事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

有本香、KAZUYAへ「原文を読むのが大事」パウエルの訴訟記録原文を読みましたか?

有本香

原文を読むのが大事だし、引用されてる判例の事案を読むのも大事。

有本香KAZUYAへ「パウエルの訴訟記録原文を読んだ?」

有本香 氏がKAZUYA 氏に「パウエルの訴訟記録原文を読みましたか?」とツイート。

原文を読めと言う有本香は正論

有本香 氏は度々原文を読むことを呼びかけていました。

「CSISのレポート」については以下等で触れていますが、まぁ、外国人が公開資料からまとめた日本におけるチャイナの影響、という感じでした。

森元総理大臣の日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会における発言も全文は日刊スポーツのものがもっとも長く収録されています(一部で異なる内容があるという指摘もあるらしいが精査は出来てない。)が、拡散されたのは朝日新聞等の要約版であり、印象が若干異なりました。

森会長の心境「どんなことあってもやる」発言全文3 - 東京オリンピック2020 : 日刊スポーツ

有本氏の原文重視の姿勢は一般論として正論であり、同意します。

パウエルの訴訟記録の原文について

 

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この英文部分は有本氏がお気に入りの部分のようで、他のユーザのツイートも何度もリツイートをしています。ところで本人による解説等が一切無いのはなぜなんでしょう?

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パウエルの訴訟記録原文を読みましたか? 

パウエル氏の"no reasonable person would conclude that the statements were truly statements of fact. "=良識ある者はこれらの主張が真に事実の陳述であると結論づけることはないでしょう、という主張(27頁)は、過去の判例法理に基づく訴訟上の抗弁であるという指摘を上掲エントリでしました。パウエルの訴訟記録原文は以下。

https://assets.documentcloud.org/documents/20519858/3-22-21-sidney-powell-defending-the-republic-motion-to-dismiss-dominion.pdf魚拓

有本香 氏が引用しているアカウントが取り上げている部分ですが、以下の引用の最後の下線部分が該当します(32頁)。その前の部分の文章は以下のようになっています。

Given the highly charged and political context of the statements, it is clear that Powell was describing the facts on which she based the lawsuits she filed in support of President Trump. Indeed, Plaintiffs themselves characterize the statements at issue as “wild accusations” and “outlandish claims.” Id. at ¶¶ 2, 60, 97, 111. They are repeatedly labelled “inherently improbable” and even “impossible.” Id. at ¶¶ 110, 111, 114, 116 and 185. Such characterizations of the allegedly defamatory statements further support Defendants’ position that reasonable people would not accept such statements as fact but view them only as claims that await testing by the courts through the adversary process.

要するに原告(ドミニオン社)が、問題のパウエルの主張について “wild accusations” “outlandish claims.” “inherently improbable” “impossible.” などの表現を用いていることを取り上げて、それは被告(パウエル)の主張=ドミニオンに関連する問題発言は、修辞的に誇張された政治表現であるという主張を裏付けている、という内容です。

これを単純化すると以下になります。

この部分は何か判例を引いたり確定された法理を参照しているのではなく、パウエル側が、自身のドミニオンに関する主張はそのように理解されるべきものだろう、という生の主張をしているに過ぎないということです。

「みなさん」は、訴訟記録原文を読みましたか? 

現実の悪意をドミニオン社が立証できるか

パウエル側はドミニオン社は公人=public figuresだと主張しています。

公人には主張者の現実の悪意=actual maliceを立証する責任があるというのがアメリカ判例であり、過去には大学運動部のコーチが該当した例もあります*1*2

そのため、選挙の集票機械に関する発言はドミニオンが公人として扱われる話とされる可能性が高く、本件訴訟はドミニオン社がパウエル氏の現実の悪意を立証できるかどうかに注目が集まるものと思われます。

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