勘違いが生まれそう
- 経産省トランス女性トイレ訴訟の最高裁判決文
- 経産省生物学的男性トランスジェンダートイレ訴訟最高裁判決文の射程
- 原告(上告人)男性が女子トイレを利用しなければならない理由はよくわからない
- 「自らの性自認に基づいて社会生活を送る利益=重要な法的利益」なのか?
- 身体的特徴に基づいた施設利用が求められていたのでは?という点
- まとめ:LGBT活動家も反対派も過度に一般化して勝手に騒ぐな
経産省トランス女性トイレ訴訟の最高裁判決文
最高裁判所第三小法廷判決 令和5年7月11日 令和3(行ヒ)285
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/191/092191_hanrei.pdf
経産省トランス女性トイレ訴訟の最高裁判決のHP用判決文はこちらです。
経産省生物学的男性トランスジェンダートイレ訴訟最高裁判決文の射程
本件の重要事項を箇条書きにします。
- 既に管理権者たる経産省が、2階離れた女性トイレの利用を当該男性について認めていた
- 当該人物は生物学的男性で、性同一性障害の診断を受けてホルモン治療を受けてるが健康上の理由で未手術であり、よって戸籍上も男性
- 性自認が女性であり(トランス女性)外見は女性に見える者として扱われていた
- 当該男性が女性トイレを利用することについては説明会が開催されていた
1番について、当該男性(冒頭画像アカウントの運用者)は職場の女性トイレを自由に使用させることを含め、原則として女性職員と同等の処遇を行うこと等を内容とする行政措置の要求をしたのが今回の訴訟の請求内容の一つです。
つまり、既に施設の管理権者の側が、個別に相談した上で、当該身体男性の女子トイレの利用を認めたのであって、誰もかれもがいきなり女性用トイレを使ってよい、という話にはならない。
したがって、本判決は不特定多数の人々の使用が想定されている公共施設・民間施設の使用の在り方について触れるものではありません。これは今崎幸彦裁判官の補足意見の末尾(PDFの最下部)でも指摘されていました。
※追記:単なる「職場での利用の在り方」の事例でもありません。
原告(上告人)男性が女子トイレを利用しなければならない理由はよくわからない
この訴訟全体の話でよくわからないのは、【原告(上告人)男性が女子トイレを利用しなければならない理由】がよくわからないという点です。
なぜ、「男子トイレを利用することの説明会」ではなかったのでしょうか?
いずれにしても既に管理権者たる経産省が女子トイレの利用を認めてるので、訴訟の争点にはなり得ず、そこはスルーされたんでしょうが、もやっとするところではあります。
「自らの性自認に基づいて社会生活を送る利益=重要な法的利益」なのか?
前項と関連して、地裁判決文や最高裁の補足意見では「自らの性自認に基づいて社会生活を送る利益=個人がその真に自認する性別に即した社会生活を送ることができること、は重要な法的利益」という理解でした。
が、最高裁の判決文では、そのように表現することからは「逃げ」ています。
この点について何も書かれていませんでした。
原告男性が女子トイレを利用しなければならない理由についての検討が無かったのは、もしかしたらこういう背後の論理が働いてる可能性はありますが、補足意見は判決の本文そのものではないのでよくわかりません。
身体的特徴に基づいた施設利用が求められていたのでは?という点
労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則ではトイレは男女別に分けろとしているところ、利用者について必ず身体的特徴で振り分けないと管理権者が違法になる、そのように義務付けている、という法的関係ではないのがどうやら前提のようです。
(便所)
第十七条 事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。
一 男性用と女性用に区別すること。
この点は公衆浴場や旅館における共同浴室・脱衣所における扱いとは若干異なるものと言えるかもしれません。
参考までに、SOGI理解増進法の施行後に出されて騒がれた通達を置いておきます。
ここでは、身体的特徴で振り分けることとされています。
公衆浴場や旅館業の施設の共同浴室における男女の取扱いについて
まとめ:LGBT活動家も反対派も過度に一般化して勝手に騒ぐな
- 本判決は不特定多数の人々の使用が想定されている公共施設・民間施設の使用の在り方には影響しない
- 事前に相談して周囲の人間も知っていたという個別事案に過ぎない
- 誰もかれもがいきなり女性用トイレを使ってよい、という話にはならない
LGBT活動家も反対派も、本件を過度に一般化して勝手に騒ぐことはやめるべきです。
この手の事案は、報道のみの印象で【勘違い】が生まれがちなので注意です。
もしも恐怖を煽ったり勝ち誇ったりした言説が横行し、過度に一般化した理解が広まったらどうなるか?
「企業が女性従業員が逃げ出す恐れがあると考えて(手術前の)身体男性のトランスジェンダーの採用を躊躇する」ということにもなりかねない。
【身体的特徴で振り分ける】というのが通常の社会的コンセンサスであるということは崩してはならず、事案毎に個別に判断されるべき話でしょう。
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