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【徴用工】韓国裁判所が供託「不受理」第三者弁済の法理に外交部激怒

まーた韓国の司法がバグってるな

【徴用工】韓国裁判所が供託「不受理」第三者弁済の法理に外交部激怒

朝鮮日報2023/07/04 15:02 韓国地裁 徴用賠償金の供託1件を受理せず=外交部「異議申し立て」

2023.07.04 14:51 韓国地裁 徴用賠償金の供託1件を受理せず=外交部「異議申し立て」 | 聯合ニュース 金泰均

【ソウル聯合ニュース】韓国政府傘下の財団が徴用訴訟問題を巡る政府の解決策(第三者弁済方式)を受け入れなかった原告4人に支給する予定だった判決金(賠償金)を裁判所に供託する手続きを開始した中、光州地裁がこのうち1件の供託について受理しない決定を下した。外交部が4日、明らかにした。
 受理しない決定が出されたのは存命の原告である梁錦徳(ヤン・クムドク)さんに関する供託。梁さんが「弁済を認めない」との書類を裁判所に提出し、供託を拒否する意思を明確に示したためとされる。別の原告の李春植(イ・チュンシク)さんに関する供託は書類に不備があるとして戻されたという。
 外交部は「強い遺憾」を表明し、「法理上承服し難い」と強調。「異議申し立て手続きに着手し、裁判所の正しい判断を求める」とした。また、「形式上の要件を完全に満たした供託申請を『第三者弁済に関する法理』を提示し受理しない決定をしたのは供託公務員の権限範囲を超えるものであり、憲法上保障された『裁判官から裁判を受ける権利』を侵害するもの」とし、「前例のないこと」と不服の理由を説明した。
 供託制度は「供託公務員の形式的審査権、供託事務の機械的処理、形式的な処理を前提に運営されるというのが確立された大法院(最高裁)の判例」とも指摘した。
 また、「担当の供託公務員は同僚に意見を求めた後に決定を下したが、これは供託公務員が独立して判断するようにした『裁判所実務便覧』にも反する」と主張した。そのうえで、「弁済供託制度はもともと弁済を拒否する債権者に供託するもので、その供託が弁済として有効かどうかは今後の裁判で判断される問題」と強調した。
 被害者が同意しない第三者による弁済供託の法的有効性を巡る論争が続く中、政府の解決策の実行が難航する可能性があるとの見方も出ている。
聯合ニュース

前提事実:いわゆる「徴用工問題」と呼ばれている、朝鮮半島出身の戦時労働者(募集工)が、日本企業における労働が非人道的であったなどとして日本政府や日本企業に賠償を求めたが、1965年の日韓請求権協定によって日本側の責任が問えないようになっているため訴えが排斥されてきた中で、文在寅(ムンジェイン)大統領政権時代の2018年に韓国大法院が日本企業に対して賠償命令を下し、財産差押えが為されてきたという、日韓請求権協定に違反する状況であった。その後、尹錫悦(ユンソギョル)大統領下の韓国政府が2023年1月12日に、「財団による賠償肩代わり」案を公式表明し、韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が第三者弁済をしようとしていたが、賠償金債権者である原告ら4人が受け取り拒否をしていたため、裁判所に供託の手続を申請していた

韓国の地裁が法を無視した異常な対応を見せています。

光州地裁が1件の供託につき「第三者弁済の法理を理由に不受理とした」という事件。

「韓国司法の暴走」はまだ終わらないのか。

光州地裁と全州地裁の供託不受理と水原地裁に対する供託の申請

韓国地裁 また徴用賠償金供託を受理せず=2件目 | 聯合ニュース

【ソウル聯合ニュース】韓国政府傘下の財団が徴用訴訟問題を巡る政府の解決策(第三者弁済方式)を受け入れなかった原告4人について、判決金(賠償金)相当額を裁判所に供託する手続きを開始した中、全州地裁が1件の供託を受理しない決定をしたことが5日、分かった。

不受理となったのは故パク・へオクさんに関する供託。地裁が財団に対し、相続人を遺族などに補正するよう勧告したが、4日の期限までに疎明資料が提出されなかったため不受理となった。民法上、故人であるパクさんは供託の相続人になれない

