事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

共同通信『杉田水脈議員が「在日特権存在する」ヘイト扇動』:朝鮮商工会と国税庁の「5項目の合意」

確定事実ではないが…

共同通信『杉田水脈議員が「在日特権存在する」ヘイト扇動』

共同通信が『杉田水脈議員が「在日特権存在する」とヘイト扇動』と報道。

「同和利権」には反応せず否定しない共同通信記事はちょっと面白いですが。

杉田水脈議員「差別に関わる利権や特権は実際には存在します」

共同通信の言う杉田水脈議員の投稿は、11月3日に「差別に関わる利権や特権は実際には存在します」として元産経新聞記者の三枝玄太郎氏のYoutube動画をシェアしたもの。

朝日新聞の記事というのは、以下の記事と思われます。

杉田水脈氏の動画投稿 識者がみる「テンプレと自民党の罪」 二階堂友紀 根岸拓朗 松井望美2023年11月1日 17時30分

「逆差別」「利権」といった言葉は、差別を是正する政策が進んだ後、バックラッシュ(反動)としてよくみられるという。日本でも「在日特権」「同和利権」などという言い方で、差別に使われてきた歴史がある。

 「利権や特権など存在しない。にもかかわらず、『マイノリティーが差別を主張することで不当な利益を得ている』と訴え、マジョリティーの不満をあおる。現代における差別扇動の典型的な表現だ」と明戸さん。

「利権や特権など存在しない」と言っているのは社会学者の明戸隆浩・大阪公立大准教授の弁でした。

元産経新聞三枝玄太郎が言う在日特権:朝鮮商工会と国税庁の五項目の合意

元産経新聞の記者である三枝玄太郎氏が言うところの「在日特権」とは、朝鮮商工会と国税庁の「5項目の合意」を指します。

「通名」は在日特権には当たらないとしています。

これについて書かれた産経記事は以下。

※「同和利権」も、部落解放同盟と国税庁との間で交わされていた税金の免除密約を指しています

【ニュースの深層】朝鮮商工連-国税庁の「税金特権」合意あったのか 北の核・ミサイル開発資金どこから?(1/5ページ) - 産経ニュース 2017/6/4 16:00

(1)朝鮮商工人のすべての税金問題は、朝鮮商工会と協議して解決する

(2)定期、定額の商工団体の会費は損金(経費)として認める

(3)学校運営の負担金に対しては前向きに解決する

(4)経済活動のための第三国旅行の費用は、損金として認める

(5)裁判中の諸案件は協議して解決する

5項目の合意はこのような内容だということです。

これは、1991年2月に総聯が発行した便覧『朝鮮総聯』の中で、1967年に在日朝鮮人商工連合会と日本国税庁の間で税金問題解決に関する5項目の<合意>が成立したと書かれている事が発見されたことから表沙汰になったとされています。当該便覧の当該記述はは産経記事に画像が掲載されています。

産経の取材記事では「米政府の国家経済会議専門エコノミストのマーカス・ノーランドの調査報告書でも言及・朝鮮総連が「特権は無い」と抗議するも合意の有無には触れず」と書いています。

