事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

共産党「非実在児童ポルノは子供の尊厳を傷つける」「表現の自由を守ります」???

共産党、非実在児童ポルノは子供の尊厳を傷つけるため規制へ

共産党が表現規制へと舵を切りました。

共産党「非実在児童ポルノは子供の尊厳を傷つける」「表現の自由を守ります」

7、女性とジェンダー(2021総選挙/各分野政策)│各分野の政策(2021年)│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会

―――児童ポルノは「性の商品化」の中でも最悪のものです。児童ポルノ禁止法(1999年成立。2004年、2014年改正)における児童ポルノの定義を、「児童性虐待・性的搾取描写物」と改め、性虐待・性的搾取という重大な人権侵害から、あらゆる子どもを守ることを立法趣旨として明確にし、実効性を高めることを求めます。

 現行法は、漫画やアニメ、ゲームなどのいわゆる非実在児童ポルノ」については規制の対象としていませんが、日本は、極端に暴力的な子どもポルノを描いた漫画やアニメ、CG、ビデオ、オンライン・ゲーム等の主要な制作国として国際的にも名指しされており、これらを適切に規制するためのより踏み込んだ対策を国連人権理事会の特別報告者などから勧告されています(2016年)非実在児童ポルノは、現実・生身の子どもを誰も害していないとしても、子どもを性欲や暴力の対象、はけ口としても良いのだとする誤った社会的観念を広め、子どもの尊厳を傷つけることにつながります。「表現の自由」やプライバシー権を守りながら、子どもを性虐待・性的搾取の対象とすることを許さない社会的な合意をつくっていくために、幅広い関係者と力をあわせて取り組みます。

日本共産党の「2021総選挙政策」の分野別政策として「女性とジェンダー」の項目の中に「非実在児童ポルノ」は「子どもを性欲や暴力の対象、はけ口としても良いのだとする誤った社会的観念を広め、子どもの尊厳を傷つけることにつながります」「児童ポルノの定義を、「児童性虐待・性的搾取描写物」と改め」と記載。

さらに、国連人権理事会特別報告者の2016年の勧告を引いて、「社会的な合意をつくっていく」、と宣言しています。

60、文化(2021総選挙/各分野政策)│各分野の政策(2021年)│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会

――「児童ポルノ規制」を名目にしたマンガ・アニメなどへの法的規制の動きに反対します。

他方で「文化」分野では「児童ポルノ規制」を名目にしたマンガ・アニメなどへの法的規制の動きに反対するとしています。

2016年の国連人権理事会の特別報告者の勧告・報告書でマンガ・アニメ規制

2016年の国連人権理事会の特別報告者の勧告が何を指すのか不明ですが、同理事会が3月10日に出した"Report of the Special Rapporteur on the sale of children, child prostitution and child pornography on her visit to Japan"と思われます。

ブキッキオが国連に対して出した報告書として3月3日の"Report of the Special Rapporteur on the sale of children, child prostitution and child pornography on her visit to Japan"も要参照。こちらはメディアでは「JKビジネス」に関連して大きく報じられたものです。

仮訳は山田太郎議員のページにあります。「勧告」と「報告」は別です。

パラグラフ番号などにミスがありますが文章はそのまま抜き出して論じています。

国連女子差別撤廃委員会からの勧告 | 参議院議員山田太郎 公式サイト

国連人権理事会へのブキッキオ氏の報告書と日本政府の反論 | 参議院議員山田太郎 公式サイト

なお2016年にはデービッド・ケイによる"Preliminary observations by the United Nations Special Rapporteur on the right to freedom of opinion and expression, Mr. David Kaye at the end of his visit to Japan (12-19 April 2016)"という報告書が出てるがこれとは別。 

これらを読むと、「国際的な人権規範・基準によれば、児童のポルノ的な表現は描写された児童が現実のものか仮想のものであるかを問わず、児童ポルノであるとされている」という記述があり、それとは別に「マンガのようなビデオゲームやアニメのポルノグラフィーが女性に対する性暴力を助長させている。」という記述も存在。

つまり、日本共産党はこのような意味で「児童ポルノ」を捉え、また、マンガやアニメの表現が女性に対する性暴力を助長させている、という世界観を持っているということを意味します。

共産党の言い訳「一足飛びに創作物の法的規制を提起したものではない」と誤魔化し

これに対してネットで共産党に対する批判が噴出したため、以下言い訳をしています。

「共産党は表現規制の容認に舵を切ったのですか」とのご質問に答えて - 日本共産党 個人の尊厳とジェンダー平等のための JCP With You

A 「7、女性とジェンダー」での記述にあるように、日本共産党は、児童ポルノは「性の商品化」の中でも最悪のものであり、児童に対する最悪の性虐待・性的搾取であって、社会からなくしていかなければならないと考えています。

