自衛官3等空佐が民進党小西ひろゆき参議院議員に対して「国益に反する」旨の発言を行った件で、「国民の敵」と言ったか否かなど、両者の見解が食い違う展開になりましたので確認していきます。
自衛官3等空佐の発言
産経新聞に自衛官の供述全文が載っているので引用します。
自衛官3等空佐の発言要旨
重要な点は以下2点だと思います。
- 「国益を損なう」「ばか」などの発言をしたが、「国民の敵」とは言っていない
- 小西議員は「謝罪してもらえるんだったら、特に防衛省に通報したりとか、そういうことはしないから」と発言
とくに2番目は小西氏の発言と比較しましょう。
具体的な発言がどうだったのかを確認したい方は産経の記事か以下の発言の概要を見ればいいでしょう。
自衛官3等空佐の発言の概略
細かいやりとりを省いた自衛官と小西氏のやりとりを抜粋。
凡例:自:自衛官(3佐)。小:小西議員。警:警察官。
自「国のために働け」
小「国のために働いています。安倍政権は、国会で憲法を危険な方向に変えてしまおうとしているし、日本国民を戦争に行かせるわけにいかないし、戦死させるわけにもいかないから、そこを食い止めようと思って、私は頑張ってやっているんです」
自「俺は自衛官だ。あなたがやっていることは、日本の国益を損なうことじゃないか。戦争になったときに現場にまず行くのは、われわれだ。その自衛官が、あなたがやっていることは、国民の命を守るとか、そういったこととは逆行しているように見えるんだ。東大まで出て、こんな活動しかできないなんてばかなのか」
小「あなたは現役の自衛官なのか。現役の自衛官が、そんな発言をするのは法令に反する」
自「私の発言は、自衛官の政治的行動に当たりません」
小「名前と所属を言いなさい」
自「言いません。なんで言わないといけないんですか」
小「現役の自衛官がそんな発言をするのは許されない。これは大問題だ。名前と所属を言いなさい」
自「いいえ、言いません。今は、一国民として私の思いを伝えています」
小「撤回しなさい。現職の自衛官がそんなことを言うのは問題だ。防衛省の人事局に今から通報する」
自「何が悪いんでしょうか?」と類似するような言葉
自衛官は再び駆け足に戻ろうとたが、それを止めるように小西議員が電話をしながら少しずつ自衛官から離れていき、小西議員側の向かいの交差点にいた警備の警察官に以下発言
小「お巡りさん、お巡りさん、現役の自衛官が・・・、来てください、来てください、お巡りさん!」と警察官を呼ぶ。
自「あなたは国民を代表する議員でしょ。私なんかよりも、何倍もの力を持っていて、なんだってできるのに、なんで一国民が訴えていることを聞いてくれないんだ」
小西議員は、電話をしており、私の話には取り合ってくれないような状況
自「あなたはなんで権力をかさに着るようなことをするんですか。国会議員だったら、一国民が言っていることをちゃんと聞くぐらい、いいじゃないですか。本当にそういう行為(人の話を聞かない、すぐ通報する、すぐ警察を呼ぶという男らしくない行為)が気持ち悪い」
小(電話)「私は参議院の小西ですが、今、現職の自衛官と名乗る男性から私のことを罵倒したり、冒涜するような発言をしている者がいます。これは大問題ですから・・・」と通話
警「駆け足の途中で寒くないですか」「どうする、謝っておくかい?」
自「はい、もちろん。ご迷惑をおかけしましたし、ぜひ謝りたいです」
小西議員側の話が終わった様子
自衛官から事情を聴いていた警察官が小西議員と会話。その後、自衛官にに対し
警「もし何か言うことがあれば、今この場で言ってもらえるといいと思いますよ」と仲を取り持つ発言
小「あなたのさっきのような、人格を否定するような罵ったところとか、私の政治活動を冒涜するようなこととか、そういったところを謝罪してもらえるんだったら、特に防衛省に通報したりとか、そういうことはしないから」
自「個人の尊厳を傷つけるようなことと、考えの違いはあるかもしれませんが、日々日本を良くしようとがんばっている政治活動を冒涜するようなことを言ってしまい、大変申し訳ありませんでした」
小西議員が自衛官に対し70年前に総理大臣を殺して226事件や515事件など、クーデターが起きたことを踏まえ、シビリアンコントロールが大事というような趣旨のことを話す。
小「あなた、どう思う?」
自「勉強になりました」(歴史ではなく一連の案件を通じて)
重要なのは、警察官が近くに居て両者の発言を聞いていたであろうということ。
民進党小西ひろゆき参議院議員の言い分
こちらも産経新聞が掲載しています。
小西洋之議員の発言の要旨
自衛官の発言と齟齬が生じる部分について書きます。
- 『「国民の敵」と言われた。防衛省の豊田硬事務次官や武田博史人事教育局長の発言がある。物証がある』と発言
- 物証は電話の発信履歴と小西から電話を受けた際の武田人事教育局長の手書きのメモ
- 小西議員は豊田氏、武田と自らが「国民の敵」と言われたと電話で話していた
https://t.co/6EhJrMJp9b
— 小西ひろゆき (参議院議員) (@konishihiroyuki) 2018年4月24日
私は「国民の敵」と発言された時の相手の表情まで覚えている。数分後に電話した豊田事務次官は、私が電話で国民の敵の旨の通報をしたと明確に証言している。同様に、武田人事局長が私からの電話について「国民の敵」と書き取ったメモもある。組織的隠ぺいは許されない。
小西「国民の敵と言われた」⇒豊田次官、武田教育局長認識⇒武田メモ
という流れということですね。
小西洋之議員の発言の概要
小西議員の発言。こちらは文章を途中省略しつつも丸々引用します。
いくつか証拠があり、当日事件が起きたのが午後8:40くらいだが、8:49に電話の発信歴があるが、私は、防衛省の豊田(硬)事務次官に電話している。事務次官は私からの電話の中で、私から「国民の敵」「なになにの敵」だという発言は間違いなくあったと認めている。
ー中略ー
事件の直後だが、武田(博史)人事教育局長が私と携帯のやりとりをしていて、武田局長は明確に「私が国民の敵という暴言を受けた」ということを証言をし、今日の防衛省の発表の文書にもあるが、私は「国民の敵」という暴言を受けたということを彼が当時、メモに記録をしている。さらに、事件の現場を私はタクシーで立ち去ったが、タクシーの中で知り合いの弁護士に電話している。その電話の中で私がたった今、現職の自衛隊員から「国民の敵」という暴言を受けたということを明確に記憶して、それは証言も話すということは言ってくれている。
ー中略ー
--小西が豊田次官に「国民の敵」だと言われたと言ったのか
小西氏 はい。ただ、言われない限り、私も豊田事務次官に「国民の敵」と言われたということは言わないから。また、武田局長にも言いませんから。私からそういう電話を受けたということ、2人は明確に認めて、かつメモという物証もある
小括:国民の敵と言ったか?
