石原慎太郎元都知事に対する百条委員会が開催されました。
あなたには、この動画を見ないことを強くおすすめします。
何も重要な質疑は行われていません。
http://www.gikai.metro.tokyo.jp/live/video/170320.html
東京都議会HP 豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会(3月20日)
動画の最初の方は、議長による委員会での注意点や人定質問(本人確認)ですので、正式に質問が開始するのは8分からです。
委員会の概要
今回の委員会は、これまでの委員会に比べても、開催する必要が疑問視されるほどに内容虚無でした。以下、質問者の名前を書き、私が一応ここで言及しておきたい点についてのみ簡潔に指摘していくに留めます。
なお、質問者の個人的見解・解釈を述べるのみであり、石原慎太郎とのやり取りが発生していないものについては基本的に取り上げません。
この際、都議たちの質問の意味不明さ、無意味さを噛みしめて、今回の件で百条委員会を開催した意味がないということを再確認しましょう。
各議員による質疑
きたしろ勝彦(自民党)と古賀俊昭(自民党)の質問
・防災の日に築地視察してどう思ったのか?や、小池都知事の移転延期判断についてどう思っているのかなど、石原氏の主観的意見を聞くだけの無駄な時間。
野上純子(公明党)
・①78億円の土壌汚染対策費用の負担の代わりに東京ガスの瑕疵担保責任の留保、②新たな汚染が発覚しても東京ガスが都から追加請求を受けないという合意について、知事に交渉結果を記した資料は残っているか。土地売買契約で追加負担を求めない合意を承認したか。
⇒記憶にないとの石原氏の回答に対し、記憶にないことは無責任と指摘
・結局盛土をしなかったことについて、現場レベルで判断したとは思えない。石原慎太郎が指示したのではないか?
⇒知らない。小池知事になってから認識したこととの返答に対し、これは重大な判断だから、最高責任者たる都知事が判断するべきという価値判断。
・水面下交渉について、浜渦氏の交渉経過、結果について細かい報告を受けるのは当たり前だと思う。交渉の内容についてどのように説明を受けたか。
⇒石原氏:詳細に受けていない。
・護岸工事については486億円の都の負担売却後の都の858億円の汚染負担。これは、ひたすら都民にとって不利益ではないか。そうである以上、交渉内容を把握した上で適切な指示をくだすべき
⇒石原氏:細かいことに立ち入る必要も能力もない
酒井大史 東京改革
・一橋大学の後輩である上原社長に面会していたことを記憶していたか
⇒石原氏:覚えていない
・土壌汚染対策費用等について、こういうことには関与すべきでは?
⇒石原氏:行政の長として裁可をすることで関与した。
曽根はじめ 日本共産党
・交渉に関与すべきでは?
⇒石原氏:必要ない。交渉結果等の妥当性等は審議会が審議している。
・土地売買契約について知事として事前に報告を受けていたか?
⇒石原氏:覚えていない
・新銀行東京で400億を毀損したら知事をやめるといっていた人間が559億を覚えていないということはありえない。
⇒だから何なのか?記憶にない
・地下水モニタリング 都民と約束したのは地上も地下水も環境基準を守るという事だったのではないか?
⇒私がそのような基準設定をしたことは間違いない。しかしそれは厳しすぎた
⇒地下水に問題があってもポンプアウトすればよい
おときた駿 都民ファースト
・なぜ高いハードルを設定したのか
⇒石原氏:当時は地下の汚染水というのはクローズアップされなかった。地上の土壌が問題だった。(※ブログ主注:これに対しての基準だから厳しいものにした、という趣旨と思われる)。
・土壌汚染は残滓でOKという確認書について、この存在を知らずに浜渦元副知事は交渉を行っていた。東京ガスは知っていた。これはガバナンスの面で問題。
⇒石原氏:担当者にまかせていた
小松久子 生活者ネットワーク
・食の安全に対する意識は高かったか?
・なんとかしようと思っていたか?
・浜渦氏 全幅の信頼を置いていたか?
・部下にまかせっきりだったのか?
・怠慢だったのではないか?
小括
総じて、石原氏の主観を問う質問ばかりであり、また、石原氏の判断の理由を問うなど、事実を明らかにしようとするものではありませんでした。
無関係な地下水の物質濃度と市場の安全性
曽根はじめ(日本共産党)の質疑の中で、曽根氏が以下の見解を示しました。
今、ポンプアップやってるんですよ。やっていながら地下からどんどんと新しい汚染が出てきてるんですよ。それが79倍なり、今100倍になっている。地下の深いところの汚染は、上の水を地下水を引っ張れば下から上がってくる、それが豊洲なんですよ。
上がってくるというのはその通りです。
ただ、「どこまで上がってくるのか」が本来問題として検討されるべき話です。それは
豊洲市場の地下にあるコンクリの、更に下まで、です。
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/pdf/gijutsu/siryo/18-3.pdf
「だから何?」という話です。豊洲が危険であると言う印象を与えたい勢力の戯言に付き合ってはいけません。
以上。
「ガバナンスの問題」に逃げるおときた駿都議
さて、上記にて示した、おときた議員の質問のうち、次の内容は、多少は意義のあるものと言えます。
「土壌汚染は残滓でOKという確認書について、この存在を知らずに浜渦元副知事は交渉を行っていた。東京ガスは知っていた。これはガバナンスの面で問題である」
これは、そのせいで交渉が東京都側にとって不利な状況となっていたのではないかと言える余地があり得ます。なので、行政内部で反省すべき点でしょう。もっと連携をうまくやれよと。
しかし、この程度の内容について、事実を明らかにするために偽証罪の威嚇のある百条委員会を開く必要性はありません。
「責任」という言葉の意味
3月20日の百条委員会が無意味なものであったということは明らかです。
ここで、結びに替えて、「責任」という言葉を整理しましょう。
石原氏は、「裁可の責任はある」と言いました。同時に、「移転決定は間違っていない」とも言いました。
「責任がある」「責任を認めた」という文言が紙面を踊っていると、なにやら
「間違いを認めた」「謝った」という意味と取れるようになっているように思います。
もちろん一般的にそのような用語法があることも確かですが、しかし、石原氏は明らかにこのような用語法で「責任がある」という言葉を用いていませんし、その用語法も明らかに正しいものです。
石原氏は、行政の長として移転の裁可をした。その判断をする資格と権限がある、その是非について、石原氏が非難を受けたり、あるいは賞賛される。そのような「的」とされるのは当然である、また、法的には当時の行政の長として行った判断が、都の行為を対象とした取消訴訟等が提起されうるという意味です(石原慎太郎個人が訴えられるということではない)。
このような意味で、「責任」という語を用いています。
※本人が明確にこのように理解しているという話ではありません。
「責任がある」という言葉を「間違いを認めた」という言葉であるという印象を与える報道に対し、言葉に対する認識を歪ませる情報のシャワーに対し、私たちは屈しないようにしなければなりません。