事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

福島みずほ「難民は他人のパスポートで来る人が多いことも知ってほしい」難民条約との関係

こ、これわ…

福島みずほ「難民は他人のパスポートで来る人が多いことも知ってほしい」

社民党党首の福島みずほ参議院議員が、「難民の人たちは他人のパスポートで来る人が多いことも知ってほしい」と投稿。

すると、突っ込みが殺到しました。

これについては言葉足らずだと思います。

難民条約第31条1項:避難国に不法にいる難民への刑罰の禁止

難民条約

第31条【避難国に不法にいる難民】
1  締約国は、その生命または自由が第1条の意味において脅威にさらされていた領域から直接来た難民であって許可なく当該締約国の領域に入国しまたは許可なく当該締約国の領域内にいるものに対し、不法に入国しまたは不法にいることを理由として刑罰を科してはならない。ただし、当該難民が遅滞なく当局に出頭し、かつ、不法に入国しまたは不法にいることの相当な理由を示すことを条件とする

難民の地位に関する1951年の条約】では、直接来た難民に対して、不法滞在だからといって刑罰を科してはならないと定めています。

もっとも、退去強制はここでいう刑罰ではないと解されています。

難民たる立場にあるからこそ、本人として偽造パスポートを利用したり、パスポート無しでの出国をせざるを得ない場合があります。

本人名義だと出国が困難な場合…たとえば国家が空港を運営・航空会社を掌握している政権が指名手配をしているような場合には、他人名義を使ってなりすまして出国するというのはあり得る。

こうした行動は緊急回避行動として難民条約上認められる場合があるということ。

※追記:入管難民法第六十一条の二の二第一項二号において「本邦にある間に難民となる事由が生じた場合を除き、その者の生命、身体又は身体の自由が難民条約第一条A(2)に規定する理由によつて害されるおそれのあつた領域から直接本邦に入つたものでないとき。」という難民認定の除外事由がある

他人名義のパスポートの使用による難民の入国のケースはどれほどあるのか?

言い方ひとつで印象は変わる。

福島議員は、こうした条約の存在や具体的なケースについて論じていれば、説得力にもなるのになぜしないのでしょうか?もったいない。国民の制度理解を促せばよいのに。

ただ、自分の名義で真正に作ったパスポートを他人に渡す、というケースの場合、その他人は必ず向こうで犯罪者として扱われますよね?

このときに「盗まれた」とか弁解すれば、それが当該国当局から日本に伝わって、渡航者は難民とは扱われなくなる危険がある。

それにしても、海に囲まれた日本に飛行機でやってくる、しかも「直接」来るというのは、どういうことなんでしょうか?

福島議員は「多い」と書いてますが、このパターンってどの程度あるんでしょうか?

ただしその場合であっても、日本国に着いたら遅滞なく申し出てないとダメで、後で発覚したから…というのは認められません。

※「実在しない人物の名義」も「他人名義」だとしてるなら話が変わってくる。それは偽造してるということであり、「自分のパスポートを渡してくれた誰か」が存在しないので。

※第三国経由の場合について第159回国会 参議院法務委員会 第9号 平成16年4月8日参照

以上:SNSシェア,はてなブックマーク,ブログ,note等でのご紹介をお願いします