事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「大阪市長の退職金が毎月の報酬に上乗せ前借りで維新は公約違反」というデマ

何度も繰り返されているデマ

「大阪市長の退職金が毎月の報酬に上乗せ前借りで維新は公約違反」というデマ

「大阪市長の退職金が毎月の報酬に上乗せ前借りで維新は公約違反」という話は、断続的に拡散されてきました。

  1. 任期を延ばす邪悪なインセンティブのため市長の退職金は廃止:維新の公約
  2. 市長は、かつての退職金の50%にあたる額を報酬に上乗せしている
  3. 以前の報酬より-10.9%としたものと2を併せて報酬は+8%
  4. 4年間の『報酬+期末手当+退職金』は制度値で約3000万円低くなった
  5. 更に運用で報酬を制度値より40%カットしている
  6. 退職金は在任一月毎に算定されているので、「前借り」という評価も不当

この話は2019年4月の以下の記事で既に書いていますが、この4年間に何度も「公約違反」という話がネットで拡散されるので、補足として改めて書いていきます。

4年間の『報酬+期末手当+退職金』は制度値で約3000万円低くなった

平成26年10月21日 特別職の報酬等の額について(答申)というものがあります。

ここに全ての計算方法が書いてあります。

なぜ退職金名目を無くしたのかについても説明があります。

4年間の【月額報酬+期末手当+退職金】に関して、市長についてのものを計算すると…

  • 改訂前⇒26,147,880×4+39,532,800円=1億4412万4320円
  • 改訂後⇒28,239,480×4+0円=1億1295万7920円

改訂後は、約3000万円低くなっているのが分かります。

そして、実際にはさらにここから減額されています。

「制度値」からさらに運用で(報酬等の特例条例によって)40%カット

https://web.archive.org/web/20150624231937/https://www.city.osaka.lg.jp/jinji/page/0000134935.html

平成27年に大阪市の報酬等について金額の改訂等が行われました。

当時の改訂前の金額と改定後の金額の「制度値」と「カット値」が分かるページの画像と魚拓リンクを貼っておきます。

特別職の職員の給与に関する条例」が改正され、市長は退職金支給の対象から外れました。改正前はこちら

市長の報酬=給料月額については、「市長の給料月額の特例に関する条例」(平成24年3月30日 大阪市条例第65号)によって42%カットされたことに始まり、現在は40%カットとなっています。

「制度値」というのは、このカット前の数字ということです。

市長以外の特別職職員の各種報酬等についても同様の特例条例があります。

大阪市の退職金

https://archive.is/M2rpV

令和5年4月1日時点のものも、市長については改定時と変わっていません。

他もおそらくほぼ変わっていません。

在任期間1月単位で退職金を算定しているので「前借りしてるから公約違反」という評価も不当

特別職の職員の給与に関する条例(昭和26年大阪市条例第9号)最近改正 平22.12.15 条例 77 ※改正前

第4条 前条に定めるもののほか、第1条第1号から第4号までに掲げる職員が退職したときは、その者に退職手当を支給する。
2 第1条第1号から第3号までに掲げる職員に対する退職手当の額は、退職の日におけるその者の給料額に当該職員として在職した月数(1月未満の端数がある場合には、これを1月とする。)を乗じて得た額に、次の各号に掲げる区分に応じて、それぞれ当該各号に定める割合を乗じて得た額とする。

~省略~

改正後の現在は「第1条第1号」の市長は対象外

また、在任期間1月単位で退職金は算定していたので、「退職金を前借りしているから公約違反」という評価も甚だ不当なものです。

確かに辞職する前の段階ではかつての退職金が支給される前よりも高い報酬を得ていますが、【その時点で辞任した場合】の総合的な金額を比較すれば、既に制度値の時点で、従来の金額よりも下回っています。

  • 改訂前⇒142万0000円(×在任月数)+退職金(月額報酬の在任月数分の65%)
  • 改訂後⇒166万9000円(×在任月数)+0

そして前項で述べたように、実際にはさらに40%カットしているのだから、月額だけ見ても40万円ほど低額になっています。

これで「前借している」というのは、デマと言ってよい。

横山英幸市長の市長選挙時のポスターにある「退職金ゼロ」は実績に関して

大阪維新の会の横山英幸氏の2023年の市長選挙時のポスターに「退職金ゼロ」という文字があることから、これを「公約」だとして新たな意味を見出そうとしているアカウントが見られます。

が、これは実績と目標が混じっている記述であることは明らかです。

たとえば「市の借金1兆8000億円減」というのも、目標ではなく実績です。

したがって、「現状から更に退職金ゼロと言えるような制度変更をしようとしていたのに、まったくそうなっていない」という主張は、的外れです。

まとめ:永遠に繰り返されるデマとディスインフォーメーションになぜ加担するのか

YouTuberなどがデマやディスインフォーメーションを拡散していますが、それができているのは、視聴者がそれを支持しているからです。ツイートを拡散するからです。

事実ではなく「(負の)感情を満たしてくれるモノ」がみんな好きで、それを「質の高いコンテンツ」と認識しているようです。

他方で、「デマや低質なコンテンツを引用して批判する短文」は広まるが、「それも含めて事実関係を整理する情報」は、広がりません。「叩く対象」が無いと、関心の外に置く人も居ます。

それは「落ち着き」を与える情報であり、彼らが求めている「興奮する」情報ではないからです。

外国勢力だとか左翼だとかそういうレベルではなく、人間社会の宿命のようなもの。

それに屈してしまう者、心を病んでしまった者をネット上だけでも多数見てきました。

私は、それに抗い続けるでしょう。

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