事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「朝日健太郎は参議院で仕事をしていない」という印象操作と国会質問の時間配分

朝日健太郎

他でも横行しかねない印象操作

「朝日健太郎は参議院で仕事をしていない」言説

「自民党の朝日健太郎参議院議員(東京選挙区候補者)は参議院で仕事をしていない」という言説があり、その根拠として国会の本会議での出席・発言数を示した図表を添付しているツイートがあります。

これは切り取りによる印象操作です。

本会議と委員会の出席日数で国会議員の仕事判断をする愚

朝日健太郎 | 参議院議員の実績 | 国会議員白書

上掲ツイートの主が引用したのと同じサイトでは、全議員について「本会議」のほかに「委員会」の出席回数や発言回数などが記録されています。

委員会の項目を見ると上掲画像の通りです。

他の議員でこれよりも下回っている発言回数の議員は居ますし、国会での議員個人の発言の機会というのは実は与野党協議である程度の幅が決められています。

そもそも、本会議と委員会の出席日数でのみ国会議員の仕事判断をするのはやめた方がいいです。

与党と野党の質疑時間の割り当ては野党の方が多いという大前提

質問時間配分、参院で対立ない理由 「片道方式」と配慮:朝日新聞デジタル 2017年11月28日 19時27分

衆院予算委では質問時間をめぐり与党側が「与党5対野党5」を提案したのに対し、野党側は従来通り「2対8」を求め、激しく対立した。一方、参院では対立がなく、時間配分はほぼ5対5で落ち着いており、衆参で違いをみせる。

 背景には、衆参で異なる「質問時間」の考え方がある。衆院の質問時間は、首相や閣僚が答弁した時間も含む「往復方式」で、政府側が長く答弁すれば議員の質問時間もその分減ってしまう。これに対し、参院予算委の場合は、原則として首相らの答弁時間を含まない「片道方式」で行われる。

 参院でも少数野党の質問時間は短い。しかし、簡潔に数多く質問すれば多くの答弁を引き出すことができる。社民党の福島瑞穂・前党首は「片道方式のメリットは大きい。質問時間が5分、10分でも相当聞ける」と話す。

 各会派への時間配分の決め方も少数会派への配慮がある。まず、委員の人数に応じて各会派に割り振り、与党の時間の一部を野党に譲る。参院予算委で野党との交渉役となる自民党の石井準一参院議員によると、与党は野党の質問時間を上回らないようにし、少数会派には委員1人あたり12分を割り当てる方針という。

 こうした質問時間の考え方や配分方法が野党の不満を少なくしているとみられる。29日からの参院予算委の場合、質問時間は与党47%、野党53%

このページが最もまとまっていたので引用しますが、参議院において、与野党の質問時間の配分は、野党の方が若干多いもののほぼイーブンです

ただ、そうすると、少数政党の議員個人は与党の議員個人よりも発言の機会は多くなりますし、与党の議員はその分、発言回数が比例的には少なくなります。

具体的にみると、現在の与党は自民党109+公明党28=137議席、野党は106議席。

137議席で47の時間をとるのと106議席で53の時間をとるのとでは、後者の方が単純計算での時間は多い。これは発言の機会という枠にも影響する話でしょう。

そして、これは衆議院だとさらに大きな差となります。

衆院委の質問時間配分Q&A | ニュース | 公明党

Q 衆院の各委員会で与野党の質問時間は、どのように決められますか。マスコミは今国会で与党が「質問時間の配分の慣例を見直した」と言っています。

A 衆院の委員会質問の時間配分については、議会運営の基準となる「先例集」で、「各会派の所属議員数の比率に基づいて、各会派に割り当てる」としています。今の会派構成に当てはめた場合は、与党対野党で「7対3」の比率です。

ただ、与党は政府提出の法案について、事前に政府と議論を重ねています。また、先例通りに割り当てると少数会派の時間は、ほとんどなくなってしまいます。そのため、与野党が協議した上で与党が、野党に質問時間を譲るのが慣例となっています。

Q 最近は、おおむね「2対8」だったと報道されていますが、いつからですか。野党時代の自民党の要求だったのではないですか。

A 衆院では、2009年の民主党政権誕生まで、おおむね「4対6」でした。ところが、民主党が与党になると、当時の民主党幹事長が、質問時間を減らす方針を示しました。その後、自民党との協議を経て「2対8」となり、12年に自公両党が政権を奪還した後も継続していました。

Q 衆院選の結果を受けて、与党が質問時間の増加を求めたのですか。

A これまでも与党は、議席数に応じた質問時間を求めてきました。今年7月の閉会中審査では与党が「5対5」を求めましたが、協議の末、「3対7」で合意。今月15日の衆院文部科学委員会でも与党は最初に「5対5」を求めていますが、野党と協議を重ねる中で最終的には少数会派の質問時間の確保に配慮した「1対2」となりました。

衆議院の場合は与野党比が4対6⇒2対8⇒3対7、と変遷してきましたが、野党の方が多いことに。野党は議席数が少ないのだから、発言枠も与党の議員個人と比して比例的に多く配分されることに(あくまで単純計算。ある議員の質問力が優れているなどの場合にはその党の内部において傾斜配分されるだろう。)

「発言≒質問の機会が多いか少ないか」、という数字を参考にする程度には良いですが、それだけでなにか国会議員の仕事ぶりを評価するのはやめた方がいいのは、こういう仕組みがあるからです。

与党と野党の議員の発言機会や文字数などを比べる、というようなことは、あまり意味が無いのですが、そもすると選挙時に印象操作として使われる危険があるということが言えるでしょう。

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