事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

伊藤和子弁護士「高市早苗は名誉男性」ツイート削除:名誉男性の意味と用語法

伊藤和子弁護士、高市早苗は名誉男性ツイートを削除

「名誉男性」と「多様性」について。

伊藤和子弁護士「高市早苗は名誉男性」ツイート削除

https://web.archive.org/web/20210904052325/https://twitter.com/KazukoIto_Law/status/1434024244283805698

伊藤和子弁護士が高市早苗議員について「女性から支持を集めたいと思っていない」とするツイートを引用して「まさに名誉男性」と書いたツイートを削除しました。

削除して正解だと思います。

こういう場合「消せば増える」と言われエンタメ化される事があります。

元々エンタメ化しようと悪意を持った発信の場合はともかく、通常は削除は何らかの誤りがあってそれを自覚したから削除すると考えられるので、現在の発言と矛盾するものをしれっと消してたとか、そういう場面でやることじゃないかと思うのです。

もっとも、誤りがなくても、「うるさいから、メンドクサイから」「批判に耐えられないから」という理由はあり得るでしょう。

誤りであり、誤りを認めてないのに、批判が来るのが嫌だから削除した、とみられる場合には、「消せば増える」をやる意義はあろうと思います。

「名誉男性=Honorary male, man」の意味と用語法

Honorary male - Wikipedia

名誉男性とは、"Honorary male" or "Honorary man" が原語のようです。

英語Wikiでは1980年のアリソン・ハイシュ著「エリザベス1世と家父長制の永続性」が参照され、その中で「名誉男性とは、彼らが機能する男性社会の価値観と慣行を受け入れ、それらを内面化し、従う女性」と説明していることを指摘しています。

Wikiでは他にもごちゃごちゃ書かれていますが、元は「名誉白人」という語が元々あって、「名誉〇〇」のような用語法をジェンダーの文脈で流用したものが「名誉男性」という語の始まりと考えられています。
「名誉白人」の「白人」部分を「男性」に単に置き換えただけの意味ではないことに注意

「名誉男性」が名誉毀損:発信者情報開示決定の春名風花氏の訴訟

さて、「名誉男性」という言葉を使ったツイートが名誉毀損だとして発信者情報開示決定まで出た事案があります。タレントの春名風花氏に対する「彼女の両親自体が失敗作」「名誉男性」などと書かれたTwitterの投稿に対する訴訟です。

この事案では最終的に示談となりましたが、「名誉男性」という語が含まれていたことに注意すべきでしょう。

※当該発信者情報開示請求事件の判決文を見たわけではないので「名誉男性」についてどういう司法判断がなされたのか不明ですが、原告側(弁護士が代理人となっている)がこの部分も名誉毀損だとして開示請求をしたという事実は重要でしょう。

フェミニスト界隈での「名誉男性」の用語法が酷すぎる

幻集郎 氏によるフェミニストらのツイート群から垣間見れる「名誉男性」の用語法。

この中身の主張すべてに賛同する趣旨ではありませんが、たとえば伊藤弁護士が消したツイートで引用していた「笛美」というアカウントの用語法は…

女らしさを隠しておじさんに同化する。」

女らしさを強調しておじさんのアイドルになる。」

これが「名誉男性」の一形態であると言っています。

石川優美氏は、「女性差別をしている男性社会によりそうような言動をする女性」と一般的な理解を示しています。

勝部元気氏は名誉男性について確かに被害者ではあるとしながらも『男尊女卑環境に過剰適合し、その広告塔のような立ち位置になってしまった女性』『差別を助長している点において加害に手を染めており、「ウイルス感染によりゾンビ化して人間を襲う元人間」みたいな存在』と、より具体的に述べています。

英語Wikiの説明や(ここで取り上げただけではない)ネット上に溢れているフェミニストらの発言を見てみると、「名誉男性」の意味内容の輪郭が浮かび上がってきます。

彼らの発信の中には「一定の世界観」の存在があるのに気づきます。

それは【その社会(日本)では、女性よりも男性が優位な立場であり、女性が不利益を被っている恒常的な状態である】というもの。

そこで、「名誉男性」とは、①「男性優位の社会・女性を搾取的に扱う社会」の存在を前提とし、②そのような社会構造に迎合して自らもその構造の再構築に(結果的にせよ)加担する女性を指して言われる、というのが公約数的・穏当な理解でしょう。
(しばしば「卑怯な」という意味合いを込めて)

私は、ある社会構造を論じる際に「名誉男性」を使うのは一つの表現技法であり何ら問題ないと思います。

しかし、特定個人に対して「名誉男性」と呼ぶ場合、上掲のようなフェミニストらの用語法を見ると、罵倒的な意味合いになっているのがわかります。

したがって、「名誉男性」という用語が名誉毀損になるかどうかは文脈によるとしか言えないが、基本的には特定個人に対して評した場合には「名誉毀損的」なものであると考えられるでしょう。

「多様性」を大切にするはずなのに…フェミニスト界隈の自己矛盾

伊藤和子弁護士はこうしたツイートもしていました。

私はあなたたちとは違うんですという意識

これは「多様性」じゃないんですか?

「女性議員の会合に来ない」というだけで、なぜ否定的な言及を受けなければならないのか?

特定個人に対する「名誉男性」という評価にも同じことが言えると思います。

名誉毀損かどうかという法的な評価から離れ、素朴な価値判断の次元で捉えてみる。

ある女性の自律的な判断について「名誉男性」と言うのは、それはその女性、ひいてはその女性と同様の思考をする女性らも一緒くたにして型にはめてしまうものではないでしょうか?

特定個人に対する安易な「名誉男性」のレッテル貼りは、フェミニスト界隈の理論の自己矛盾が表出するきっかけになってしまっていると思われます。

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