日本国・地方行政の財政不安が無くなると同時に外国人の人権を守る改正
- 厚労省社会保障審議会年金部会での外国人の厚生年金国民年金の脱退一時金議論
- 再入国許可付きで出国した外国人には当該有効期間内は脱退一時金は支給しない方向
- 単純出国後の再入国・そもそも出国しないで再就労する外国人の脱退一時金請求時の把握と対応
厚労省社会保障審議会年金部会での外国人の厚生年金国民年金の脱退一時金議論
厚生労働省の社会保障審議会年金部会において、外国人の厚生年金・国民年金の脱退一時金に関して議論が重ねられてきましたが、11月15日の第20回の議事において、改正の方向性が固まりました。
なお、この日の議事のほとんどは、いわゆる「年収の壁」への対応についての議論で占められています。
ライブ配信⇒https://www.youtube.com/live/stTZArUSyMQ
※議事録/議事要旨が公開されたら消されるはず
再入国許可付きで出国した外国人には当該有効期間内は脱退一時金は支給しない方向
この日示された見直しの方向性の中核は、【再入国許可付きで出国した外国人には当該有効期間内は脱退一時金は支給しない】というものです。
この方向性は、直前の報道と一致しています。
もともと外国人の脱退一時金は、厚生年金・国民年金の掛け捨てとならないよう設けられたものでした。再入国が予定されている者は、日本の公的年金に加入し、老齢年金の受給資格を満たし得る可能性があるため、制度趣旨からも、当該外国人の将来の生活維持の観点からも有益なものと言えます。
これにより日本国・地方行政の財政へのインパクトも回避できます。
なお、社会保障協定を締結している国の中で通算規定がある国では*1、日本で支払った年金保険料が相手国での年金受給資格分としてカウントされています。
この日出席した委員からは賛成の意見のみが語られました。
再入国許可(説明の仕方からは、みなし再入国許可も含むようです)の期限を徒過した場合には当該出国外国人は脱退一時金が請求可能になりますが、その事について出国時に周知を徹底するなどの方法が検討されることになりました。
たとえば技能実習2号から3号への切り替えの際には、いったん帰国してから再入国しなければならないこととなっており(みなし再入国許可)、このような場合にも効果を発揮します。
この時にボーナス感覚で脱退一時金を得ることを売りにしているブローカーや(脱退一時金と知らせずに)、脱退一時金の請求代行業で利鞘を得ている現地事業者も居り、制度趣旨に反する運用が為されていたことについて歯止がかかることになります。
単純出国後の再入国・そもそも出国しないで再就労する外国人の脱退一時金請求時の把握と対応
再入国が予定されている方を外形的に判断していく際に一つあるのが再入国許可制度だと思っています。
厚労省の説明担当者が資料の説明をする際に、このような発言をしていました。
これは要するに、「再入国許可」制度の枠組みに該当する者ではない者も、再入国を予定しているケースがあるということを認識しているということです。
たとえば、単純出国後の再入国など。
日本に人材を送り出している側が、制度改正に合わせてこちらの手段にシフトする可能性は残るため、これについてはどう対応するか?
(技能実習制度の場合はこの手段は不可能なので無視できる)
さらに、脱退一時金を請求・支給を受けて日本国内で再就労している者の中には、そもそも出国していない者も含まれる可能性があります。
なぜなら、年金機構は自治体からの転出届で脱退一時金の申請を受け付けており、脱退一時金の申請時において、本当に出国しているかを国独自で把握しているわけではないからです。出入国在留管理庁も同様です。外国人から転出届が出された際に自治体職員が空港まで付いて行くわけではないですから、確認できていない、という現実からは、このような予測も生まれるのは必然でしょう。
このような制度趣旨に反する場合についても、今後は申請の方法を工夫したり、DXの推進も求められているようにマイナンバーを使うなどした追跡を可能にすることで対応できると思われます。
他、永住者に対する脱退一時金の支給を一定程度制限することも稲田朋美議員から指摘されていますが、こちらは法務省下の入管庁による永住許可制との整合性を取る必要があるため、今後の議論にまかされたと思われます。
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