事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

林景一裁判官の最高裁判決文の反対意見:リツイート画像の自動トリミングで著作者人格権侵害

リツイート画像が自動トリミング表示されたことで著作者人格権侵害となるという最高裁判決が出ましたが、Twitterアカウントのある林景一裁判官の反対意見を見ていきましょう。

リツイート画像の自動トリミングで著作者人格権侵害の最高裁判決文

平成30年(受)第1412号 令和2年7月21日 第三小法廷判決

事案の理解に参考になるのは「RTによる画像トリミングで著作人格権侵害」 知財高裁判決の意味と影響 弁護士が解説 - ITmedia NEWSです。

権利者のHP:http://ynawata.asablo.jp/blog/2018/05/22/8854401

  1. プロカメラマンである画像の権利者がホワイトとピンク色の鈴蘭の花の画像を自己のウェブサイトにUP
  2. 画像上部と下部には権利者の名前と転載禁止の文字が
  3. ツイート者が無断で当該画像をツイートに添付(画像自体を編集はしていない)
  4. リツイート者がツイート者のツイートをリツイート(画像自体を編集はしていない)
  5. リツイート者のタイムライン(プロフィール画面)で画像の上部と下部がトリミングされて表示(権利者のHP上の表現ではマスキングとなってるが、全体表示がされていないという意味において同じ)(画像自体の編集ではなく、あくまで表示の話)
  6. パクツイをしたツイート者は画像の著作権侵害
  7. トリミングされた表示が著作権侵害ではないが著作者人格権侵害とされた
  8. そのため、ツイート者のみならずリツイート者に対する発信者情報開示請求が認容された

リツイート画像の自動トリミングで著作者人格権侵害が認定された最高裁判決の事案はざっくり言うとこの通りです。

単なる画像リツイートやパクツイのリツイートが違法ではない

写真の無断リツイートは著作者の権利侵害 最高裁判決 - 毎日新聞

新聞メディアなどでは「写真の無断リツイート」や「無断転載画像のリツイート」などといった表現で報道されている所が多いですが、単なるパクツイのリツイートが問題なのではありません。

リツイートした画像に対してリツイート者が何ら手を加えていないのに、「表示上、上下部分が見えなくなった」ことが権利侵害とされたのです。しかも、それはTwitterサービス上の仕様によって行われたものなのです。

判決文の反対意見ではその懸念が示されています。

林景一裁判官の最高裁判決文の反対意見

Twitter裁判官林景一の反対意見:リツイート画像の自動トリミングで著作者人格権侵害の最高裁判決

自らもツイッタラーだった林景一裁判官の最高裁判決文における反対意見は以下の通りです。割と短いです。

裁判官林景一の反対意見は,次のとおりである。
私は,多数意見と異なり,本件各リツイート者が本件各リツイートによって本件氏名表示権を侵害したとはいえず,原判決のうち本件各リツイート者に係る発信者情報開示請求を認容した部分を破棄すべきであると考える。その理由は以下のとおりである。

1 原審は,本件各表示画像につき,本件写真画像(本件元画像)がトリミングされた形で表示され(以下,このトリミングを「本件改変」という。),本件氏名表示部分が表示されなくなったことから,本件各リツイート者による著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)の侵害を認めた。しかし,本件改変及びこれによる本件氏名表示部分の不表示は,ツイッターのシステムの仕様(仕組み)によるものであって,こうした事態が生ずるような画像表示の仕方を決定したのは,上告人である。これに対し,本件各リツイート者は,本件元ツイートのリツイートをするに当たって,本件元ツイートに掲載された画像を削除したり,その表示の仕方を変更したりする余地はなかったものである。

また,上記のような著作者人格権侵害が問題となるのは著作者に無断で画像が掲載される場合であるが,本件で当該画像の無断アップロードをしたのは,本件各リツイート者ではなく本件元ツイートを投稿した者である。

以上の事情を総合的に考慮すると,本件各リツイート者は,著作者人格権侵害をした主体であるとは評価することができないと考える。

2 ツイッターを含むSNSは,その情報の発信力や拡散力から,社会的に重要なインフラとなっているが,同時に,SNSによる発信や拡散には社会的責任が伴うことは当然である。その意味で,画像そのものが法的,社会的に不適切であって,本来,最初の投稿(元ツイート)の段階において発信されるべきではなく,削除されてしかるべきであることが明らかなもの(例えば,わいせつ画像や誹謗中傷画像など)については,その元ツイートはもとより,リツイートも許容されず,何ら保護に値しないことは当然である。しかしながら,本件においては,元ツイート画像自体は,通常人には,これを拡散することが不適切であるとはみえないものであるから,一般のツイッター利用者の観点からは,わいせつ画像等とは趣を異にする問題であるといえる。多数意見や原審の判断に従えば,そのようなものであっても,ツイートの主題とは無縁の付随的な画像を含め,あらゆるツイート画像について,これをリツイートしようとする者は,その出所や著作者の同意等について逐一調査,確認しなければならないことになる。私見では,これは,ツイッター利用者に大きな負担を強いるものであるといわざるを得ず,権利侵害の判断を直ちにすることが困難な場合にはリツイート自体を差し控えるほかないことになるなどの事態をもたらしかねない。そうした事態を避けるためにも,私は,上記1の結論を採るところである。

インラインリンクの自動トリミングとは?

インラインリンクの自動トリミングとは

 

判決文では、「インラインリンク」の形式でタイムライン上に表示されているため、リツイート者が自動トリミングの主体であるとされました。

ここではインラインリンクとは何ぞや?という技術的な説明は置いておいて、具体的にどういう見え方をしているのかだけ説明します。

上記画像は、元ツイートの画像です。

URLはhttps://twitter.com/Nathankirinoha/status/1285526643776212994となっています。

それをリツイートすると、タイムライン(つまりはプロフィール画面)では、以下のような見え方になります。

インラインリンクのリツイート画像

https://twitter.com/NathankirinohaがタイムラインのURLになります。

この画像の場合、画像の上部が隠れてしまっているのが分かるでしょう。
※このことは権利者のHPではマスキングと書かれているが、何か手を加えたわけではなく、表示上の問題だということがわかるだろう。

このツイートをクリック(スマホならタップ)すると、上掲のツイートURLの表示になるわけです。

なお、2015年の際の仕様は、現在よりももっと画像の表示スペースが小さいものでしたが今は映り込む範囲が広くなっています。

Twitter社は仕様変更で対応するべき

一般ユーザがリツイートされた際の表示がどうなるのかを予め予測することは不可能ですから、Twitter社の方で仕様変更して、リツイート時にも画像が全体表示されるようにする以外に、混乱は収まらないと思います。

以上