安易に「民間の声」を使用してバズらせようとする公共放送とは
- NHK「マスクは顔パンツ?しらべてみました」
- NHKはツイート削除・文章修正「不快感を示す意見が寄せられたため表現を改めました」
- 「顔パンツ」は有名な言葉なのか?若者において広まっているのか?
- ネット上や民間の不用意な言葉や認識を安易に取り上げるNHKの傾向
NHK「マスクは顔パンツ?しらべてみました」
NHKが「マスクは顔パンツ?しらべてみました」などという記事を書きました。
さすがにこれはおかしいでしょう。
NHKはツイート削除・文章修正「不快感を示す意見が寄せられたため表現を改めました」
※当初の記事で、「人前で外せない」との意味でマスクを下着に例えた表現を用いましたが、不快感を示す意見が寄せられました。このため表現を改めました。また、この記事はマスクが必要な方に、外すことを求めるものではありません。
NHKはツイート削除し元記事の文章も修正されています。
「顔パンツ」は有名な言葉なのか?若者において広まっているのか?
NHKの記事が出されてから跳ね上がってますが、それ以前はほとんどつぶやかれていません。NHKの記事でも「多くの人に使われている」という事は書かれていません。
【マスクは「顔パンツ」若者呪縛】https://t.co/sbvLQRewHg
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) 2021年12月6日
マスク生活が長引き、「ノーマスクが怖い」と素顔を見られることに抵抗を感じる若者が増えている。民間の全国調査では7割が「コロナ後も着用を続けたい」と回答。「マスクの呪縛」はコロナ禍の負の側面ともいえそうだ。
中国新聞デジタルマスク外せない若者 もはや「顔パンツ」2021/12/5(最終更新: 2021/12/17)
過去のメディア記事「ネットではマスクを「顔パンツ」と例える人も少なくない。」として当該単語を挙げる所もありました。
#モーニングショー コロナ禍が終わってからもマスクを続けたい人が多い(顔パンツという声も)
— Takuro⚓️コロナ情報in神奈川県/横浜市/東京都(全国も) (@triangle24) 2021年12月8日
中学生の塾のオンライン授業。自宅なのに、マスクをつけている子が多い
外から帰ってきて、普通に取るのを忘れていたという子もおり、抵抗がない
↓引用の通り、日本人は自ら進んでつけている人が多い https://t.co/7lyotOUXt0 pic.twitter.com/Hdxmz7Pg10
同時期の12月9日にモーニングショーで「マスクは顔パンツ」として番組の一部が構成されています。この12月初旬の際にトレンド入りしたようですが、このように、「メディアが報じるから話題になっている」程度。
それ以前に「マスク」を「顔パンツ」とする投稿は、5日間誰も投稿してないことなどザラにあります。そのような用語法を肯定するものになるとさらに少ない。
さらに遡っても、やはり報道をきっかけに知る人のツイートが目立ちます。
マスクを顔パンツと表現する記事を見てちょっとびっくりしたが、しかし「排泄口を見せるのが恥ずかしいとされているのに摂取口を見せるのはなぜ平気なのか」と考えると一理ある
— スドー🍞 (@stdaux) 2020年4月20日
しかも当該単語は、新型コロナ禍以前から存在していました。以下のツイートが現在までで最もリツイート等されたものと思われます。
夏以外、年中マスクをしている生徒が増えた。
— 合法先生 (@barbeejill3) 2019年2月3日
人の視線を過剰に意識してしまう為に思ったように行動ができない「視線耐性」が低い人が若い人に増えているらしい。
「もはや自分にとって、マスクは『顔パンツ』です。つけていない姿を世間にさらすのは恥ずかしい」
そんな人もいるらしい…
ネット上や民間の不用意な言葉や認識を安易に取り上げるNHKの傾向
つまり、公共放送であるNHKが当該単語を取り上げるべき必然性があるとは言えないのではないか?
今回のように、そんなに市民権を得ているとは言えない、ネット上や民間において使われている不用意な言葉や認識を安易にマスメディアが取り上げることで、そのような用語法が大拡散され、認識が再強化されるということがあります。
中には「ネット上のトレンド」をゼロから創り出すメディアもあります。
NHKに関して言えば「女性に対するAED」の記事などが同様の事例としてあります。
※NHKは6月の炎上からしばらく記事をシェアしなくなったが9月末に再度問題記事をシェアするようになった
NHKが「ネット上の声」として「セクハラと勘違いされて通報されるのでは…」という無根拠の心配を取り上げ、さらには特定の専門家による「配慮する方法もある」という言葉を使ったことで、SNSではそのような認識が正当であるとする投稿で溢れ、女性に対するAEDの使用が忌避される方向のナラティブが発生しました。
しかも、SNS上で法的な現状を整理する弁護士に対して、「いやだいやだ!自分は被害者になりたくない!」などと言いながら誹謗中傷をする者が大量発生するという、実に醜悪な展開が起きました。
これらの問題は多数の者が疑義を呈してきました。
しかし、NHK記事で解説している専門家が根拠とする論文やリサーチの結果を見ると、「男性でもAEDが使われにくい」「女性も女性へのAEDをためらう」といった傾向があるということは無視されています。
私は、「配慮」と表現される行為が、救急救命の現場におけるオプションを提示することになるという、良い方向にも使えるものとして捉えるべきだと書きました。
同時に、NHKは別のAEDに関する記事で良質の情報を提供・啓蒙をしているということも、何度も指摘してきました。
最近のNHKのWEB記事には、「バズり」を期待してるのか不用意と評価せざるを得ないものが稀に見られるのですが、今回のもそういった傾向を感ぜざるを得ません。
指摘を受けて修正したのがせめてもの救いでしょうか。
以上:はてなブックマーク・ブログ・SNS等でご紹介頂けると嬉しいです。