韓国のムンジェイン(文在寅)大統領が2019年1月10日の記者会見において、朝鮮人戦時労働者問題の韓国大法院判決に基づく日本企業資産の差押えについて「三権分立だから政府は口出しできない」と言い放ちました。
これは二重に間違っています。
三権分立を尊重するなら司法による行政判断への介入をムンジェイン大統領は正すべきです。
- 三権分立の前に国際法=条約を守れ
- 条約=日韓請求権協定>>韓国大法院判決
- 司法が行政判断に介入している
- 行政(大統領府)が司法に介入?
- まとめ:三権分立を尊重するのであれば大法院による介入を正せ、それが法の支配である
三権分立の前に国際法=条約を守れ
文在寅氏「日本が政治争点化」と批判、徴用工判決で - 産経ニュース
文氏は根本的な原因は「韓国政府がつくったものではなく、不幸な歴史のためにつくられた問題だ」との認識を示した。「三権分立の下、政府が司法府の判決を尊重しなければならないのは日本も同じだ」と主張。不満があっても日韓がどう解決するか知恵を集めるべきだと強調する一方、「問題を政治的攻防の材料にし、未来志向的関係まで壊そうとするのは望ましくない」と重ねて日本側の対応を批判した。
三権分立は国内統治の手法に過ぎないので、外国に対する言い訳には使えません。
優劣の問題と捉えることもできますが、本質的には「適用場面ではない」という理解が正確です。
それ以前に、韓国は条約法に関するウィーン条約(Vienna Convention on the Law of Treaties)に反しています。
PART III OBSERVANCE, APPLICATION AND INTERPRETATION OF TREATIES SECTION 1: OBSERVANCE OF TREATIES
Article 26 Pacta aunt servanda
Every treaty in force is binding upon the parties to it and must be
per formed by them in good faith.第三部 条約の遵守、適用及び解釈
第一節 条約の遵守
第二十六条(「合意は守られなければならない」) 効力を有するすべての条約は、当事国を拘束し、当事国は、これらの条約を誠実に履行しなければならない。
日韓請求権協定では韓国政府・韓国国民が日本側に対して請求をして救済を受けることが放棄されました。韓国人の救済は、韓国政府が行うこととなっていました。
この合意は守らなければなりません。
この当たり前のことを韓国は履行していないことになります。
条約法条約の第二条1項には、『この条約の適用上、 (a)「条約」とは、国の間において文書の形式により締結され、国際法によつて規律される国際的な合意(単一の文書によるものであるか関連する二以上の文書によるものであるかを問わず、また、名称のいかんを問わない。)をいう。』とあるように、「協定」という用語が使われているからといって日韓請求権協定が「条約ではない」などとは解されない。
条約=日韓請求権協定>>韓国大法院判決
Article 27 Internal law and observance of treaties
A party may not invoke the provisions of its internal law as justification
for its failure to perform a treaty.This rule is without prejudice to article 46.第二十七条(国内法と条約の遵守) 当事国は、条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない。この規則は、第四十六条の規定の適用を妨げるものではない。
ムンジェインは「大法院の判決があるからそれを尊重しないといけない」としていますが、それは国内法を条約不履行の理由としており、条約法に関するウィーン条約27条に反しています。
条約は国内法に優先するという、全世界各国が当たり前に承認している事柄を無視していることになります。
なお、46条但書には例外となる場合がありますが、今回の事案では絶対に当てはまりません。
司法が行政判断に介入している
韓国の大法院判決は【司法が行政に介入している】事案です。
行政が司法に介入ではありません、逆です。
そうであるかは今のところ不明ですから、形式的な判断としてはそうなるのです。
日韓請求権協定という条約を韓国の行政府が日本政府と合意したものを、司法判断が覆しているのですから。
したがって、三権分立が大法院という司法によって侵されているのです。
行政判断の領域を犯された行政府=大統領府は、それを是正しなければなりません。
三権分立を尊重すべきことを掲げるのであれば、行政府側の大統領が大法院の判決を「三権分立の侵害である」として正すべきなのです。
とはいえ、裁判所の判断をやり直させる、などはできませんから、司法判断を実質的に無効化する何らかの法律・政令・省令を発付するという手段が考えられます。
たとえば、「日本企業が大法院判決によって負った義務を韓国政府が債務引受する」という法律を施行すればよい。
行政(大統領府)が司法に介入?
韓国の大法院長官の任命をムンジェイン大統領が恣意的に行っているという指摘があります。
現在の大法院長官は大法院判事の経験がないまま長官になるという異例の人事でした。
しかも、大法院の元幹部が徴用工判決を先送りし、それが違法だとして逮捕されるなど、政治による介入が疑われる事案が発生しています。
これらのことがあるから「今回の大法院の判決はムンジェインが介入して出させたものでは?」と言われることがあります。
ただ、これらが行政による司法への介入であると断定するだけの材料は今のところありませんから、表向きは「司法による行政への介入」であると扱うべきだろうと思います。
まとめ:三権分立を尊重するのであれば大法院による介入を正せ、それが法の支配である
一国の国内の統治体制の構造に過ぎない「三権分立」よりも、「合意は守りましょう」という当たり前すぎる国際法を守らなければいけないのは明らかです。
国際的な法の支配を守るのか、それとも韓国という一国内でしか通用しない三権分立(=二国間合意をした行政判断に司法判断が反すること)に拘泥するのか。
日韓請求権協定に基づく協議を通して見届けましょう。
以上