事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します

百条委員会:豊洲移転交渉の「土壌Xデー」:音喜多駿都議によるフェイク

土壌Xデー」とは何だったのか?

東京都北区選出の音喜多駿都議が豊洲移転に関する百条委員会で「新事実」として名付けた呼称ですが、これは全くのフェイクニュースでした。振り返ってみましょう。

百条委員会で音喜多駿都議が示した東京ガスのメモ

土壌Xデー土壌Xday

出典:音喜多駿HP


豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会速記録第五号平成二十九年三月十一日

○おときた委員 ー省略ー 東京ガス側から提出された資料から、我々都民ファーストの会は驚くべき新たな事実を発見いたしました。ー中略ー
ここに記録されている東京都と東京ガスの交渉において、都側の赤星理事は、濱渦副知事からの指示として、土壌汚染Xデー、あるいはXデーという単語を用いて、この日--これは土壌Xデーですね--を迎えれば、土壌問題が噴出し、東京ガスが所有する土地の価格が下落する、結論さえ出せば、石原知事が安全宣言で救済するから、早急に結論を出すようになどと伝えている様子が克明に記録をされています。

音喜多都議は、東京ガスが提出した資料の中にあるメモから、上記のパネルを作成していました。

「資料」とは何か?「土壌Xデー」とは何か?

「資料」は出所不明の私的なメモ

音喜多都議本人が上記ブログで「折衝記録・メモ」と言っています。また、3月19日の河野ゆうき議員の質疑でも

このメモは、東京ガスの提出の段ボールの中に入っておりました。しかし、いつ、どこで、誰が出席して、誰が書いたのか、出どころも不明です。ほかの東京ガスの書類とは違い、異質なものでした。・・・・このメモを、ことさら取り上げるようなメモではないと。

 と言っているように、信憑性がかなり怪しい代物だったということです。

土壌Xデーの意味

結論から言えば「東京ガスが土壌汚染対策法が制定、施行される前に、自ら土壌対策を策定し、それを東京ガス自らの判断で発表する日」のことです。

しかし、音喜多駿都議は土壌Xdayの意味として以下の認識でした。

土壌汚染対策法の全容が明らかになる前に、都条例の範囲内で土壌汚染を処理すれば「安全宣言」を出すことを取引材料に、東京ガスに土地売却の早期承諾を迫った

この時点では音喜多都議の予測に過ぎないのに「新事実」と銘打っているがフェイクですね。

当時の基準は「東京都の環境確保条例」に依っていましたが、売却が遅れると、国が新しく施行することになっていた「土壌汚染対策法」が適用される可能性があったのです。ただし、施行時期については未確定だったようですが、いずれにしても近い将来のいずれかの時点で施行される運びとなっていました。

つまり、土壌汚染対策法が施行されると汚染基準が厳しくなるし、汚染の再調査も必要になって土地の売却が厳しくなる。これは一般的な話です。

 

このような態様の交渉が行われていたのではないか?という推測が発生したのは以下のメモも同時にあったからと言っていますが…

「先週は中曽根元首相が都庁にやってきた」
「いま石原・扇(当時建設・運輸大臣)・亀井(自民党政調会長)はバッチリだ」

「本日亀井政調会長が都庁を訪問し、東京都の懸案事項への国費投入を約束していった」
「国費投入は(亀井静香)政調会長もOK」

しかし、土壌汚染対策法が豊洲移転問題のために立案されたということはあり得ないので、仮にこのメモの内容通りの交渉が行われていたとしても、「新しい法律を作って売却を厳しくしてやるからな」という意味であると、客観的に言えません。

東京ガスの証人は、全員がこのメモについて知らないという答弁でした。 

土壌Xdayのメモが本物だとして

メモの存在自体は東京ガスが提出した資料にあるため事実ですが以下の疑義があります。

 

  1. いつ、どこで、誰が出席して、誰が書いたのか、出どころも不明
  2. 東京ガスの他の書類と全く異なる
  3. 移転決定の権限を有する東京ガスの証人がメモの内容を知らない
  4. 3月19日には浜渦武生証人、4月4日には赤星経昭証人も知らないと証言
  5. よって、メモの内容の会話が事実でも豊洲移転に影響を与えた可能性はない
  6. したがって、メモは私的に作成された個人の主観的認識が書かれているに過ぎない可能性が極めて高い。

 

結局のところ、百条委員会で出所がどこか?移転判断に影響を与えたのか?は明らかになりませんでした。それは音喜多都議が「新事実」と題しながら事実を立証できなかったフェイクであることを意味します。 

小池都知事の豊洲移転延期判断との関係

音喜多都議によって示されたメモの交渉過程が事実で、さらに移転判断に影響を与えたとしても、小池都知事の移転延期判断に今回のことは影響を与えません。全くの別問題です。

「土壌Xデー」と騒いでも、過去に何があったかは小池都知事の豊洲移転延期判断とは何ら関係の無いことであったということは覚えておかなければなりません。

「水面下の交渉」は悪なのか?

豊洲移転延期問題では都側と東京ガス側の「水面下の交渉」がまるで悪いことであるかのように騒がれていました。

喜多議員は、水面下の交渉で、東京ガスの瑕疵担保責任の合意書や土壌汚染に関しては汚染は残滓(ざんし)されることで良しとする確認書が存在したこと、その確認書の内容の共有が歴代の市場長にされてこなかったことが問題だと指摘しています。

果たして「水面下の交渉は全て悪」なのでしょうか?

  1. 国や地方公共団体の活動は、すべてが記録され、公開されるべきか?
  2. 東京ガスは私企業であるが、私企業が絡んだとしても、国や地方公共団体の交渉内容はすべてが記録され、公開されるべきか?
  3. 今回の「水面下の」交渉は、逐一記録され、公開されるべき内容だったのか?
  4. 都による東京ガスの土地購入の条件は、都民と東京ガスの双方にとって、マイナスにもプラスにも働きうるものであったこと。
  5. 国民、都民への公開を予定して議事録等が記録されることと、行政組織内部の情報共有の問題をごちゃまぜにしていないか?

音喜多議員の問題提起には、上記の疑問がついてまわります。 

このあたりのスタンスは、同じ都議会議員のやながせ裕文さんらが参加している調査チームの小池都知事への提言が、より正当だと感じています。

結論:「土壌Xデー」は東京都北区選出の音喜多駿議員によるフェイク

このようなフェイクをでっち上げることで浜渦武生、赤星経昭らを偽証認定し、更に音喜多委員の指摘に対して反証した河野ゆうき議員を問責動議にかけるなど都議会を掻き乱した音喜多氏。2018年4月時点ではすでに都民ファーストの会を脱退して小池都知事にも批判的な態度ですが、風向きを見ての行動でしょう。

「偽証認定」についてのその後は以下の記事にてまとめています。

都議会が「偽証」と認定したものを検察は「不起訴」にしています。

 

この後に行われた2017年の東京都議会議員選挙では、河野ゆうき氏は落選し、都民ファーストの議員である小池チルドレンが多数当選するなどの結果でした。まぁ、もともと自民党の都議も大概だったので、ある種の転換点だったのかもしれません。

以上