事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

共産党推進の投票日当日の棄権防止活動:政府「棄権防止運動は候補者名や政党名があれば選挙運動になり得る」答弁

共産党が推進・常態化している

福山和人候補「投票日当日の棄権防止活動は誰でもできる」

令和6年=2024年の京都市長選挙において、共産党が支援する福山和人弁護士が「投票日当日も棄権防止活動は誰でもあらゆる方法で行うことができる」と投稿。

他の自治体では投票の呼びかけや啓発について「特定の候補者を支持している人等がすると選挙違反のおそれ」があるとしていることから、候補者本人によるものは禁止されている選挙運動に当たるのでは?という疑問が相次いだため、京都選管や府警の認識を伺うと「情報収集に努める」ということでした。

詳しくは以下。

4年前の京都市長選でもSNSに投票呼びかけ電話投稿

実は、福山氏は4年前の京都市長選でも投票日当日について、SNSに投票呼びかけ電話をしている投稿がありました。

つまり、この際は「お咎めなし」だったということですが、それは京都の警察・選管の公選法の解釈としてこのような行為は違法ではない、という判断なのか、それとも証拠が集まらないために立件できなかっただけなのかはわかりません。

選挙運動の定義「間接的でも得票誘導等が対象」

選挙運動の定義は「その選挙につきその人に当選を得しめるため投票を得若しくは得しめる目的をもつて、直接又は間接に必要かつ有利な周旋、勧誘若しくは誘導その他諸般の行為をなすこと」という判例があります。*1

そのような認定をするための考慮要素としては①選挙が特定されていること、②特定の候補者の当選を図っていること、③選挙人=有権者に対して働きかけること、というものがあるのが一般的です。

さらに、自治体によっては明確化して「投票行為を勧めること」という限定がある場合もあるようです。

これらについては以下で詳述しています。

共産党が候補者陣営に推進している「棄権防止活動」

投票日−棄権防止のよびかけは自由にできます

日本共産党は、「棄権防止活動」は自由にできるとして広く呼び掛けています。

上掲ページは「候補者陣営」に向けられたものであることは明らかで、どうも、こういう行為が常態化しているようです。

すると、各所との認識のズレが気になってきます。

政府答弁「棄権防止運動は候補者名や政党名があれば選挙運動になり得る」

第24回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第4号 昭和31年2月14日

○中川(薫)政府委員 これは何回もはっきり申し上げているのですが、棄権防止運動そのものずばりは選挙運動でございません。政治活動でも原則としてないと理解しております。ところが、棄権防止運動のうちで、当該選挙に立候補されている方の名称が記入されてあったり、政党名が記入されてある場合におきましては、選挙運動になり得る文書であることがある。こういうことを申し上げておるのであります。

昭和31年の政府答弁では、「棄権防止運動は候補者名や政党名があれば選挙運動になり得る」というものがあります。この時は文書で行う方法についての説明でした。

電話で行う方法に関する政府答弁は、どうやら無いようです。

ところで、政府答弁には「棄権防止『運動』」とあり、「棄権防止『活動』」はありません。

逆に、共産党のHPでは「棄権防止『活動』」となっており、「棄権防止『運動』」とあるページは存在しません。

もしかすると共産党は政府の用語法を意図的に無視しているのかもしれません。

架電の対象者が支持者、陣営内部なら投票日当日の選挙運動ではない?

共産党から除名された日本共産党暗黒の百年史の著者である松崎いたる氏は、今回は電話の対象を「市民の皆さまに…」としているところに注目しています。

確かに4年前はどうも元々の支援者らを念頭に記述されている雰囲気があります。

ただ、このような理屈でOKだとすると、整合性が採れないのではないか?

そもそも選挙運動の定義として「間接的であっても必要かつ有利な誘導・その他諸般の行為」が対象なので、そこに「支援者相手だから」とか「元々自分に投票する予定だった人だから」という免責事由が生じるという理解はおかしい。むしろそういう人に対する投票呼びかけは、自分に投票する期待値が高いので、間接的な誘導そのものではないか?

更に、対象者が支持者・陣営内部の人間なら違法ではなくなるという理屈だと、SNSで不特定多数の者に呼びかけてる形になっているのはアウトということになる。当該選挙区の有権者も見る可能性は高いのに。
※一般的な理解だと「選挙人=有権者に対して働きかけること」ではないためにSNSの投稿は見逃されているのかもしれません。

が、それが為されているのは、「支援者だったら架電内容を警察等にバラすことは無い=証拠化されない⇒立件されることはない」という計算があるのではないか?

投票日当日も棄権防止活動は誰でもあらゆる方法で行うことができる?

これは街頭演説・駅前の辻立ちとの平仄もかかわってきますが、福山和人弁護士が「投票日当日も棄権防止活動は誰でもあらゆる方法で行うことができる」と投稿しているのは、さすがにおかしいのではないでしょうか?

彼自身が具体的にどういう会話をしていたのかは抜きにして、本当にそれが可能ならもっと駅前などにタスキをかけず、幟も無い状態で投票日当日に辻立ちして「投票に行きましょう」と呼びかける候補者が居てもおかしくないですが、そんなの見たこともないでしょう。

公選法の運用には整合性に疑問符が付くものがあり、不思議な世界なのでよくわかりませんが。

以上

*1:最高裁判所第3小法廷 昭和38年(あ)第984号 公職選挙法違反被告事件 昭和38年10月22日・最高裁判所第3小法廷 昭和60年(あ)第608号 公職選挙法違反 昭和63年2月23日