事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「推しの子」がテラスハウス木村花さん事件を模倣丸パクリ?木村響子氏が怒り

煽った者が居る

木村響子氏が漫画「推しの子」を「木村花テラハ事件模倣丸パクリ」?

ヤングジャンプとジャンプ+で連載中の漫画「推しの子 」(原作:赤坂アカ・作画:横槍メンゴ)のアニメ版が放送されていますが、その一部エピソードについて「テラハ事件」として知られる出演者の自殺事件を模倣しているのではないか?という感想がありました。

それに対して木村花さんの母親である木村響子氏が反応して騒動になっています。

本当に起きた事件を丸パクリ」と捉えているようです。

他の投稿では以下のような発言もしています。

https://archive.is/gZSRv

細かいあらすじを
いくつかのところで確認しました

恋愛リアリティ番組の構造、問題、番組でおきたことなど

私たちが無事取材などで語った詳細がそのまま
使われているのです

前後とかストーリーとかの
問題ではないです

実際の作品を読んでいるわけではないとしています。

「推しの子」恋愛リアリティーショー編の内容

推しの子 [ 赤坂 アカ ]の作中では、第二十一話から「恋愛リアリティーショー編」として、出演者の役者がSNS炎上で誹謗中傷のターゲットとなり自殺未遂をする展開が描かれています。

ただ、「番組側がヒールの役割を与えて揉めごとを起こさせる演出をした」といった要素はなく、作中での騒動の発端は偶発的なものでした。自殺(未遂)の方法や炎上の発端となった現象は「テラハ事件」とはかけ離れています

作品内では、世界中で行われているリアリティーショーにおける自殺者が50人程度出ていることに触れられており、日本国内の特定の番組だけを意識して作られたわけではないことが伺えます。

また、「推しの子」では大人が子供を矢面に立たせてビジネスをし、自主判断であることを理由にフォローしない事ことを批判的に捉えており、炎上で前提とされている事実とは反対の事実を示す映像を番組スタッフが隠蔽していることを突き止め、SNS炎上に対して登場人物(番組出演者)が解消策に出ることも描かれています。

決して「現実の事件を元ネタにして終わり」にはなっておらず、現実に対して超えてほしいモノを提示していると言えます。

そのため、推しの子は決してテラスハウスの木村花さんの事件を「下敷き・モチーフ」にしてるとは読み取れない。

ただ、「恋愛リアリティーショー・SNS炎上・自殺未遂」という展開は、2023年を生きる日本人の多くは「テラスハウスのあの事件」を思い浮かべると思います。

問題は、煽った人物にある。

原作者赤坂アカ・作画担当者横槍メンゴ先生の認識

原作者の赤坂アカ先生と作画担当の横槍メンゴ先生の認識は現時点でこういったものが見つけられます。

テラスハウスと木村花さんの事件と推しの子連載の時系列

2020年1月、作画担当の横槍氏がテラスハウスを視聴して資料収集

3月24日、木村花さんに関してSNS炎上の発端となったテラスハウスの放送日
※補足追記:大炎上が始まったのは3月31日に放送された38話の「コスチューム事件」以降だが、出演者との(番組内での)いざこざの前段があったのがこの日。

4月23日、「推しの子」連載開始

5月23日 事件発生

6月3日、原作者の赤坂アカ氏が木村花さんの事件を意識したと思われる投稿

10月第二週、ヤングジャンプ 2020 No.46にて「推しの子」恋愛リアリティーショー編が開始

2023年5月10日 アニメ「推しの子」の「恋愛リアリティーショー」の初回放送

横槍メンゴ先生がテラスハウスを視聴していることから、この番組で恋愛リアリティーショーの構造等を「資料収集」したというのは間違いないと言えます。

ただ、時期は事件の4カ月前、炎上した放送の2ヵ月前の2020年の1月です。

そのため、「木村花さんの事件」の内容も「参照」したのかと言えば、少なくとも初期プロットでは参照していなかったであろうと推測できます。

恋愛リアリティーショーの構造と問題、炎上の展開の仕方それ自体は、木村花さんの事件を抜きにしても既に海外での事例が発生しておりメディアで報じられていたのであって、それのみで「木村花さん事件」という特定の事件の具体的事実関係をなぞったものであるとは言えないでしょう。

たとえば、2019年の3月の時点で以下のような記事が存在しています。

「SNSの炎上の仕方」については、たとえば同じヤングジャンプの怨み屋本舗シリーズ[ 栗原 正尚 ]などあらゆる漫画作品で描かれており、ほとんど実際のSNS炎上時の「日常風景」を取り上げているようにしか見えません。

ただ、「推しの子」の当該エピソード回までに木村花さん事件特有の事実関係や話の展開が参照されて描写されていたのかどうか?については、当事者にしかわかり得ません。事件の一端は、報道等で書かれた内容から伺い知ることは可能でした。

仮に一部がそうであったとしても、「推しの子」の場合は「恋愛リアリティーショーの問題」として具体から抽象へと再構成した上で文学的な批判を交えて描かれたものであって、特定の事件・人物をベースにして物語が作られた、ましてや「オマージュしてエンターテイメントに昇華」とは言えません。

アニメの放送時期についても、木村花さんの命日である5月23日から約2週間離れた5月10日が初回放送であり、「当て擦った」要素は無いと言えます。

ネット上では同様の疑念が投げかけられた話が少し前にも発生しました。

「推しの子をオマージュしてエンターテインメントに」テレビ朝日の書評記事と煽ったアカウント

https://web.archive.org/web/20230521051958/https://twitter.com/dfrsluqlss20426/status/1659889580504670215

最初に木村響子さんが反応したツイートはこちらですが、既にアカウント削除されていました。「オマージュしてエンターテイメントに昇華」「モラルやばない?」という言葉に刺激されたのでしょう。

次に、テレ朝のWEBページ上でライターが「推しの子」の恋愛リアリティーショー編について論じている書評を取り上げた別のアカウントが「推しの子が木村花さんを題材にしたことは明言されてます」と書き、これにも木村響子さんが反応

まとめ:推しの子はテラスハウスの木村花さん事件を同定可能性があるレベルで取り上げておらず、ネタとして消費していない

以上をまとめると、「推しの子」は、テラスハウスの木村花さん事件を同定可能性があるレベルで取り上げてはいない、ということになります。

一部に実際の事件の事実経過に似通った部分や要素があったとして、それは「恋愛リアリティーショー」の構造の問題を論じるために必要な程度にとどまり、「元ネタとして茶化している」要素は一切見当たりません。

これがアウトなら、もはや恋愛リアリティーショーの問題を論ずることはできないでしょう。

匿名ネットユーザーがある作品と現実世界の事件を安易に結びつけるということは、よくある話であり、それ自体が炎上を狙ったモノであることもあります。

原作を見ない事には、何も語り得ないでしょう。

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