どうしてこうなった
- NHKハートネットTV特集・障害のある女性
- NHK特集視聴の感想「異性介助・男性介助で気持ち悪い、私は石か」
- 「意思に反する異性介助を繰り返したら心理的虐待」厚労省の手引き
- 番組内で異性介助が嫌だ=同性介助を申し出たと解せる事例が無かった
- 介助中にもまれている感じ⇒筋の拘縮の有無を確かめている可能性は?
- DPI女性障害者ネットワーク女性のトイレ介助を男性がすることを問題視
- NHKハートネットのツイートは放送に無い虚偽の内容=「性犯罪と同じ」投稿の問題まとめ
NHKハートネットTV特集・障害のある女性
NHK教育テレビジョン(Eテレ)の福祉情報番組であるハートネットTVが4月17日(月) 午後8:00-午後8:29に放送した「特集・障害のある女性(1)言いたくても言えない“性の悩み”」
https://plus.nhk.jp/watch/st/e1_2023041704188
女性障害者が
— NHKハートネット (@nhk_heart) 2023年4月17日
男性から入浴や排泄介助を受けることは
単なる羞恥心の問題ではありません
尊厳の問題です
心身共にナイフで
ズタズタにされる感覚でした
性犯罪被害に遭っているのと
感覚は変わりありません
メッセージはこちらから
👉https://t.co/jSNsuJFs3P#障害のある女性 #ハートネット pic.twitter.com/C5owNBxGul
- 本放送の問題
- これに関するハートネットTVのTwitterアカウントの発信の問題
これらを分けて書きます。
NHK特集視聴の感想「異性介助・男性介助で気持ち悪い、私は石か」
当該NHK特集を視聴しました。
「障害のある女性たちの悩みの声」について紹介した、というのが大枠の構成。
内容は、障害者に対する性暴力の被害実態、異性介助(男性介助)に対して嫌悪感を示す当事者の声でしたが、後者についてより詳しく論じていました。
問題と感じるのは以下の2点です。
- 紹介された事案では異性介助(男性介助)が嫌だと意思を表明したと理解できるものは無く、施設側・介護職側の認識を取材した結果が無かった
- 「介助中に太ももをもまれている感じ」が性被害ということがわかる資料が何もなく単に「そう感じた」というだけ
性暴力について語られたのは精神科医からの被害や視覚障害者が付きまとわれた例であり、異性介助中にあったということが明確に語られたことはありませんでした。
「意思に反する異性介助を繰り返したら心理的虐待」厚労省の手引き
令和4年4月厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課 地域生活支援推進室
こちらに「意思に反する異性介助を繰り返したら心理的虐待」と書かれていることが番組内でも紹介されました。
平成30年6月版では、異性介助という文字すらなく、このような記述はありません。
大谷恭子弁護士などが委員になっていた障がい者制度改革推進会議において、「虐待の定義、防止義務、保護についてもジェンダーを配慮した規定が必要である」などと議論がされていたことがようやく反映された形でしょうか?
番組内では、2019年の施設側へのアンケートで異性介助を行っている割合を示していました。そこで同性介助ができない理由として、人員不足(女性職員が居たとしても)を理由に挙げていることもナレーション等で指摘されています。
このデータの元は障害福祉サービス等報酬改定検証調査 調査結果とあります。
厚労省の「手引き」も法的強制力は無く、施設の実態に合わせて運用が為されている、ということでしょう。どこも「同性介助が基本」という認識なんじゃないでしょうか。
その辺りの介護施設・介護職側の認識については取材VTRも無く、語られることがありませんでした。これが常に求められることとなると、介護事業者に過重な負担をかけることとなり、【無形の規制】として機能してしまうことでしょう。
現に、過去の報告書では「特段のサービス」として同性介助が位置付けられている施設のデータもありました。
番組内で異性介助が嫌だ=同性介助を申し出たと解せる事例が無かった
問題は、番組内で紹介された事案は2つあるところ、異性介助(男性介助)が嫌だと意思を表明したと理解できるものがなかったことです。
1つはナレーションで紹介された幼少時から全身の筋肉が萎縮する難病で重度障碍者施設に入所していた者が、排泄や入浴の介助を男性職員がやっていたが、介助中に太ももを触る手がどうにももまれているような動作に感じた、繰り返し行われ、同室の友人にも同じことが起きていることを知った、というもの。
2つ目は北海道に住む「あみ」さん自身の体験談をカメラの前で話したものでした。
1つ目の事例では明確に言い出すことができなかったとあり、2つ目も意思表示をしたことが分からないままでした。
実は、その意思表示をしたにもかかわらず男性による異性介助を継続させられたとする民間の報告例はあります。
2012年5月11日「障害者差別禁止法」に障害女性の条項明記を求めて--「障害のある女性の生きにくさに関する調査」から 提出団体 DPI 女性障害者ネットワーク(代表者 南雲君江)
そうした事例でもないのに、司会が「これから具体的な被害の内容が流れます、不安のある方はご留意ください」とVTRの前に注意喚起し、性暴力被害者の事例とサンドイッチにして紹介しているのは、まるで「施設側が積極的に意思確認をしないとそれは「被害」であり問題である」と言いたいかのようです。
介助中にもまれている感じ⇒筋の拘縮の有無を確かめている可能性は?
