事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

NHK党「旧皇族の皇籍復帰を可及的速やかに実行すべき」衆議院意見書提出

国民の合意が形成されようとしている

NHK党「旧皇族の皇籍復帰を可及的速やかに実行すべき」衆議院意見書提出

NHKから国民を守る党の浜田聡議員から「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果」に対する意見書を衆議院議長に提出したと報告がありました。

倉山満らが運営する救国シンクタンクによる提言に拠るところが大きいようです。

皇族数の確保や皇位継承に関しては内閣法制局が「法律で養子の範囲を適切に定める限り憲法14条の問題が生ずることは無い」と答弁していました。*1

皇位継承に関して政争の具とされないよう、野党からもこうした意見書が出ることの意義は大きいと言えます。

「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果」に対する意見書

NHK党「旧皇族の皇籍復帰を可及的速やかに実行すべき」衆議院意見書提出

NHK党、旧皇族の皇籍復帰意見書提出

 

NHK党、旧皇族の皇籍復帰意見書提出

皇位継承に関して、あまり指摘されることがない点について書かれています。

この「旧皇族」の方々は伏見宮家の子孫であり、十親等以上も血縁が離れた継承は、確実な歴史においては第99代後亀山天皇から第100代後小松天皇以外、先例がないという点は慎重に検討し、国民の理解を得るべき問題です。

伏見宮系統の方々は皇籍離脱後も、「菊栄親睦会」を通じて皇室との交流が継続している…伏見宮家は、本来は永代親王家であり、「五世の孫」の原則の重大な例外

旧宮家のうち、明治天皇第6皇女の昌子殿下や昭和天皇第1皇女の成子殿下、明治天皇第8皇女の允子殿下と血脈が繋がっている家柄があります。そのため、仮に血縁の遠近を親等で考えた場合であっても、この系統の旧皇族の復帰は確実に「先例」の範囲内であるということが言えます。*2

ただ、これから外れた場合にただちに選択肢から外すべきかは状況次第であって、優先順位の違いに過ぎない気がします。「五世の孫」原則と言われているものも、親王宣下による皇位継承権の付与が制度化してからは例外もありました。「永世皇族制」を採った現代においては「5世以降は臣籍降下する」というルールは無くなったのであるから、そこに囚われる必要もないと言うことも可能なように思われます。

元々、皇族の数が増え過ぎないように、財政上の問題や権威の低下が起きないように適宜臣籍降下させるための「五世の孫」原則であって、皇族数がきわめて少なくなってしまった現在において金科玉条のごとく適用すべきルールではないと言えるでしょう。

「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとすること」についての整理:「女性宮家」論の終焉

従前政府は、皇室典範特例法附帯決議に関する有識者会議の報告書を受けて、大きく3つの施策を検討していました。

  1. 内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとすること
  2. 皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とすること
  3. 皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とすること  

1番はメディアでは「女性宮家」と呼ばれることもありますが、政府の報告書では附帯決議の文言の引用以外に「女性宮家」と記述されている所がない点は要注意です。

なぜなら、考えられている実現形態にはバリエーションがあるからです。

その根幹は【女性皇族が婚姻後も皇室にとどまって公務を担うこと】です。

「女性宮家は女系天皇に繋がる」という危機感で語られることが多いですが、以下の場合はどうでしょうか?

  • 女性皇族の配偶者に旧皇族などの限定を付す(皇籍復帰を視野に)

近代までは女性皇族の婚姻相手は男性皇族だったので、婚姻した女性皇族はそのまま皇室に残る事もありました。よって、そのような状況であれば先例があることになります。

*3光格天皇にみられる「養子(猶氏)+皇族女子(前天皇の子)との婚姻」という先例と単純比較した場合、皇籍復帰が先か皇族女子との婚姻が先か、という違いしかないように見えます。逆に考えれば、皇族女子との婚姻をする段階になっているならば、養子とすることにつき抵抗は無いと言い得るでしょう。

悠仁親王殿下の警備強化・御学問所の再興・皇室バッシングに政府が対応・内廷費の見直し・皇室会議の構成への要請

NHK党の意見書に特徴的なのは、皇位継承につき直接的な意見があっただけでなく、皇室の存続を考えた際に必要な対応をも求めていることです。

悠仁親王殿下の警備強化・御学問所の再興・皇室バッシングに政府が対応・内廷費の見直し・皇室会議の構成への要請なども要望として強く求められています。

悠仁親王殿下の警備に関しては、過去に自動車事故や学校に侵入者がナイフを置いて行ったという事件がありました。

昭和天皇に対する虎ノ門事件をはじめとする様々な襲撃事件、上皇陛下に対するひめゆりの塔事件や山形国体発煙筒事件の歴史からは、警備を厳重にする必要があります。

「御学問所」にどういうものを期待しているのかはわかりませんが、大正3年=1914年に宮内庁が設置した「東宮御学問所」が想起されます。

昭和天皇は学習院初等科卒業後、中等科に進まずそこで帝王教育を受けました。

皇室に関する誤情報について、従前から宮内庁が媒体や発言者を名指しで抗議し、それもHP上で公表されてきましたが、改正プロバイダ責任制限法でネット上でのひぼう中傷に対して事業者側に対応の強化を求める方向になっていることも寄与するでしょう。*4

「内廷費の見直し」は、宮廷費や皇族費ではないのが気になりますが、趣旨としては皇族の存続を経済面で支える、というもので、方向性に間違いは無いでしょう。費用の問題は警備にも直結する話です。※追記:内廷費の金額に伴って皇族費や宮廷費が決まっている、という実務運用があるのであれば、内廷費のみを書く意味は理解できる。

皇室会議の構成の中の皇族数を増やすようにするべき、というのは私も何度か書いており*5、皇室内の話は政治マターにしてはならないという問題意識のもと、天皇皇族にイニシアティブとプレゼンスがあるべきであり、戦前の皇族会議のように皇族数を増やし、天皇或いは皇族の主導権を増やすべきという考えを持っています。もちろん、閑院宮家を創設した新井白石*6が居たように、皇位継承に関して臣下がまったく関与しないという構造にする必要は無いと言えます。そのためには皇族数を維持・増やしていく必要もあり、これは間接的に皇位継承・皇族数の確保という課題の克服を支援することに資するものと言えます。

こうしてみると今回のNHK党の意見書は2022年4月15日に日本維新の会が提出した同種の意見書よりも内容が充実しており、2年間の間に国民の間で議論が熟されてきたことがうかがえるものとなっています。

以上

*1:「飛び地論」や「憲法の想定外」という論理ではない

*2:※注意:これは女系継承論ではない。あくまで男系継承としての起点は600年以上遡るが、親等という概念で皇位継承の歴史を振り返ると10親等という数字が出てくる。逆に言えば、女系天皇積極推進論者から見たらこの場合に否定する理由は何一つ無くなるということになる。その意味で、この主張は女系天皇積極推進論者からも反対ができなくするための政治的な意義がある。

*3:継体天皇を含めていたので修正・削除しました

*4:ネット上でのひぼう中傷めぐり 法改正案提出で調整へ 総務相 | NHK | IT・ネット

*5:宮務を政治マターにしている現行皇室典範の位置づけ|Nathan(ねーさん)

*6:初稿より修正しました