日本政府は「5項目の合意」の存在を否定する答弁

ただし、日本政府・国税庁は「5項目の合意」の存在を否定する答弁をしています。

第129回国会 衆議院 予算委員会 第14号 平成6年6月1日

○中山(太)委員 ここで、国税庁、来ておられますか。来ておられますね。国税庁にちょっとお尋ねしたいのです。
 この在日本朝鮮人総連合会の発行しているパンフレットがあるのですね。ここに「五項目の「合意事項」」というものが書かれているわけです。
  日本税務当局との「合意」
  「韓日条約」の締結後、在日同胞商工人にたいする日本当局の弾圧と税務攻勢はいっそう激しくなった。
  一九六七年十二月、日本国税庁査察官と機動警官隊は、取引先の脱税容疑を口実に同和信用組合の本店と上野支店にたいする強制捜査を強行した。
  日本当局による同様の税務弾圧が各地で頻発した。
こういう中で、一九七六年十月、五項目の合意事項が結ばれているわけです。
 在日本朝鮮人商工連合会と日本国税庁のあいだで合意された内容はつぎのとおりである。
  ①朝鮮商工人のすべての税金問題は、朝鮮商工会と協議して解決する。
  ②定期、定額の商工団体の会費は損金として認める。
  ③学校運営の負担金にたいしては前向きに解決する。
  ④経済活動のための第三国旅行の費用は、損金として認める。
  ⑤裁判中の諸案件は協議して解決する。
こういうふうな合意事項があったと言われているのですが、これはまあ朝鮮総連の出しているパンフレットに載っているわけです。この事実を確認してください。

○三浦政府委員 お答えいたします。
 国税当局が、特定の団体あるいはその会員に対しまして特別な取り扱いをするということはございません。今御指摘の在日本朝鮮人商工連合会でございますか、それとの合意事項というものはございません

この件についてはその後も多数の議員から何度も質疑がなされています。

第145回国会 衆議院 安全保障委員会 第3号 平成11年3月3日

○阪上委員 朝鮮信用組合等についてお伺いをいたします。
 北朝鮮研究の専門家にお会いをいたしますと、朝鮮信用組合、在日朝鮮人商工連合会はかねてその内部実態を明らかにされず、二重帳簿の存在など不明朗な経営が指摘され、また、国税庁との間でも特権的な取り扱いを定めた合意事項があるように聞いております。また、都道府県の監査も形骸化されておると聞いておるのであります。
 政府としてはどの程度実態を把握しておるのか、また、法のもとの平等の観点から、不法、脱法行為には毅然とした態度で臨むべきであると思いますが、大蔵、国税庁の考えをお伺いいたします。

○吉川説明員 課税面での実態把握という観点からお答えさせていただきたいと思います。
 一般論として申し上げますと、国税当局におきましては、常日ごろから、あらゆる機会を通じ、課税上有効な資料情報の収集に努めているところでございます。また、収集した資料情報と納税者から提出された申告書等を総合検討いたしまして、課税上問題があると認められる場合には税務調査を行うなど、適正な課税に努めているところでございます。
 先ほど先生がお触れになりました在日本朝鮮人商工連合会とのいわゆる合意事項でございますが、これは在日本朝鮮人商工連合会側の要望にすぎず、国税庁がこれに合意したということではございません。この旨、機会あるごとに申し上げておるところでございまして、また、本年一月、合意事項なるものは存在しない旨について改めて職員に周知徹底を図ったところでございます。
 今後とも、適正かつ公平な課税の執行に努めてまいりたいと思っております。

政府は「在日本朝鮮人商工連合会側の要望にすぎ」ない、としています。

第145回国会 衆議院 大蔵委員会 第16号 平成11年7月6日

○小池委員 ずっとこういうことが積み重なって、結局日本は、国交のこれまでのおくれてきたこともございましょうが、しかしながら、北朝鮮はもうアメリカとしか話をしない、日本に話してもしようがないみたいな、もうなめられちゃっているわけですね。それではやはり国家としての体をなしていないのではないか。それぞれ、一つ一つはパーツでしっかりやっておられるかもしれないけれども、全体の誤謬と申しましょうか、そういったことで結果的に我が国は非常に、平たく言ってなめられていると言わざるを得ないと私は思います。
 また、以前日本海での不審船との交戦が話題になったことがございますけれども、この万景峰92号こそ私は堂々と入ってくる不審船だというふうに思うわけでございまして、必要に応じということで関税局長おっしゃいましたが、これは常に必要があるというふうに、さらにきっちりとしたチェックをすべきということを私は主張しておきたいと思っております。
 いずれにいたしましても、事総連絡み、朝銀絡みとなると、どうも皆さん腰が引ける。また、国会においてもこれが初めての質問であるということ、これも同じことだと思います。また、ある月刊誌の七月号には、大阪朝銀の破綻について、大蔵省筋はやはり民族系金融機関という事情が大きいと説明している、そういうくだりもございます。
 これまで、国税庁と朝鮮人商工会とのいわゆる五カ条の御誓文なるものがあって、それによって団体交渉権を得て、商工連の判こがあればそれはほとんどノーパスだということは、この業界、この方では極めてよく知られるところでございます。国税庁は、以前も参議院の方で質問があった際に、そういう合意書はないというふうにお答えになっているのですが、しかし、国税庁が否定なさったその直後に、商工連の梁守政氏は、絶対に既得権は守ると言って高らかに宣言をされておられるそうでございます。彼らにとっての既得権とは一体何なのでしょうか、国税庁、お答えください。