  • 故チョン・チャンヒ
    ⇒水原地裁に供託書類提出、今後審査
  • 故パク・へオク
    ⇒全州地裁への供託が相続人の対象に関して不受理、水原地裁に提出、今後審査
  • 李春植(イ・チュンシク)
    ⇒光州地裁が書類に不備があるとして返戻
  • 梁錦徳(ヤン・クムドク)
    ⇒形式上の要件をみたした供託申請を『第三者弁済に関する法理』を提示し受理しない決定をした

いわゆる徴用工原告ら4人の賠償金に関する弁済に関し、光州地裁と全州地裁の供託不受理と水原地裁に対する供託の申請に関する状況はこの通り。

梁錦徳(ヤン・クムドク)氏に関するもの以外は、形式的な不備が理由のようです。

なお、上掲の故パク・ヘオク氏に関する賠償金含めた原告2人分に関する賠償金供託は水原地裁に対して行われています。これがどうなるかが今後注目されます。

徴用訴訟 水原地裁に2人の賠償金供託=韓国財団 | 聯合ニュース

日本の改正前民法は債権者が第三者弁済を拒めなかった:韓国も同様とみられるが…

弁済供託制度はもともと弁済を拒否する債権者に供託するもので、その供託が弁済として有効かどうかは今後の裁判で判断される問題」

これはその通りでしょう。民法上の「供託」に関する規定に、「債権者が拒む場合はできない」とは書かれていません。

土地賃借人が地代を支払わないため、その土地上の建物賃借人が土地所有権者に第三者弁済するような場合など、第三者弁済としての供託は、そこまで異常なものではありません。

韓国民法

第2款 供託
第487条(弁済供託の要件,効果)債権者が弁済を受領せず,又は受領することのできないときは,弁済者は,債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免かれることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも,同様とする。

韓国民法は、日本民法とほぼ同じ内容の規定です。

解釈運用も似たようなものでした。

「供託できるかどうか」と「第三者弁済ができるかどうか」は、別問題です。

で、第三者弁済については、解釈論が大きく分かれていました。

  1. 債権者が弁済の受領を嫌がっても第三者弁済を拒否できない
  2. 債権者が拒否していたら第三者弁済はできない

日本の改正前民法は、1番でした。

が、改正により2番の道が開かれることとなりました。

背景には、反社会的勢力等との関係を持ちたくない債権者の保護があります。

そして、韓国民法の第三者弁済に関する規定は、日本の旧民法と同様の内容です。

したがって、法学者の間では債権者の受領拒否について解釈論が展開されていたであろうことは十分想像できる話ですが、実務上は以前の日本と同じ解釈運用が為されていると考えられます。

でなければ、以下のように、わざわざ債務引受の話と混同させて世論誘導しようとはしないでしょう。以下では韓国民法と日本民法の比較なども書いています。

債権者の第三者弁済受領拒否が可能の解釈・民法改正・求償権の放棄など

今後の悪い展開は以下が考えられます

  1. 債権者の第三者弁済の受領拒否が可能であるという解釈が司法によって示される
  2. 1が無理でも、韓国民法で債権者の第三者弁済の受領拒否が可能となるよう改正される⇒遡及適用の問題に
  3. 1と2が無理で法的に第三者弁済の受領が拒否できないとされた後、(求償権が発生しているような事情の場合)財団が日本企業側に対する求償権を放棄せず、後になって請求し出す

3については、そもそも求償権が発生しない状況になっている可能性がありますが…

一番きれいなのは、特別法を作って徴用工訴訟の賠償金についてだけ韓国政府=国が免責的債務引受をするというパターンでしょうが(債務引受の場合は韓国民法でも債権者が拒否できる)、政治的なハードルから採用されなかったようです。

第三者弁済⇒受領拒否⇒供託⇒受領拒否につき法的紛争

という展開は考えられていましたが、まさか裁判所の段階で供託が「不受理」とされ、しかも、その理屈として第三者弁済の話が持ち出されるというのは、まったくもって予想だにしませんでした。

他の地裁が正常な判断を下し、統一されることを望みます。

追記:水原地裁の2件も第三者弁済の要件不足を理由に不受理となったようです

聯合ニュース 韓国地裁 徴用賠償金供託の不受理続く 斎藤寿美子2023.07.05 19:40

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