事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

IOCバッハ会長「スポーツはウイルスと戦える」が拡散

バッハ会長「スポーツはウイルスと戦える」

過去の話で誤解が拡散。

IOCバッハ会長「スポーツはウイルスと戦える」が拡散

6月21日以降、IOCのバッハ会長の発言として「スポーツはウイルスと戦える」 というタイトルのolympics.comの記事がなぜか拡散されました。

スポーツが命を救う - IOCがWHOとの連携を強化

これは同日の以下のツイートが発端となり、知念医師のツイートがバズったことによるものです。

IOCがWHOとの連携を強化の記事は2020年5月のもの

先ほどの日本語の記事の元ネタは、昨年2020年5月16日の英語記事です。

IOC President Bach writes to Olympic Movement: Olympism and Corona - Olympic News魚拓

もっとも、日本語の記事は2021年1月2日付の表示になっているところがあり、タイミングはよくわかりません。

f:id:Nathannate:20210622174636p:plain

バッハ会長の趣旨:スポーツの一般的な健康増進と社会経済的役割

Social impact
We can fairly assume that, in the post-coronavirus society, public health will play a much more important role. Sport and physical activity make a great contribution to health. While studies by the WHO had already demonstrated this with stunning results concerning non-communicable diseases, the coronavirus crisis teaches us how much a sound general health situation helps to overcome communicable diseases as well. Sport and physical activity are therefore the perhaps most low-cost tool for a healthy society. To make this even more evident too, the IOC is about to conclude a new Memorandum of Understanding with the WHO.

We can highlight the significance of sport for inclusivity and integration. Sometimes, sport is the only activity that unites people regardless of their social, political, religious or cultural background. Sport is the glue bonding a society together. Such inclusivity is even more important in otherwise deeply divided societies.

バッハ会長の趣旨としては、スポーツの一般的な健康増進と社会経済的役割について説明したものであり、スポーツをすることで直接的にウイルスを克服することを企図したものではありません。

普段から健康上の問題を抱えている者はウイルス感染すると重症化しやすく、死亡しやすい、というのは、科学的な事実です。

スポーツが一般的な健康に良い影響を与えるという効果も、一定程度実証されている科学的事実です。

だから、スポーツをして健康体になれば個人のウイルス防護にとって一定の効果がある。

これも否定できない事実でしょう。

バッハ会長は慣れない英語でスポーツについて"important to combat to the virus and to overcome"と大げさにみえる表現をしていましたが、全体の趣旨としては決して「安易にスポーツやって免疫つければコロナなんて怖くない」などというものではありません。

スポーツと感染拡大対策

多分、日本語記事にもあるように「アクティブな生活を過ごす人ほど」という部分が、感染拡大対策とは相容れないもののような印象になっているのが、医師らが反応した原因だろうと思われます。

が、これは個人にとっての話であって、「社会において集団が接触機会を増やす」ことを意味しない趣旨でしょう。

もっとも、「スポーツする」となれば、社会全体を考えると集団スポーツはもとより施設を使う運動も社会全体で接触機会が増えるのは確かです。

ある範囲での一定の時期、感染対策でスポーツ活動を休止せざるを得ないことはあるだろうが、それが全くない生活がずっと続くこともまた問題でしょう

感染拡大防止の政策論と相反しないようなスポーツの社会実装を模索していこう、そのために医学とスポーツは議論をしていくという方向性は間違ってない。

スポーツ界と医学界の分断を煽るようなエンタメにするのはやめたらどうか。

以上:はてなブックマークをして頂けると助かります。