事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

Colabo仁藤夢乃「売春は差別用語だから削除せよ」第4回困難な問題を抱える女性への支援に係る基本方針等に関する有識者会議傍聴

言葉を左右することで支配しようとしている

Colabo仁藤夢乃「売春は差別用語だから削除せよ」

一般社団法人Colaboの代表である仁藤夢乃氏が、第4回困難な問題を抱える女性への支援に係る基本方針等に関する有識者会議修正前資料の魚拓)の資料に「売春」という用語は差別用語だから削除せよ、と要求している文面が見つかります。

その主張自体がおかしいのですが、さらにおかしな点、というよりも、事実と異なる点があります。

これまでの「検討会」でも指摘され続けているという嘘

「売春」(※この言葉自体が差別的であり問題であることはこれまでの検討会でも指摘され続けているため「」をつけるか旧法に合わせて「売春をおこなうおそれのある女子」とするべき。

仁藤氏が言っている「検討会」とは、自身が参加していたものであるから、2018年7月30日から設置された「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」を指します。平成24年の検討会=【婦人保護事業等の課題に関する検討会】では仁藤氏は構成員に入っていませんでしたので。

これを調べると、第6回の検討会の際に売春防止法に関する差別的な用語法が集中的に指摘されていたことがわかります。

○ 仁藤構成員 ~省略~

そして売防、3番の問題についてなんですけど、売防法の見直しについてのところでですね、根拠法である売防法に係る課題として以下の点が挙げられているということ27ページに書いてありましたけど、私はやっぱりここでは明記できないということなのかなと思ったのですが、この法律の一番の問題というのは、運用、現実と合ってないということはあるのはもちろんですが、女性差別的な法律になっているということがやっぱり問題で、そこを変えていくっていうことを、ちゃんとやっていかなきゃいけないと思っています。

https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000407358.pdf

「第2章第5条、第3章を廃止することで、被害女性を転落女性とみるなどの差別的な表現を削除して」…

売春防止法の第2章第5条というのは、売春目的の勧誘行為に刑事罰を科す規定。

第3章とは、5条に違反した者について補導処分を課し、その後の婦人補導院への収容、更生保護法の適用などについて規定する内容です。

つまり、決して「売春」という一文字について「差別的」と言っているわけではないということです。

他の構成員も別の場面で「差別的」という言葉を使っていますが…

○ 戒能構成員 ~省略~
さらに「要保護女子」という言葉は、この今日の論点の中でも使われていますが、、これは思想的にも、それから支援の実態からいっても、人権保障の理念からかけ離れたものであるということと、こういう考え方が、支援が必要な女性たちを、支援から遠ざけてはいないだろうかという点も考える必要があるということです。
それで先の、平成24年度の検討会があったわけですが、もうそこでこういう差別的な文言が、真っ先に取り外しましょうということで合意されていると思っております。だから例えばですね、収容とか指導とか保護更生とか、そういう文言を、まず除くということはすぐにでもできることではないかと感じております。

○横田構成員 ~省略~

売春防止法による対象の範囲の「要保護女子」という言葉はですね、売春防止法だけにしかない言葉なのです。非常に差別的な言葉だと思っています。入所している女性たちは、「あなたたちは要保護女子ですよ」と聞いたら、すごくびっくりするかと思います。そんな中、改めて新しい法律の改正あってこそ、今議論しているんだという事を現場からお伝えしたいと思います。ありがとうございました。

要保護女子」とは、「性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子」と定義されています。が、ここでも売春という単語そのものを問題視しているのではなく、「保護すべき対象が全て売春を行うおそれがある」というものとして規定されていることに対して問題視しています

○横田構成員 ~省略~

また、売春防止法の施設というだけで、まだ地域の中で非常に差別的に見られています。それは暮らした者でなければわかりません。そして、今大谷構成員からのご質問もありましたので、ご報告させていただきます。入所者のほとんど暴力による被害を受けた方たちです。その結果、乖離障害とか情動不安定とか、適応障害とか起こしてる方たちがかなりおります。知的障害の方たちも多いです。この状況は売春防止法が制定されて施設利用した女性たちとほとんど変わっていません。ということは、すごく生きづらいものを抱えている女性たちにとって、時代は流れても、支援の施策は何ら変化がないということです。そういう意味ではですね、本当に弱い者が弱い者のまま、放置されていることなのです。しかも、売春防止法という差別的な法律、売春という言葉だけで、「あそこの施設には売春婦がいるんだよ」特定された見方が社会の中にはまだまだあります。私たちは今その差別を取り除こうとして、地域と連携を強化し理解を求めて活動しておりますけども、そういう実態があることをわかっていただきたいと思います。

横田氏の発言は、売春という言葉単体ではなく、売春防止法の中で位置づけられた女子に関する言及の仕方のせいで、特定の見方が形成されてしまっていることを問題視しています。

これらの指摘は、正当だと思います。

が、何度も言うように、2022年12月26日付けの資料で仁藤氏が言っているような「売春という言葉そのものが差別」というのはおかしいし、それは過去の「検討会」でも言われていなかったわけですから、仁藤氏の記憶違いです。

これ以前も以後も、当検討会において「売春」という単語そのものが差別的である、という議論は存在していません。「収容」「保護更生」「要保護女子」「指導」という用語が差別的だとする指摘はありますが…

平成24年の婦人保護事業等の課題に関する検討会では「売春」について議論されたようだが…

なお、平成24年の婦人保護事業等の課題に関する検討会のこれまでの議論の整理では…

「売春」という用語そのものについての検討の跡が残っています。

が、その方向性としては「売春という語を残すことが適当ではないか」というものであり、補助的に「売春という言葉自体を見直す必要があるとの意見もある」と書かれているにとどまり、用語自体の見直しの主張は平成24年の検討会であってもメインストリームではなかったということが伺えますし、それが「その単語自体が差別的だから」という論じ方が為されていたのかは不明です。

以上:この法律や有識者会議の議論、相当数の構成員らはヤバすぎます。多くの人に知られないといけません。