番組中"幼少期からの筋ジス患者"の声がナレーションで紹介され「太ももがもまれているようなきがした」「繰り返し行われ、同室の友人にも同じことが起きていることを知った」とありますが、筋の拘縮を防ぐためのリハビリでは?違いが判別できないナレーションだったhttps://t.co/Jlr8fy797l pic.twitter.com/cFk8NsqJsQ
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2023年4月23日
※ツイートでは「筋ジス」と書いたが、放送では「全身の筋肉が萎縮する難病」
「介助中にもまれている感じ」というのは筋の拘縮の有無を確かめている可能性は?
排せつ時にやるというのは不可解ですが、入浴中ならあり得るのでは?
このあたりも違和感のある内容でした。
DPI女性障害者ネットワーク女性のトイレ介助を男性がすることを問題視
DPI女性障害者ネットワークBLOG: 女性のトイレ介助を、男性がする国 日本(魚拓)
「もともと筋ジスは男性患者が多くて、私たちがいた時も、入院患者は男性4に対して女性は1。男性患者は女の人の介助でも、文句言う人は少ないですよ」という言葉を聞いて、異性介助が患者全体の問題にならない理由に気がつきました。
これは一部の国立病院の出来事なのでしょうか?Aさんは言いました。
「最近は慣れてしまうというか、女性としての感情はいくつになっても恥ずかしいとか、あるんですけど、最初にあった感情とか、最近はない。そんな自分が辛い…」と。
最近参加したシンポジウムでパネリストの障害女性(腫瘍による下半身不随)が同様の経験を発言していました。
「退院するまでの間、私は石になることを決めました」と語っていました。
そういえば、Bさんは「物のように扱われているようだ」と言っていました。
石になったり、物になったり、あげくは感情を麻痺させなければ生きていけないのに、自分を責めてしまう…。
これが一部とはいえ、日本の障害女性が置かれている現状なのです。
病院でのこととなると、医療行為ととらえられるかもしれませんが、医療とは別の、日常生活の介助、排泄や入浴のケアを、女性本人の意志に反して、継続的に男性が行うという問題なのです。
VTRに出演した北海道の「あみ」さんが読んで共感したページというのはこちら。
前掲の民間報告書を内閣府に出した団体です。
NHKハートネットのツイートは放送に無い虚偽の内容=「性犯罪と同じ」投稿の問題まとめ
さて、当該放送を視聴したところ、NHKハートネットのツイートにある以下の主張は、読み取ることができませんでした。
女性障害者が
男性から入浴や排泄介助を受けることは
単なる羞恥心の問題ではありません
尊厳の問題です心身共にナイフで
ズタズタにされる感覚でした
性犯罪被害に遭っているのと
感覚は変わりありません
「女性障害者が男性から入浴や排泄介助を受けることは、性犯罪被害に遭っているのと感覚は変わりありません」
百歩譲って女性患者自身がそのように感じ、この文面はその心情を紹介しているのならまだしも、これはNHK自身の言葉として論じています。
しかも、厚労省の「意思に反して継続的に」という要素も抜きに、全ての男性介助に対するものとしか理解できない内容で「性犯罪被害と同じ」と評している。
裏返せば、男性の介助者に対して「性犯罪者だ」と言っているのと同じです。
つまり、このツイートは、【客観的には放送からは読み取れない主張・放送の趣旨とは異なる主張をしている】か、或いは【放送では明示していなかったが、伝えたかった意味はこのような趣旨である】というものです。
前者であれば番組について虚偽の内容を伝えるものであり、同時に職業差別・男性差別の内容です。後者であれば「虚偽」という点が消えるだけです。
近年稀にみる異常な投稿と危うい放送、しかるべき所に意見した方が良いでしょう。
視聴者からのご意見について | BPO | 放送倫理・番組向上機構 |
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