「豊洲・築地問題合同調査チーム」
- 「豊洲・築地問題合同調査チーム」による提言
- 提言の概要「豊洲市場への移転に向けた調整の加速」
- 感想:建設的且つ行政が採れる選択肢、逃げ道を提示
- 小池都知事の移転延期判断(とその継続)は悪なのか?
- 小池都知事の移転延期判断はどう考えるべきか
- ※追記:その後、豊洲市場移転が実施、小池都知事本人への賠償請求を都に求める住民訴訟は棄却
「豊洲・築地問題合同調査チーム」による提言
東京都議会議員、東京維新の会所属のやながせ裕文さんが活動している「豊洲・築地問題合同調査チーム」による提言がなされました。
昭和40年代までさかのぼっての経緯や、豊洲市場移転と築地市場再整備等との比較考量、そして、第三の選択肢はあり得たのか、という観点からも言及しており、私たちが抱くであろう疑問に対する答えにもなっています。
提言の概要「豊洲市場への移転に向けた調整の加速」
- はじめに、豊洲新市場整備方針の“ゼロリスク”の希求は、結果的に、豊洲地区に続いて築地地区にも甚大な風評被害を撒き散らしている。都民ファーストの観点から速やかに豊洲移転を決断していただきたい。
- 経緯として、築地市場の老朽化、汚染状況にかんがみ、築地の再整備が検討された。しかし、営業への影響等から移転が選択された。
- 論点
・最大の論点は、安全性への懸念である。
・安全基準の上に、安心についてのリスクコミュニケーションとしての説明が必
要。決して科学的基準こそが全てと考えているわけではない。
・豊洲が安全ではないが築地は安全であるという二重基準を用いてはならない。
・豊洲市場移転と築地市場再整備等との比較考量、第三の選択肢の検討 - 提言
・豊洲市場への移転に向けた調整の加速
・適切なリスクコミュニケーション(卸売市場法の改正)
・都庁のガバナンス改革(東京版戦略本部会議の設置) - 結論
都庁のガバナンスを問題視してきた小池都知事であれば、地下空洞を決裁した管理者の責任や石原慎太郎元知事の責任を厳しく問う前に、まず自らがその責任を果たすことができるよう、都庁の組織改革に取り組むべきである。
感想:建設的且つ行政が採れる選択肢、逃げ道を提示
誰を悪者とすることなく、都民の安全と利益を考え、都行政をよりよいものにしていくための提言がなされていると思います。
移転の経緯も簡潔ですが詳細に書かれています。
他の選択肢はなかったのか?
という、だれもが疑問に思いつつもあまり報道等で触れられてこなかった点についてもまとめられています。
小池都知事がこれから取るべき態度についての助け舟を出しているような点もあり、単に批判するのではなく、「小池都知事に動いてもらう」ための文章であると思います。
行政の仕組みについても批判にとどまるのではなく、概括的ではありますが、どのような措置が有効であるかを大阪維新の会の経験を踏まえて発信しています。
提言の類の文書を起案する際には、こういう文章を模範としたいです。
小池都知事の移転延期判断(とその継続)は悪なのか?
これは専ら政治的な判断であると思います。
政治的判断は、科学的根拠や都民の利益に留まらない、諸般の事情を勘案した総合考慮がなされるのであり、単一の価値基準に依らないからこそ政治家が必要なのだと思います。
小池知事にとっての前提は科学や行政上の合理性ではなく、政治的合理性である。ー略ーより大きな政治目標を達成するために、多少の犠牲を厭わない。
小池知事の狙いはハッキリしている。これまでの都政がいかにデタラメであったかを人々に見せようというのだ。
当然のことであるが、権力に求心力がなければ、何もできない。そして、その権力によって、政治的な成果を達成することが政治の最大の目標である。小池知事がそれを達成できるかどうかはわからないが、達成しようとしていることは事実だ。その冷徹な姿勢はポピュリズム特有の迎合性とはベクトルを異にするものだ。
それを言ってしまえば何でもアリになるではないか
「それを言ってしまえば何でもアリになるではないか」
と言いたくなるような内容です
しかし、この記述は政治の一側面をしっかりと捉えていると思います。
思い出して頂きたいのは、あの安倍総理ですら、2015年の12月に悪名高い
「日韓合意」を締結したということです。
歴史的事実の誤解が世界に広まり、各国に在住している日本人の子供がいじめの被害に遭うことよりも、政治的解決を優先した。これは、政治の世界の文脈の話であり、おそらく私たちが認識できない政治の世界の論理があるのだと思います。
小池都知事の移転延期判断はどう考えるべきか
小池都知事の判断を全て正当化するのは、移転延期判断が
より大きな政治目標を達成するため
なのかどうかという評価にかかってくると思います。
都行政や議会の内部をいわば「浄化」することをより優先しようとしているのか
それとも都民の食の安全と利益を優先するべきなのか
これについて私が確定的な考えを示すことはできません。
歯切れが悪いですが、世界観の違いによって様々な見解がありうると思います。
ただし、この問題を取り巻く周辺情報から、間接的に小池都政に正当性があるのかという判断をすることは可能です。
その一端として私は、石原慎太郎都知事に対する扱いや、会見での発言の節々から感じられる小池都知事の意識というものから判断しています。
いずれにしても、小池都知事は、いばらの道を歩むと決めているのだなと思います。
※追記:その後、豊洲市場移転が実施、小池都知事本人への賠償請求を都に求める住民訴訟は棄却
その後、「地下水が汚染」「ベンゼンが100倍の濃度」といったワードで共産党界隈から騒ぎ立てられましたが、結局は移転が実施されています。
騒動全体の振り返り記事として以下リンクを貼ります。
なお、移転が遅延したことによる小池都知事本人への賠償請求を都に求める住民訴訟は棄却されています。*1
以上