○大武政府委員 お答えさせていただきます。
 今先生からお話ありましたように、過去に在日朝鮮人商工連合会から国税に関する要望があったということは承知していますが、国税庁としては、決して特定の団体なりその会員に対し特別な扱いということを行うことはあり得ず、御指摘のような合意事項というものは存在いたしません。
 昨年十一月、先生からもありました、あたかも合意事項が存在しているのではないかと国民の誤解を招くおそれのある報道が新聞紙上でされたこともございまして、本年の一月、合意事項なるものは存在しないという旨について改めて職員に周知徹底を図ったところでございまして、今後とも適正かつ公平な税務の執行に全力で取り組んでいきたい、そう思っているところでございます。

もっとも近いところでこの話が出てくる国会議事録は平成26年のものです。

第187回国会 衆議院 外務委員会 第6号 平成26年11月12日

○武藤(貴)委員 ~省略~

数年前にニュースに出ているんですけれども、一九七六年に朝鮮商工会と日本の国税庁で五つの合意があるというニュースが数年前から言われておりまして、この朝鮮商工会から、西岡さん、救う会の会長が言うのは、日本で脱税した資金が北朝鮮に流れているというような問題点が指摘されています。
 この税金の減免に関して国税庁と合意があってきちんと国税庁から取り締まりを受けなかったということを、朝鮮商工会や朝鮮総連の幹部がはっきり証言しているわけですね、税金を払っていない、それが北朝鮮に流れているということを。国税庁に聞くと、そんな合意はないと言っているんですけれども、実際、それが北朝鮮のいろいろな資金、使われる資金になっているという現実があります。
 そこで、平成二十五年一月二十五日に拉致対策本部で設置された「具体的施策」というところの中の一番目に、「厳格な法執行を推進する。」というような文言が盛り込まれた、これは、今まで日本で厳格な法執行がなされていなかったということの裏返しだというふうに救う会の西岡会長はおっしゃっているんですね。
 ですから、こういう問題、答弁しにくいと思いますけれども、実際あったんだと思います。しっかり国税庁として取り組んでいく必要があると思うんですね。
 そこで、今まで、こういう実態を踏まえて、やはり総括をしていかなきゃいけないと思います。政府として、こういう日本の、脱税、それから不動産ビジネスですね、総連あるいは朝鮮商工会の人々がやってきたビジネスでもうかった部分の税金を減免して北朝鮮に送っていた、これを総括して、どこに原因があったのかということをしっかり調べて、取り締まりを強化していく必要があると思いますが、政府の所見をお伺いします。

○藤田政府参考人 お答えいたします。
 まず最初に申し上げますけれども、先生引用されましたけれども、在日朝鮮人商工連合会と国税庁との間に何か合意事項があると言われているという御質問でした。
 税務当局の使命は、適正、公平な課税の実現を図ることでありまして、国税庁としては、特定の団体なりその会員に対し特別の扱いをすることはあり得ず、在日朝鮮人商工連合会との合意事項というものはございません。

公式見解としては、否定する、という状況が続いています。

どういう意図かはわかりかねますが、与党の議員職である杉田議員が、政府が「合意は無い」と答弁し続けている話を、確定事実であるかのように発信するのは、危険なのではないかと思います。