2点、問題があります。
自衛官は国民の敵と言ったか?について
以上みてきたように、「国民の敵」という文言を豊田次官や武田教育局長に対して最初に言ったのは小西議員自身です。この時点で、自衛官⇒小西のやりとりの中で小西議員側の聞き取り時に誤解が生じた可能性があるということは分かるでしょう。
そのこと自体は問題ではありません。正直、国民の敵と言った言わないの議論になるでしょう。
問題は、小西氏がそのような経緯であるにもかかわらず、「証言がある」「物証がある」などと発言をしているということです。自衛官⇒小西⇒豊田・武田という伝達経路に過ぎません。豊田・武田両氏が仮に証言をするとすればこうなります。
豊田・武田:【小西氏が『自衛官は「小西は国民の敵だ」と私に言った』と言っていた】
こんなものはいわば再伝聞証拠でしかなく、「物証がある」などとは言いません。
また、この事案の場合に想定できる「物証」は、例えば自衛官の発言を録音していたとか、自衛官が始末書等で自筆で「国民の敵と言いました」と書いていたとかが考えられます。また、他の有力な証拠としては、現場にかけつけた警察官が自衛官から小西議員に対して「国民の敵」と言っていたことを聞いていたなどの第三者証言があるということです。
しかし、そういった証拠はありません。
このような発言をすること自体、小西氏の発言の信憑性に疑いを生じさせるものと言えます。供述がどのような意味を持つのかすら理解できないということ。
幹部自衛官は調査に対し「お前は気持ち悪い」「ちゃんと仕事をしろ」等の暴言は認めたが「国民の敵」は記憶にないなどと述べているそうだ。しかし、私が当日の現場から電話通報した豊田事務次官、武田人事教育局長は、私に対し、私が彼等への電話で「国民の敵と言われている」と述べたと明言している。
— 小西ひろゆき (参議院議員) (@konishihiroyuki) 2018年4月20日
自衛官に謝罪すれば防衛省へ連絡しないとの発言に反する行動
小西議員は自衛官に対して、謝罪すれば防衛省には連絡しない旨を伝えています。
にもかかわらず、事件のあった午後8:40くらいから9分後の8:49に防衛省の豊田硬事務次官に電話していると言っています。小西議員は事件の直後にも武田(博史)人事教育局長が私と携帯のやりとりをしていると発言していることから、最初の自衛官の発言を受けてからの電話と、自衛官の謝罪を受けてからの電話の両方で防衛省に電話していたということになるのではないでしょうか?
自衛官発言⇒小西議員、豊田氏に電話⇒自衛官謝罪⇒小西議員、武田氏に電話
もしくは、自衛官の謝罪の後に両氏に電話したのかもしれません。
いずれにしても、自衛官の証言によれば、小西議員から謝罪すれば防衛省へ連絡しないという方針を即座に変更して防衛省に連絡していたということになります。そして、既に示したように、このやりとりの際には警察官が傍に居て会話を聞いている可能性が極めて高いということです。
しかも翌日4月17日の参議院外交防衛委員会でも「国民の敵」と言われたということを発言しており、公にする気まんまんだったということ。
シビリアンコントロールについて
小西議員はこんなことも言っています。
小西氏 今申し上げたように、もう証拠があるので、その証拠をもとにきちんと調査をする。また法令に則った厳正な対処を、再発防止、これは河野(克俊)統合幕僚長も事務次官も私に約束しているが、自衛隊の全組織、全自衛隊員に対して、シビリアンコントロール(文民統制)とコンプライアンス(法令順守)の再教育の計画を作って徹底して行うことを約束しているので、その取り組みを国会議員としてしっかりと監督していきたい。
今回の件でシビリアンコントロールが問題になるということは在り得ません。
シビリアンコントロールという言葉は理念としては軍事力の発動の決定を内閣(大臣)の文民(軍関係者ではない者)が決めるということです。具体的な内容は各国で異なりますが、概ね軍の大枠の組織体制、関係法令の制定も文民が行うと言う意味でつかわれることもあります。
しかし、自衛官個人の行動に関して、シビリアンコントロールという事にはなり得ません。小西議員はシビリアンコントロールという言葉をいいかげんに利用しているだけです。
まとめ:千葉県選挙区の小西洋之議員の矛盾が露呈
小西氏の発言に矛盾が生じているのは、おそらく「国民の敵」と言ったか言わないかの議論になったため、言ったということを証明しようとする余りに防衛省への電話の事実を強調してしまったのだと思います。
墓穴を掘ったということ。
以上