮮による拉致被害者家族連絡会「新聞記事は不正確」

救う会:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

西岡力(救う会代表)
 みなさん、こんばんは。今日の報道で色々なことが出ています。私は一昨日、石破総理から就任挨拶の電話をいただきました。岸田総理からも、菅総理からもいただいていましたので私的なものではないのですが、その内容がニュースになるようなものではなかった、というのが私の認識です。

 横田代表にも早紀江さんにも電話がありましたので、それぞれのお話も踏まえながら石破政権にどういうことを期待しているのかについて、まず家族会の皆さんにお話ししていただきます。

~中略~

◆連絡事務所設置で誤報

 最後に、西岡会長からもお話がありましたが、一部の新聞記事で石破首相が家族会に対して連絡事務所の設置や合同調査委員会の設置を説得したという形の記事が出ていますが、これは正確ではありません。

北朝鮮による拉致被害者家族連絡会=家族会は、「石破首相が家族会に対して連絡事務所の設置や合同調査委員会の設置を説得したという新聞記事は不正確」としています。

7日付の当該頁では「救う会」の東京連続集会で話された内容が掲載されています。

家族会から連絡事務所や合同調査委員会の設置には不賛成とお伝え

 10月2日17時30分少し前に、石破首相からお電話を頂きました。私からは首相就任の祝意を伝えた上で、「私から一言お伝えしても良いですか」と断りをした上で、「どうぞ」と言われたので、「家族会としては、連絡事務所の設置や合同調査委員会の設置には賛成していない」ということを私の方からお伝えしました。総理側から「そういうことをする」と私たちが聞かされたのではありません。一部の新聞記事はニュアンスが異なっているので、その点は皆様方にもご理解を頂きたいと思っています。

 今、日本でも首相が代わって、アメリカでも大統領選がまもなくあるという国際政治の力学、動きが変わろうとしていますので、こうしたチャンスは北朝鮮にとってもチャンスになるかもしれませんので、私たちは原則論を曲げることなく貫いていく。そして皆さんも、「私たちの同胞を全員返せ」ということを言い続けること、これを皆様にも引き続きお願いしたいと思っています。

石破総理から一方的に言われたのではなく、家族会の方から先に連絡事務所や合同調査委員会の設置には不賛成である旨を石破総理にお伝えした、ということです。

西岡力、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会代表も注意を促す

【第1189回】「北に連絡事務所」に反対する理由 « 今週の直言 « 公益財団法人 国家基本問題研究所

「首相が理解を求めた」は不正確
 私は、石破氏が首相になれば日朝間の水面下での交渉経緯や、日本政府が持つ被害者情報を閲覧するはずだから、連絡事務所設置という持論を実行することをためらうはずだと考えている。だから、私は10月2日に石破首相から電話をもらった時、これまでの流れをよく知ってほしいという話をした。
 4日、産経新聞は一面トップに「『北に連絡事務所』意向伝達 拉致家族会へ」という見出しの記事を掲載、「石破首相が拉致問題の解決に向け、東京と平壌に連絡事務所の開設を検討するという自らの考えを家族会側に説明し、理解を求めた」と報じた。
 石破首相が2日に横田代表にかけた電話の内容を伝えたものだが、実は首相はその電話で連絡事務所について家族会に理解を求めようとしたのではない。横田代表は3日夜、救う会が開いた集会で「石破首相が家族会に連絡事務所の設置や合同調査委員会の設置を説得の形で伝えたという報道は正確ではない。首相から電話をもらったので、こちらの側から家族会が設置に賛成していないことを伝えた」と説明した。

北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会代表=救う会の代表である西岡力氏も当該報道に注意を促しています。

家族会を利用して石破叩きをする産経新聞、デスクや編集の情報発信力の濫用か

<独自>石破首相「平壌・東京に連絡事務所」構想を拉致家族会に伝達、理解求める - 産経ニュース

この10月3日付の記事で産経ニュースは「石破茂首相が北朝鮮による日本人拉致問題の解決に向け、東京と平壌に連絡事務所の開設を検討するという自らの考えを拉致被害者家族会側に説明し、理解を求めたことが分かった。」と書いていました。

7日に救う会全国協議会の集会が行われた際に既にこの報道について言及があったので、それまでに産経新聞に対して何らかの申し入れがあったのですが…

「北に加担」石破首相の日朝連絡事務所案に家族反対の理由 誰が常駐?家賃は?机上の空論 - 産経ニュース 2024/10/8 12:29

8日には再度、こんな記事が。3日付の記事に関する訂正などもなく(3日付の記事そのものにも何ら訂正文言が存在していない)、その中で同種のこの記事を出しているのはどういう神経をしているのでしょうか?

拉致被害者家族会を石破叩きの道具にして、いったい何のつもりでしょうか?*1

自民党総裁選で石破茂氏が提唱するも総理就任後の政策としては未定段階だった

なお、「連絡事務所や合同調査委員会の設置」については、9月の自民党総裁選において石破茂氏が提唱していました。

石破氏が政策発表 地方創生や「防災省」創設 自民総裁選 2024年9月10日 20時10分 NHK

が、総理就任後の政策としては未定段階でした。

3日付の産経記事が書かれる前の外務大臣会見録では以下の質疑応答があります。

岩屋外務大臣会見記録|外務省 (令和6年10月2日(水曜日)15時00分 於:本省会見室)

【産経新聞 原川記者】ありがとうございます。北朝鮮による日本人拉致事件や拉致問題に関してお伺いしたいと思います。石破総理は、前の総裁選において、拉致問題の解決に向けて、東京と平壌に、日朝双方が連絡事務所を開始すると、そういう考えを示されたのですけれども、この考えというのは、もう石破政権の外交方針になっているというふうに理解して良いのでしょうか。また、その場合は、日本側の設ける連絡事務所の規模や日常業務内容、また、いつ頃までに開設する考えなのか、というのも併せてお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【岩屋外務大臣】拉致問題の解決は、やはり最重要課題の一つだと思っておりまして、それは、石破政権においても、しっかりと取り組んでいかなければならないと思っております。
 今、御指摘のあった、連絡事務所という話は、様々なアプローチのアイディアの一つとして、述べられたということであって、具体的にこれから石破政権ができて、どのようなアプローチしていくか、何が現実的で、最も効果的なのかということは、しっかりと政府全体で検討して進めてまいりたい思っておりますので、それが、今の段階で、既定路線になっていることではなくて、ありとあらゆる方法・手段を、真剣に模索していきたいと思っております。

家族会等との調整を経ずにこうした不安を与える案を論じ出した石破氏の落ち度があることにはあるのですが、総裁選以降、「石破叩き」であればインプレッション数が稼げるとして誤報や無理筋なロジックによる非難があまりにも多いと思います。

その「嵐」によって被害を受けるのは現実の政治、生身の人間なわけで、情報発信力の濫用による影響力を楽観視してはいけないと思います。

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*1:この手の内容の報道は他のメディアからも出ているが、産経新聞の3日付の記事が初出