なお、現在の北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長である西岡力氏は、平成17年当時に、国会に参考人招致された際に5項目の合意について現在でも存在しているということを北朝鮮側が宣伝している、と証言しています。

第162回国会 衆議院 北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会 第4号 平成17年7月28日

○渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。
 もう時間がありませんので、早速入らせていただきます。
 まず冒頭、西岡参考人にお尋ねをします。
 西岡参考人は二〇〇一年の三月に、亜細亜大学アジア研究所というところから、「朝鮮総聯の対北朝鮮送金と税金問題」というレポートを出していらっしゃいますが、その中で、日本の税務当局と朝鮮商工会が、要は税務については団体交渉をして、税金をまけてもらっている、減免してもらっている。そして、それをまけてもらって、要は潤沢になった資金が北朝鮮に流れているんだ、このようなことを書かれておりますけれども、この点について、まず冒頭、事実関係を教えていただきたいと思います。

〇西岡参考人 そのとおりの事実関係を確認しております。これが朝鮮総連が出している冊子であります。そこに、朝鮮語ですけれども、五項目の合意を国税当局としていると、このページに書いてあります。

○渡辺(周)委員 つまり、これは朝鮮総連と日本の税務当局の話し合いの結果、このような合意があった、そしてそのような優遇措置が結果的に北への送金という形になっている、こう考えてよろしいですか。

○西岡参考人 私は、国税当局からも情報を得ておりますが、総連が話し合いをしたという時期に、実際、総連の幹部と国税当局の間で話し合いがあったこと、それも社会党の国会議員の議員会館の部屋であったということまで確認しております。

○渡辺(周)委員 これは、現在もまだこうした優遇措置が続いている、このように考えていてよろしいでしょうか。

○西岡参考人 北朝鮮及び朝鮮総連は、続いていると言って宣伝をしていることは間違いありません

行政に特権の定義なし:その他、「在日特権」と言われていたもの

さて、「5項目の合意」から離れて、それ以外の「特権」についてはどうでしょうか?

そもそも行政上、「特権」の定義はありません。

なので、「特権はあっただろ」と言っても、「無い」と言われたり、「〇〇の意味するところが定かではないが…」と言われるだけです。

この手の話は不毛なので、具体的にどのような優遇される措置や状況があるのかを具体的に指摘しないといけません。

なお、「在日特権は無いと法務省が公式見解を出した」という報道がありましたが、デマです。

では、前述の三枝玄太郎氏の言うところの在日特権、以外の在日特権はあるのでしょうか?

それを特権と呼ぶべきか?という評価の違いはあれども、特権と言われても仕方のない状況が存在している/存在していた、というのが厳然たる事実です。

例えば、法定の要件を充たしていないのに行われていた朝鮮総連関係施設の固定資産税免除がありました。

これは菅義偉議員が総務副大臣・総務大臣時代に免税措置を見直すよう指示し、2010年には全て減免措置措置の対象となる朝鮮総連の施設がゼロとなったと、彼の著書である【政治家の覚悟】に書かれています。

次に、各地の朝鮮学校の土地賃料が標準よりも遥かに安い価格で貸与されている/いた、という事実があります。是正のために訴訟提起も為されており、公の事実です。

さらに、特別永住者は、その身分が相続されます。

しかも、国籍を変えても身分が血統で保障されている状況です。

この点は有田芳生議員の質疑に対して政府が法務省の在留外国人統計を用いて答弁しており、特別永住権者の国籍は数十か国に渡っており、無国籍も87人居る、という事が国会の場で語られています。

他の外国人の永住者や定住者の資格には、このような機能はありません。厳密には権利ではなく資格ですが、ほぼ日本人と同様の扱いを受ける権利があるような状況です。

特別永住者たる在日外国人には、他の在日外国人には無い特権がある、と言われても仕方がないと言えるでしょう。

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