事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

台湾外交部「台湾を断ったというのは台日間の調整の事実とは合致せず、公平性を欠く」:能登半島地震の支援

台湾外交部も否定

能登半島地震「支援のニーズが無い」と確認し、救助隊の待機解除

能登半島地震に関して、台湾が160人規模の救助隊の派遣準備を完了させていましたが、日本政府に「ニーズが無い」と確認して待機を解除していました。

能登半島地震 台湾の救助隊、待機を解除 支援のニーズなしと確認 - フォーカス台湾

これを受けて日本のネットの一部ではなぜか「岸田が台湾の支援を断った」のような批判が行われました。

台湾外交部「「台湾を断った」は台日間の調整の事実と合致せず公平性を欠く」

有關媒體報導日本政府婉拒台灣搜救隊前往救援能登半島震災事,外交部說明如下:

外交部、日本側が支援「断った」の言説は「台日間の調整の事実と合致しない」/台湾 - フォーカス台湾

(台北中央社)能登半島地震で、内政部(内務省)消防署が被災地への派遣を準備していた救助隊の待機を解除したとの報道を巡り、インターネット上の一部で「日本が台湾を断った」とする言説が飛び交っている。これに関し、外交部(外務省)の劉永健(りゅうえいけん)報道官は4日、「台湾を断った」との言い方は「台日間の調整の事実とは合致せず、公平性を欠いている」とし、日本政府からは台湾の申し出に対して感謝が表明されたと明らかにした。

台湾外交部の劉永健報道官が4日、『「台湾を断った」は台日間の調整の事実とは合致せず、公平性を欠いている』と言及しました。

台湾では現在総統選が行われてます。

そこに震災の支援を日本が「拒否した」「断った」(台湾政府が「断られた」)などと、日台関係に関する誤った表現で実態と異なる認識が流布されたら反対勢力に政治利用されるわけですから敏感になってるんでしょう。

もしこれを「拒否」と言うと、まるで「台湾側の申し出た支援の内容が酷いものだった」とか、「必要が無いのにでしゃばった」というニュアンスが読み手の側に生まれてしまうおそれが生じるので、表現としても不適切だと思います。

台湾からは能登半島地震に関して6000万円の支援金の寄付:「支援を断った」は事実誤認 

台湾外交部の声明にもありましたが、台湾からは能登半島地震に関して6000万円の支援金の寄付が行われました。

「支援を断った」は、事実誤認です。

岸田総理「現地体制の構築や負担を要しない支援は受け入れ」「現時点で人的物的支援は一律で受け入れてない」

令和6年1月4日 岸田内閣総理大臣記者会見 | 総理の演説・記者会見など | 首相官邸ホームページ

岸田総理は4日の記者会見での説明として、各国・地域・団体・個人から支援の申し出があるとしています。

ただし、支援の受け入れ体制構築に係る負担を鑑みて、現時点では人的・物的支援については、一律で受け入れていないとしています。

イレギュラーな状況では一定のコストがかかるわけで、それを上回る利益が生まれる状況ではない、ということですね。

他方で、他の支援については受け入れていることを説明しています。

岸田総理は、「現地体制の構築や負担を要しない支援は受け入れている」「例えば台湾については義援金6000万円の寄贈が発表されています。」として世界各地からの支援の申し出に感謝を述べました。

在日米軍を活用した支援は受け入れ:エマニュエル駐日米大使が説明

米国からの支援、日本受け入れ 大使、食料や道路修理用意 | 共同通信

 エマニュエル駐日米大使は4日、能登半島地震に関し、米政府が在日米軍などを活用した被災地への支援を日本政府に申し入れ、受け入れられたと明らかにした。水や食料、毛布などを現地に運んだり、道路や橋の修復を担う米軍部隊を派遣したりする用意があると説明した。共同通信の取材に答えた。

 エマニュエル氏は「日本が困っている時、米国は支援に駆け付ける。文民は物資を、軍は輸送を提供する」と強調した。支援規模としては当初10万ドル(約1400万円)相当を想定しており、必要があれば追加すると述べた。

エマニュエル駐日米大使の説明によると、在日米軍を活用した支援の申し出は日本政府に受け入れられたとしています。

確かに、在日米軍は元々日本国内に在り、自衛隊と平素から連携しており、過去の災害時での支援実績・経験もあることから、「新たな負担」が生まれたとしてもそのロスは小さくメリットがあると考えられてもおかしくありません。

能登半島の交通事情:地震による道路寸断と渋滞、石川県が義援物資について注意書き

石川県は現在、地震の影響で道路が寸断されているなど、交通事情が悪く、渋滞が発生している状況です。そのため、突然人が多く向かおうとしても意味がありません。

能登半島というもともとの地理的な条件の制約と相まって、現時点では過剰な人の出入りはむしろ有害だという判断なのでしょう。

現に、石川県が「現地への直接搬入は控えてほしい」「個人からの義援物資は受け付けられない」と注意書きをしています。

目的別・令和6年(2024年)能登半島地震に関する情報 | 石川県

震災直後の被災地の受け入れキャパに関するこうした話は、2011年の東日本大震災など、最近の大規模災害の後で何度も言及されてきました。

不要な物の送り付けについては「それ自体が二次災害だった」と回顧する者もいます。

以上