事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

共同通信の情報ロンダリング:関東大震災時の内務省警保局長電信文の政府保管:福島瑞穂議員質疑

既に明らかな事実を「報道」と称している

関東大震災時の内務省警保局長電信文の政府保管

流言認める文書、政府保管 関東大震災で朝鮮人巡り
Published 2023/06/15 18:53 (JST) Updated 2023/06/15 19:11 (JST)

1923年9月の関東大震災での朝鮮人虐殺を巡り、政府は15日の参院法務委員会で、当時の内務省が朝鮮人に関する流言を事実とみなし、取り締まりを求めた公文書を保管していることを認めた。虐殺の発生に影響したとみられるが、責任については明言を避けた。社民党の福島瑞穂党首の質問に答えた。

 文書は防衛省防衛研究所が保管。警察を所管していた内務省警保局が震災直後の9月3日、全国の地方長官に宛てて打った電報で「(朝鮮人が)爆弾を所持し、石油を注ぎて放火するものあり」などと認定した上で「厳密なる取り締まりを加えられたし」と記載されている。これを根拠に国の責任を問う指摘が多い。

https://archive.is/KjEe0

関東大震災時の内務省警保局長電信文が政府保管されていたことを冒頭で報じる共同通信。実にくだらない。

共同通信の情報ロンダリングと福島瑞穂議員質疑

共同通信の一種の情報ロンダリングというか、さも新事実が発覚したかのようにタイトルとツイートで書いているが、実際は昔から政府保管だということが分かっていたことです。

福島瑞穂 次に朝鮮人の虐殺についてお聞きいたします。配付資料を配っておりますが、電信文があります。これは震災直後の電信文です。内務省警保局長より各地方長官あて電信文です。これに関して、この電信文の存在、これはあるということでよろしいですね。保管も防衛省がしているということを確認させてください

6月15日の参議院法務委員会での当の福島瑞穂議員による質疑でも、保管は防衛省がしていることを知った上で、改めて確認したに過ぎません。

したがって、それ自体にニュースバリューは無いというのは明らかでした。

既に、平成20年3月の内閣府中央防災会議の関東大震災の報告書でも、防衛省防衛研究所図書館所蔵ということは書かれていましたからね。

大正12年12月15日帝国議会永井柳太郎議員質疑

福島瑞穂議員が取り上げていた当時の議員による質疑は、大正12年12月15日帝国議会永井柳太郎議員質疑です。

この質疑中、当該電報は9月3日付けだが、「1日か2日に東京から船橋電信所に送致せられた」という議員の事実認識が語られています。もし本当であれば私ははじめて知る事実です。東京の電信設備が地震で壊れていたのかもしれません。

しかし、政府はその事実関係について触れていません。山本権兵衛大臣の「必ずしも御読上げの通りであるということは断言しませぬが」という発言があります。

さらに、この点については大阪朝日新聞が9月4日朝刊で「三日傍受したところによると」と書いているため、電信自体は3日に発せられていることは事実のようです。

大阪朝日新聞大正12年9月4日朝刊

つまり、この内容に関して言えば、「電信によってメディアが知るところとなった」のであり、それ以前の電報文の発送の過程において他者が認識したという事情が無ければ、政府による責任は問えないはずです。

この電信は政府内の情報共有のものであり、外部に発信したものではないのですから。

メディア=新聞社の責任無視の朝鮮人不法殺害事件の言説

東京日日新聞大正12年9月3日上半分

関東大震災時の朝鮮人不法殺害事件に関しては、メディア=新聞社の責任が無視されています。先述の電報も、新聞社が「傍受」していたものが発信されていました。

この問題は何重にも隠されています。

  1. 左派はメディア=新聞社の責任を回避して専ら政府の責任に擦り付けたい
  2. 右派は「朝鮮人の不法殺害が無かった」或いは「朝鮮人の大暴動があったから正当化される」という妄想に耽っているため、『朝鮮人の殺害の責任を問う』という発想それ自体が無い

こうした構造があり、東京日日新聞(現:毎日新聞)の記事による影響の責任が東大の論文で論じられていたにもかかわらず、ずっと無視されてきました。

上掲の東京日日新聞大正12年9月3日朝刊の画像は、私が2018年に上掲記事をUPするまで、ネット上にはありませんでした。それは、紙媒体においても、関東大震災時の新聞を採録したとする書籍・史料にすら存在せず、朝鮮人虐殺を許さないとする著作ですら取り上げず、一部書籍が取り上げるのみで(その書籍も不法殺害否定派)、マイクロフィルムでのみ見ることができたという、入手困難状況だったという事情も関係しています。

他の共同通信による情報ロンダリングの事例:慰安婦問題

日本近代史の日本の責任を糾弾する論調に関して、共同通信は幾度となく情報ロンダリングをしています。

2019年にも、共同通信が12月7日に報道した慰安婦関連の文書というのは、既にほかの媒体でも言及されていたものですし、既にネット上で閲覧可能だったものです。

このとき共同通信が報じていたのは「内閣官房が2017、2018年に入手した」ことあり、文書が新たに見つかったとは書いていません。

それを「掘り起こし」と表現する共同通信の公式Twitterアカウント。

歴史検証が正しく行われないのは、メディアのせいでしょう。

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