事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

台湾政府が否定したネット上の「日本が台湾を断った」言説の出処と能登半島地震に関する情報災害:百田尚樹と日本保守党

情報災害そのもの

台湾政府が否定:インターネット上の「日本が台湾を断った」言説

台湾政府が否定したインターネット上の「日本が台湾を断った」言説。

  1. 現時点では人的・物的支援については、一律で受け入れていない
    ⇒台湾だけではない
  2. 「現地体制の構築や負担を要しない支援」は受け入れている
    ⇒岸田総理は例として台湾の義援金6000万円の寄贈が発表と挙げる
  3. 石川県が交通渋滞により個人等の物資搬入を断っている状況
    ⇒能登半島の元々の地理的条件と地震の影響で道路寸断などと相まって交通事情が悪く渋滞が発生、現時点では過剰な人の出入りはむしろ有害と考えられる

  4. 在日米軍の支援の受け入れは発表されたが他の外国からの支援とは状況が異なる
    ⇒元々日本国内に居て独自の移動手段があり自衛隊とも平素から連携して支援実績もあって受け入れコストを考慮してもメリットを上回ると考えらえる

まとめるとこうした事情がありました。

が、ネット上ではこれらを解さない言説が拡散されました。

産経新聞が拡散:門田隆将「岸田上川は日台友好が深まるのが嫌か」

台湾の地震救助隊申し出に日本政府「ニーズない」SNSで広がる波紋、他国にも要請せず - 産経ニュース

ただ、X(旧ツイッター)では「中国に忖度したのか」「岸田文雄首相は『救命・救助に全力』というなら受け入れるべきだ」などと批判的な投稿が相次いでいる。

作家でジャーナリストの門田隆将氏もXで「1人でも〝命を救うために〟なぜ日本は受け入れないのか。岸田首相と上川陽子外相は日台の友好が深まることがそんなに嫌なのか」と疑問視した。京大大学院教授の藤井聡元内閣官房参与もXに「救援隊が足りているとは思えないが、岸田内閣は何かに配慮したのでしょうか」と投稿した。

産経新聞がなぜかX(旧Twitter)上の低俗な言説を取り上げてさも論争が生じているかのように報じていました。そこで紹介されたのは門田隆将氏と藤井聡氏の以下の投稿。

https://archive.is/DkCYy https://archive.is/iBbsB

なお、門田(門脇護)氏は台湾政府が「日本が拒否」を否定した後も以下の投稿をしていました。

https://archive.is/J9ACC

こうした言説は、どうやら百田尚樹・日本保守党界隈で盛んなようです。

百田尚樹・日本保守党界隈が主張する「岸田総理は某国に配慮したのか」言説

百田尚樹YouTubeチャンネルより

日本の台湾側の人的物的支援に関して、日本保守党党首の百田尚樹・日本保守党支援者界隈が「岸田総理は某国に配慮したのか」などと陰謀論を展開。

動画では「支援したという実績が残るのが大事」などと発言していました。

百田氏はXではしばらく「某国」という記述を用い、「中国」とは書いていませんが、支持者らは明確に「中国に配慮したのか」と主張しています。

新たな情報災害:能登半島地震の被災地を無視した政治的主張への利用

「正しさ」の商人 情報災害を広める風評加害者は誰かの著者である林智裕氏は本書の中で「情報災害」の要素として「政治的プロパガンダ」「商売目的」「自己顕示欲の発露」などを挙げ、それらの要因とした複合災害であると指摘していました。

一般に被災地の状況を最もよく知る県自治体や政府よりも情報を持っているならともかく、被災地の状況を無視した政治的主張への利用は、まさに情報災害と言えます。

特に、日本保守党界隈は従前は故安倍晋三元総理時代から政府側の主張を基に反政府活動界隈の言説を否定することをしてきただけに、新たな情報災害の発信源となったと言えます。

台湾側としては総統選の最中であり、台湾関係だけ殊更に「拒否・断った・某国への配慮か?」とする言説が拡散されては、「日台関係の構築に失敗した」という政権攻撃にも繋がりかねず、災害を利用した日本国内の政党から攻撃を受けた形で情報災害の被害が発生したと言えます。(林氏の用語法がこのような場合も含むかは措いておきます)

能登半島地震ではSNSで虚偽の救助要請や他人の救助要請を自身のアカウントのインプレッション稼ぎに利用するコピペ投稿が大量発生し、実在する現地の方への嫌がらせも発生していました。

今回の「日本が台湾を断った」とする一連の言説も、それと同様の事案と位置付けられるべきでしょう。

以上