原文を読むのが大事だし、引用されてる判例の事案を読むのも大事。
- 有本香KAZUYAへ「パウエルの訴訟記録原文を読んだ?」
- 原文を読めと言う有本香は正論
- パウエルの訴訟記録の原文について
- パウエルの訴訟記録原文を読みましたか?
- 現実の悪意をドミニオン社が立証できるか
有本香KAZUYAへ「パウエルの訴訟記録原文を読んだ?」
どんな気持ちになろうが自由。しかし当時も私は何一つ断定して喋っていませんので。ところで、貴殿はパウエルさんの名誉毀損訴訟の全記録(原文)を読んだのですか? まさか誰かの受け売りで私を貶めようとそんなツイートしているわけではないですよね? https://t.co/3idAmNp4Ys
— 有本 香 Kaori Arimoto (@arimoto_kaori) 2021年3月23日
有本香 氏がKAZUYA 氏に「パウエルの訴訟記録原文を読みましたか?」とツイート。
原文を読めと言う有本香は正論
有本香 氏は度々原文を読むことを呼びかけていました。
CSISにゲストとして招かれたこともあり、二言目には「勉強しろ」と他人に言い放つ橋下さんは当然、CSISが最近出したレポート「China's Influence in Japan」を原文で読了しているにちがいないが、いまなぜ「二階さんみたいな国会議員が必要」と言い募るのか。二階氏が何をしてきたかご存じないのかな。 https://t.co/dGczS06n9w
— 有本 香 Kaori Arimoto (@arimoto_kaori) 2020年7月30日
「CSISのレポート」については以下等で触れていますが、まぁ、外国人が公開資料からまとめた日本におけるチャイナの影響、という感じでした。
トヨタもパナソニックもJR東日本もみんなダメだね。森発言の原文にあたらずにトップがコメントするなんて、日本リーディングカンパニーがそんなリテラシーでは先が思いやられる。コメントの内容も陳腐に過ぎる。よって、大した額ではないが、これらの企業の株は全て売却することにした。
— 有本 香 Kaori Arimoto (@arimoto_kaori) 2021年2月12日
森元総理大臣の日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会における発言も全文は日刊スポーツのものがもっとも長く収録されています(一部で異なる内容があるという指摘もあるらしいが精査は出来てない。)が、拡散されたのは朝日新聞等の要約版であり、印象が若干異なりました。
森会長の心境「どんなことあってもやる」発言全文3 - 東京オリンピック2020 : 日刊スポーツ
有本氏の原文重視の姿勢は一般論として正論であり、同意します。
パウエルの訴訟記録の原文について
誰かが「切り取り」して拡散したのでしょう。KAZUYA氏は原文を読まずそれに乗ったようですが、そうまでして私を貶めても自分の評価は上がらないのに。氏に煽られた「少数派」は私に、謝罪しろ、と言っていますが、未だ真相が完全解明されてもいない件で、他人に謝罪まで迫る人がいることに驚いています https://t.co/fokCSQdhVg
— 有本 香 Kaori Arimoto (@arimoto_kaori) 2021年3月23日
この英文部分は有本氏がお気に入りの部分のようで、他のユーザのツイートも何度もリツイートをしています。ところで本人による解説等が一切無いのはなぜなんでしょう?
パウエルの訴訟記録原文を読みましたか?
パウエル氏の"no reasonable person would conclude that the statements were truly statements of fact. "=良識ある者はこれらの主張が真に事実の陳述であると結論づけることはないでしょう、という主張(27頁)は、過去の判例法理に基づく訴訟上の抗弁であるという指摘を上掲エントリでしました。パウエルの訴訟記録原文は以下。
https://assets.documentcloud.org/documents/20519858/3-22-21-sidney-powell-defending-the-republic-motion-to-dismiss-dominion.pdf(魚拓)
有本香 氏が引用しているアカウントが取り上げている部分ですが、以下の引用の最後の下線部分が該当します(32頁)。その前の部分の文章は以下のようになっています。
Given the highly charged and political context of the statements, it is clear that Powell was describing the facts on which she based the lawsuits she filed in support of President Trump. Indeed, Plaintiffs themselves characterize the statements at issue as “wild accusations” and “outlandish claims.” Id. at ¶¶ 2, 60, 97, 111. They are repeatedly labelled “inherently improbable” and even “impossible.” Id. at ¶¶ 110, 111, 114, 116 and 185. Such characterizations of the allegedly defamatory statements further support Defendants’ position that reasonable people would not accept such statements as fact but view them only as claims that await testing by the courts through the adversary process.
要するに原告(ドミニオン社)が、問題のパウエルの主張について “wild accusations” “outlandish claims.” “inherently improbable” “impossible.” などの表現を用いていることを取り上げて、それは被告(パウエル)の主張=ドミニオンに関連する問題発言は、修辞的に誇張された政治表現であるという主張を裏付けている、という内容です。
これを単純化すると以下になります。
A「お前は票の操作をした!その根拠としてこれこれこういう事実がある!」
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2021年3月24日
B『いやいや、あり得ない=impossibleでしょ!』
A「Bが私の発言をimpossibleと表現した。つまり私の発言は修辞的な政治的誇張表現に過ぎず、誰も真実だと思わないだろう」
やばすぎるでしょ。 https://t.co/8NP4sSaFRD
この部分は何か判例を引いたり確定された法理を参照しているのではなく、パウエル側が、自身のドミニオンに関する主張はそのように理解されるべきものだろう、という生の主張をしているに過ぎないということです。
「みなさん」は、訴訟記録原文を読みましたか?
現実の悪意をドミニオン社が立証できるか
パウエル側はドミニオン社は公人=public figuresだと主張しています。
公人には主張者の現実の悪意=actual maliceを立証する責任があるというのがアメリカ判例であり、過去には大学運動部のコーチが該当した例もあります*1*2
そのため、選挙の集票機械に関する発言はドミニオンが公人として扱われる話とされる可能性が高く、本件訴訟はドミニオン社がパウエル氏の現実の悪意を立証できるかどうかに注目が集まるものと思われます。
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