事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

【加計学園】獣医学部の認可のための4条件の挙証責任とフェイクニュース

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「4条件」の挙証責任は文部科学省側にある

加計学園の獣医学部認可の問題について、文科省に挙証責任はないという言説が広まっていましたが、本稿ではこの点について検証していきます。

国家戦略特区認可の4条件とは 

「4条件」の概要は、本件においては国家戦略特区における獣医学部新設に必要な諸条件のこと、とまとめられます。具体的には以下です。

  1. 現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、
  2. ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり
  3. かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には
  4. 近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。

加計学園が新設する獣医学部は、この条件を満たしていない「から」ダメなんだ、という言説がありました。

しかし、明確な経緯が2017年7月10日の参議院の文部科学委員会、内閣委員会連合審査会にて、青山繁晴参議院議員による質疑で明らかになりました。

青山繁晴議員による質疑の内容

http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

青山繁晴議員の質問は1時間18分30秒あたりから。

このうち、獣医学部の認可の挙証責任については1時間37分40秒あたりから  

結論:文科省に「規制緩和困難」の挙証責任がある

挙証責任について、申請者側にあるとの言説(つまり真逆の結論)がありました。

一応よくまとめられているのがヤメ検の郷原氏の記述です。
わかりやすくはありません。

国家戦略特区の基本方針に関する閣議決定の把握の手落ち

ここの理解の不足が 一番重要であり、真逆の見解が流通している原因です。

上記①の事実、つまり、国家戦略特区の基本方針に関する閣議決定がなければ、4条件を充たしていることの説明は申請側にある、と言えそうですが、国家戦略特区という特性の元、①の閣議決定の事実があることによって文部科学省に正当な理由の挙証責任があるということになります。

基本方針:https://web.archive.org/web/20170607173618/http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/pdf/kihonhoushin.pdf*1
青山議員が示した、挙証責任の所在についての認識は、衆議院での審査で、吉田宣弘議員の質疑の中で原英史参考人(国家戦略特区のワーキンググループ)の答弁においても示されています。

http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=47396&media_type=

原参考人による該当答弁は動画の2時間49分30秒あたりからです。
DHCテレビでも出てますが、本当にわかりやすく説明する方ですね。

2014年基本方針の閣議決定が挙証責任の根拠となる理由

これは基本方針の閣議決定を見ただけではわからない。

議事録を読まなければならない。

国家戦略特区の諮問会議の議事録(この日がわかりやすく書いてます)((http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai1/gijiyoshi.pdfによれば、

【スピード感のある規制緩和】が目指されていたことがわかります。

※もちろんこの日の議事録だけでなく、関連する議事録を見ればそのような方針でやってきたのだということがわかります。

そのため、申請者が要件充足を主張すれば原則採用とし、要件充足しないと省庁が考える場合には省庁に説明義務を課すべき、との甘利議員の発言が収録されています。

つまりまとめると、挙証責任が省庁にあるということは、国家戦略特区の特性としてスピード感のある規制緩和を目指すという目的に適うものであり、この点がまさに重要な点になる、ということです。

加計学園問題に関する重要な前提事実の概要

  1. 獣医学部の偏在:箱根の東に8〜9割の学生
  2. 大学平均23%の定員超過:教室からあぶれる学生も
  3. にもかかわらず既存大学は定員の拡張なく、設備、教授の増加が0か不十分
  4. 同時期に医薬学部等は増え、獣医学部のみ差し止め

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加戸前愛媛県知事の答弁で、日本獣医師会の猛烈な反対と文科省の岩盤規制があるなか、加計学園事務局長と愛媛県議会議員が偶然友達だったという事実が明らかになりましたね。それが契機となったと。
安倍晋三関係ないですね…そしてそのこと自体非難されるべきことなのでしょうか? 

なお、信ぴょう性の怪しいメモだの文書だのが他の議員によって質疑されていましたが、重要な事実は青山議員が指摘するように公開資料ですべて把握できるものです。 

挙証責任の部分については、かなり理解が難しいので、概要をまとめてみた次第です。

より全体像を掴みたい方、細かい部分も把握したい方は、青山議員の質疑と加戸氏の答弁を聴けば(まとめて50分程度)、概要はわかると思います。青山さんの質疑、加戸さんの応答ともにわかりやすく、理解しやすいです。

以上

*1:※平成29年7月改訂前の魚拓です該当個所は23ページ。当該規 制所管府省庁において正当な理由の説明を適切に行うこととする。」とい箇所が、いわゆる「挙証責任」が規制省庁=文科省にあるということを意味します。「挙証責任」という用語が用いられているわけではありません。 現行のものはこちらhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/pdf/kihonhoushin.pdf