事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

都市封鎖は感染症法33条で可能か?「ロックダウン」の意味の誤解

都市封鎖は感染症法33条で可能か?

「ロックダウン」などの用語法の混乱も相まって無駄な議論がされているのでここで一度整理します。

ロックダウンは感染症法33条で可能とする後藤祐一議員

これがSNS等で拡散されているので対象にしますが、注意すべきです。

後藤 祐一 - 都市封鎖(ロックダウン)は、日本の法律上可能か。... | Facebook 3月27日 23:59(魚拓

3月11日の内閣委員会で、質問しました。
後藤「イタリア・ロンバルディア州のような交通制限は、特措法上、緊急事態宣言をした後でもできないということでよいか」
西村大臣「政令改正して(感染症法33条を新型コロナウイルス感染症の適用対象として)入れれば可能となります」
後藤「やるつもりあるんですか」
大臣「現時点では考えておりませんが、専門家の意見を聞いて適切に判断していきたいと考えております」

中略

33条の条文の書き方からすれば拡大適用かもしれませんが、都市封鎖は多くの先進国ですでに実施されており、真に必要な状況に至った場合には、最終手段として発動する可能性は残しておくべきではないかと個人的には考えます。

緊急事態宣言ばかりが騒がれますが、この感染症法第33条を適用して都市封鎖を実施するかどうかの方が、より深刻な問題です。

衆議院インターネット審議中継(現時点で議事録未公開)

「都市封鎖(ロックダウン)は、日本の法律上可能か」というタイトルで、西村大臣が「政令を改正すれば感染症法33条交通制限ができる」と答弁しているとして、後藤祐一議員がこの可能性を指摘しています。

これは新型インフル等特措法上の緊急事態宣言をしなくとも都道府県が行うことができる措置です。

まず「ロックダウン」という言葉が誤解されているのでかなり有害な文章です。

ロックダウンの意味が誤解されている

「ロックダウン=都市封鎖」という表記それ自体が誤解されています。

都市封鎖を物理的な意味で行ったのはチャイナの各都市であって(湖北省以外はコミュニティの出入りを厳格に管理する「半封鎖」がほとんど)、欧米で行われている「ロックダウン」の多くは【広い意味での都市の境界線をまたぐことが許されない】などというものではありません。(実際にロックダウン後のニューヨークから帰国した日本人が何人も居る)

その内実は各国で様々なのですが、公約数的に言えば【一定の外出制限と経済活動の制限が行われている状態】です。(例えばニューヨークの外出制限は罰則が無い)

ロックダウン下でも通勤して仕事したり、休日にはサーフィンやってる人も居るような都市は存在しています。

参考:ロックダウンってどんな状態?|三澤 壮太郎🌺アロハ社長|note

よって、西村大臣が答弁したのは「交通制限」という日本語を前提にしており、イタリアロンバルディア州とまったく同じ具体的な措置を念頭に置いていると考えるべきではありません。
(後藤議員の質問が事前通知したものと若干ずれていたために答弁に手間取った可能性を考えるべき。立憲民主党議員の姑息な常套手段として「閣僚が慌てている」絵をテレビで流したいがためによくやっている)

日本政府の言うロックダウン=強制的に罰則を伴う都市の閉鎖

政府側は「ロックダウン=強制的に罰則を伴う都市の閉鎖」という表現で新型インフル等特措法では不可能と言っています。ここで言う「都市の閉鎖」は、【広い意味での都市の境界線をまたぐことが許されない】という意味でしょう。

新型コロナウイルス感染症の対応について|内閣官房新型インフルエンザ等対策室魚拓

感染症法33条は罰則規定はあるのですが、このような意味での措置がとれるのか?