同時に、「60、文化」の項にあるように、「児童ポルノ規制」を名目にしたマンガ・アニメなどへの法的規制の動きには反対です。

今回、「女性とジェンダー」の政策の中に、児童ポルノの定義を「児童性虐待・性的搾取描写物」と変えるとあることをもって、これまでの方針を転換し、マンガやアニメなどの表現物・創作物を法的規制の対象にしようとしているとの理解が広がっていますが、そうではありません。

「児童ポルノ」という言葉については、日本共産党は従来から、被害実態をより適切に表す「児童性虐待描写物」などに改めることを提起してきました(2014年6月17日、参院法務委員会議事録参照)。「児童ポルノ禁止法(1999年成立、2004年、2014年改正)」の保護法益は、実在する児童の自由と人格であり、その規定も、わいせつ性や主観的要素を構成要件とするのではなく、児童への被害の重大性を評価する必要がある、という観点からの提起です。

今回の「女性とジェンダー」の政策は、一足飛びに表現物・創作物に対する法的規制を提起したものではありません。日本の現状への国際的な指摘があることを踏まえ、幅広い関係者で大いに議論し、子どもを性虐待・性的搾取の対象とすることを許さないための社会的な合意をつくっていくことを呼びかけたものです。

大前提として日本における「児童ポルノ」は実在児童が被写体となる場合のことです。

この文章には「からくり」があります。

  1. 「児童ポルノ」について盛んに論じている
  2. 非実在性児童ポルノ」が問題視されているのにそれについては触れていない
  3. 「一足飛びに」表現物・創作物に対する法的規制を提起したものではないという表現であり、一足飛びではない議論をした後には、「非実在性児童ポルノ」の法的規制を提起しても嘘はついていないことになるようにしている
  4. 「実在する児童の自由と人格…」の部分は「保護法益」を論じる際の言葉であって、非実在の児童の描写が、実在する児童の自由と人格という保護法益を害するというロジックが否定されていない
  5. 「これまでの方針を転換し」ているわけではないとあるが、文言上は明らかに方針が変わっている

5番について以下で過去の共産党の発信を確認しましょう。

過去の共産党「創作物を規制対象に加えることは逆に人権侵害や表現の自由の委縮」

過去の共産党はどう発信していたか。

2009年には以下論じていました。

2009年総選挙 分野別政策 27 いのち・人権の尊重│政策│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会

一方、児童ポルノ法で単純所持を一律に規制したり、漫画・アニメーションなどの創作物も規制対象に加えたりすることは、児童ポルノ問題の解決に役に立たないだけでなく、逆に、人権の侵害や表現の自由の萎縮につながりかねません。

 第1に、たとえ単純所持を法律で一律に規制したとしても、児童ポルノの流出の効果的な歯止めにならないことは、単純所持を禁止しているはずの欧米各国の実態からも明りょうです。よく、「主要8カ国のなかで児童ポルノの単純所持を規制していないのは、日本とロシアだけだ」と指摘されます。しかし、現にインターネット上に流出している児童ポルノ(児童虐待)の動画像は、単純所持を禁止している欧米諸国からのものが圧倒的に多数です。たとえば、イタリアに本拠をおく児童保護団体の「虹の電話」による調査(2007年)では、児童ポルノの国別サイトの順位では日本が7番目の457件となっています。一方、日本より上位の6カ国は、ドイツ、オランダ、アメリカ、ロシア、キプロス、カナダとなっており、このうち、上位3カ国のドイツ、オランダ、アメリカだけで、全児童ポルノサイト(3万9418件)のうち、実に約85%の3万3303件を占めています。これら3国は、いずれも児童ポルノの単純所持を禁止している国です。このことをとっても単純所持の禁止や規制が、児童ポルノ流出の歯止めにならないことは明らかです。

 第2に、ネット上に流出していないにもかかわらず、単純所持を規制し、それを処罰するという場合、どのようにして単純所持を証明・把握するのかという問題があります。このことは、「憶測」や「疑惑」の段階から取り締まりを可能にすることにつながりかねず、結果として、捜査当局の恣意的な捜査を招く危険があります。また、表現の自由や、家庭生活上の写真などと児童ポルノとの関係なども考慮しなければなりません。

この文章は主に児童ポルノの単純所持を罰することに反対するものですが、その中に児童ポルノにとどまらない「漫画・アニメーションなどの創作物」について、規制対象に加えることは「児童ポルノ問題の解決に役に立たない」だけでなく、「逆に、人権の侵害や表現の自由の萎縮につながりかねません」とまで言い切っています。

