基本的に憲法違反、という所からがスタート。
- 「ハラール給食」報道の炎上
- 憲法違反である恒常的全体的なハラール給食
- 「ハラール食」とは?「豚肉・アルコール抜き」どころではない
- ムスリム関連の外国の団体・組織の経済利権を創り出すことになる
- エホバの証人剣道受講拒否事件最高裁判決との事案の違い
- 選択制でも政教分離原則違反のハラール給食:他の宗教者から見たら特権的地位
- ハラール認証食を導入した保育園の対応例とマスメディアの思惑
- 過激な「日本の行政・教育機関・子供が合わせろ」論は憲法違反ど真ん中
「ハラール給食」報道の炎上
「ハラール給食」の報道*1*2*3*4や行政側の発信が発見される度にSNSでは炎上していますが、ネット上には誤解に基づく主張が溢れています。
実は、報道等されている実施例は以下のものに整理できます。
- 極めて少ない頻度(年1,2回)でお試し体験的に他の児童生徒も同じハラール食の給食を食べる機会を設ける例
- 特定のイスラム教徒の児童生徒に給食時の個別対応として豚肉抜き・特定調味料抜き程度の工夫をしている実施例
決して「日本人の児童生徒が、毎日恒常的に、ハラール給食を食べることを強いられる」という事ではありません。
たとえば四日市市の認定こども園は、「豚肉の除去や代替え食品での対応、またポークエキスや酒、みりんを使用せず別の調味料での対応を基本とする。それ以上の高いレベルの厳格な対応を求められた場合、保育施設の給食での対応は困難なため、保護者との面談の上、弁当持参も可とする」といったものでした。
ところが、「給食」という語のせいでムスリムでもない児童生徒が常態的継続的にハラール食を食べさせられているという認識に陥る人が後を絶ちません。「コオロギ給食」報道へのネットSNSの反応も同じ構造の誤認識が振り撒かれていました。
他方で、非ムスリムの日本人に対して「ハラール給食」を強要する言説が振り撒かれている例もあるように、相当に注意すべき点があるのも事実です。
特に、憲法上の政教分離原則との関係は無視できません。
憲法違反である恒常的全体的なハラール給食
日本国憲法
〔信教の自由〕
第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
〔公の財産の用途制限〕
第八十九条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
教育基本法
第十五条 宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。
2 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
公立の学校等を念頭に置いた言及をしますが、「ハラール給食」が全生徒に恒常的に提供され、或いは過剰な負担でもって提供されるなら、日本国憲法20条・89条の政教分離原則や教育基本法15条の宗教教育の禁止に反することになります。
公立学校給食における恒常的なハラールは、特に憲法20条2項の問題で「子供たちが宗教的行為を強制される」という問題がメインです。よく参照される20条3項・89条のように、国が宗教の援助助長等をするとか、そういう領域にとどまらないわけです。
こういう制約があるのだということを気づかせる言説が少ないので強調しておきます。
行政や教育委員会では、とっくに憲法との関係は検討されていて、それに抵触しない&実務でも過剰な負担とならない措置が採られているんでしょう。
報道は、その辺りを指摘せず、単にハラール給食を「先進事例」として「信教の自由という人権に配慮するのが素晴らしい」という論調ばかりです。
全児童生徒に極めて少ない回数のみ、お試し体験的に提供されることは、「宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養」を育むことになり、教育目的と整合的ですし、特定の生徒相手にアレルギー対応と類似の方法で過剰な負担無く対応するものであれば、憲法上の問題は生じません。
また、私立であればそもそも自由ですから、余程のことが無い限り憲法上の問題は生じません。たとえば、キリスト教系を謳う学校なんてありふれてますからね。高い金払って私立に行くなら、ハラールも出るんじゃないですかね。でも、それで別の「客」が離れても知りませんよというだけ。
実際、東京のイスラム国際学校みたいに、イスラム教系学校はありますし。
もっとも、上で「過剰な負担無く」と書いたように、特定ムスリム児童への対応だとしても、要求がエスカレートするならば、現場の対応コストが膨大になり、公立においては、もはや行政による宗教的活動と評価すべき事態になり得ます。
「ハラール食」とは?「豚肉・アルコール抜き」どころではない
本来は「豚肉・アルコール抜き」だけすればいいってものではないんですよ。
*1:ムスリムの子供増加 学校で理解と折り合いを(2/2ページ) - 産経ニュース 2018/9/26
*2:「月の半分ほどは食べられない」ムスリムの子の給食どうすれば…北九州市の学校現場の苦悩|【西日本新聞me】2024/3/24
*3:みんなの給食:茨城県境町、五霞町 ハラール給食 初めてみんなと一緒に | 毎日新聞毎日小学生新聞 2024/9/22