新型コロナウイルスを感染症法33条の適用対象とする政令

感染症法33条は一類感染症が対象です。

ただ、新型コロナウイルスは感染症法上の指定感染症に指定され、一類感染症の規定が政令で準用できるとされています。後藤議員質疑の3月11日時点では準用対象となっていませんでしたが、3月26日の政令改正で対象になりました。

令和2年3月26日新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令の一部を改正する政令(六〇).pdf - Google ドライブ

ところが、この法律の条文を読んでみれば、今のままでは発動する意味がどれほどあるのか疑問に思わざるを得ません。

感染症法33条「72時間以内の期間を定めて」

感染症法

(交通の制限又は遮断)
第三十三条 都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため緊急の必要があると認める場合であって、消毒により難いときは、政令で定める基準に従い、七十二時間以内の期間を定めて、当該感染症の患者がいる場所その他当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある場所の交通を制限し、又は遮断することができる。
(必要な最小限度の措置)
第三十四条 第二十六条の三から前条までの規定により実施される措置は、感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要な最小限度のものでなければならない。

時間的制約として72時間という数値が明示されているのです。

適用するべきだと主張するならば、この部分を改正しなければならないのですが、これを言っていない時点で後藤議員の主張は「やってるふり」をしている戯言に過ぎません。

この辺りは新型インフル等特措法上の新型インフル等に新型コロナウイルス感染症が含まれていなかった時期の議論と同じです。立憲民主党は法改正せずとも適用可能だと抜かしていました。

 山尾しおり議員「交通遮断による都市封鎖」は不可能

山尾しおり - 【新型コロナで交通遮断による都市封鎖は法的に可能なのか?】... | Facebook

山尾しおり議員は、感染症法では「交通遮断による都市封鎖」の状態をつくることは現在の感染症法33条では不可能であるという見解を示しています。
「都市封鎖」という言葉を欧米で行われている「ロックダウン」ではなく、【広い意味での「都市」の境界線をまたぐことが許されない】と捉えていることに注意。

このような筋道の立論が専門家によるものです。

詳細はリンク先を見ていただきたいですがまとめると以下です。

  1. 法律の形式面から72時間は延長が許されない⇒同じ法律にある「入院措置」は最初の「72時間」の後「10日間」ごとの延長が許される規定があることとの対比
  2. 72時間の趣旨は「交通を遮断している間に、集中的な消毒や健康診断を実施し、感染症のまん延を防止するもの」であり、「消毒や健康診断に要する期間を考慮」したものに過ぎない
  3. 実質面から適用対象とは考えられず空間的制約も予定されている⇒当該規定はエボラやペストが該当する「1類感染症」(致命率35%のMERSですら2類感染症)に認められる措置であり、「感染症の発生を予防」ではなく発生した「感染症のまん延を防止」すると規定されていることと上記72時間の趣旨から
  4. 手続面から適用に疑義が生じている⇒感染症法7条3項で感染症法の33条(交通遮断)を新型コロナに適用可能にする政令改正手続には厚生科学審議会の意見聴取が義務付けられているところ、政令改正に際して厚生科学審議会が開かれていない

72時間の趣旨については詳解感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律4訂版 [ 厚生労働省健康局 ]を参照。

4番目の手続面の指摘については真偽を確かめられていないので判断保留とさせていただきます。

都市封鎖(交通遮断)は感染症法でギリギリ可能かもしれない、ただし72時間だけ

「必要最小限」には空間的制約と時間的制約があります。

空間的制約については、条文の文言からも「都道府県単位で都市の境界をまたぐことが許されないという意味での都市封鎖」というのはかなり難しいのですが、解釈で無理やり適用可能だとしましょう。

しかし、時間の制約を逃れるためには法改正が必要とみるほかありません。

よって、【交通遮断はギリギリ可能かもしれない。ただし72時間だけ。

どれだけアクロバティック解釈をしてもこれが限界でしょう。

まとめ:「ロックダウン」の意味内容を確定してから議論せよ

  1. 「ロックダウン」という言葉の意味が論者によってごちゃごちゃ
  2. 公約数的な意味は「一定の外出制限と経済活動の制限が行われている状態」
  3. 日本政府はロックダウンを「強制的に罰則を伴う都市の閉鎖」と理解している
  4. 日本政府の言う「都市の閉鎖」は「広い意味での都市の境界線をまたぐことが許されない」という意味と捉えるべき
  5. 感染症法は「交通遮断」ができるが、都道府県単位で可能かは解釈上疑問
  6. 都道府県単位の交通遮断が可能としても72時間制限がある
  7. 72時間を超える交通遮断を行う解釈は不可能

用語法が狂っている中で議論をしても話が噛み合うハズがありません。

多くの立憲民主党の議員は常日頃から議論を混乱させることで国政を妨害するのが目的なので、そこに与してはいけません。きちんと条文を読むこと。

以上