2013年でも児童ポルノそのものの作成・流通・販売をきびしく禁止し、取り締まることには賛成としつつも、「単純所持」を法的に禁止することに反対していました。

41、いのち・人権の保障(2013年参議院選挙各分野政策)│各分野政策(2013年)│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会

一方、児童ポルノ法で単純所持を一律に規制したり、漫画・アニメーションなどの創作物も規制対象に加えたりすることは、児童ポルノ問題の解決に役に立たないだけでなく、逆に、人権の侵害や表現の自由の萎縮につながりかねません。

この部分は2009年と同じ文言が続きますが、2013年版ではさらに以下のように、マンガ・アニメーションに関する規制が及ばないよう詳細に論じています。

日本漫画家協会や日本雑誌協会からは、自公維の「改正」案にたいして、きびしい反対の意見が上がっています。たとえば、漫画家協会の「児童ポルノ規制法案に向けての意見書」(2013年5月29日)は、「他国に類を見ない独自のマンガ文化を育んできた日本の貴重な文化的土壌が、危機的に変質させられる可能性が非常に高い今回の規制法案について、創作者の立場から見過ごせない問題がある」「今回の法案では、単純所持まで規制の対象としており、仮にマンガ・アニメなども規制の対象になると、諸外国のような文化的除外規定のない我が国では、多くの漫画家が新たに描き起こす、未来の作品全般に対する重大な悪影響はもちろん、過去作品の原稿までが新しい規制に抵触してしまいます」と重大な懸念を表明しています。

 また、日本雑誌協会の「『児童ポルノ禁止法』改正法案への反対声明」(2013年5月29日)も、「『児童ポルノ』の定義が曖昧なままでの「単純所持禁止」は不当な処罰を招く」としたうえで、マンガ・アニメにまで規制を及ぼそうとしていることについて、「児童保護の名を借りて不要な表現規制をかけ、読者から漫画を読む権利を奪うものといえる。そうした過剰規制は表現の萎縮を招き、漫画という日本の誇る表現形態の破壊につながりかねない」と批判しています。この声明には、日本出版書籍協会も名前を連ねています。

 このほかにも日本マンガ学会、日本アニメーター・演出協会、全国同人誌即売会連絡会などの関連団体から、いっせいに批判の声があがっています。

 安倍首相は、2013年2月28日の施政方針演説で、マンガやアニメなどを、世界に誇る文化として発信していこうと、次のように演説しました。

 「日本のコンテンツやファッション、文化・伝統の強みも、世界から注目されています。アニメなどのブームを一過性のものに終わらせることなく、世界の人たちを惹(ひ)きつける観光立国を推進することに加え、『クール・ジャパン』を世界に誇るビジネスにしていきましょう」

 それぞれの国民や業界団体などがそれぞれの立場で開拓し蓄積し、根づかせてきた文化や芸術について、海外に売り込むために政府が音頭をとったり主導したりする点については、さまざまな意見や疑問があります。しかし、前述した諸団体の反対声明にあるように、自公維3党の児童ポルノ禁止法の「改正」案は、みずからの戦略に照らしても、日本発祥の世界に誇るアニメ・マンガ文化を振興するどころか、逆に水をさしたり冷水を浴びせたりする結果にしかならないことは明白です。

この後の2014年=平成26年6月18日,第186回通常国会において,児童ポルノ禁止法が改正され,同年7月15日から施行され、単純所持(一定の目的のもと所持する行為)が違法とされました。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律

そして2017年にも、児童ポルノの規制を口実に表現の自由の取り締まり、創作物の規制をすることに警鐘を鳴らしていました。

https://archive.md/a1Zgw

いわゆる「非実在児童ポルノ」と「非実在青少年」:廃案になった東京都の条例案

「非実在児童ポルノ」という概念がどういうものか定かではありませんが、これと同じ或いは類似の概念と思われる「非実在青少年」が社会問題となったことがあります。

東京都青少年の健全な育成に関する条例の平成22年(2010年)改正に対する反対運動は、この「非実在青少年」に関する規制に関して起こりました。

事の顛末をまとめている所はたくさんあるのですが、差し当たりは今現在、松戸市のVtuberに対する誹謗中傷問題に関し、全国フェミニスト議員連盟に対して辣腕を振るっているおぎの稔議員のページを置いておきます。

「オタクの戦い」東京都の非実在青少年問題を振り返る | おぎの稔 | 大田区議会議員 公式HP

※追記:山田太郎議員も言及したので背景事実を整理。

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