事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

文書交通滞在費の国庫への返納・寄附は公職選挙法違反

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国会議員の文書交通滞在費について、「余ったなら国に返金(寄附)すればいい」と言う人が居ます。

残念ながら、現時点ではそれは違法なのです。

文書交通滞在費の国庫への返納・寄附は公職選挙法違反

(公職の候補者等の寄附の禁止)
第百九十九条の二 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域。以下この条において同じ。)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。 -以下省略

「当該選挙区内にある者」の解釈については国会答弁があります。

189 衆議院 予算委員会 3号 平成27年01月30日

○高市国務大臣 公職選挙法第百九十九条の二の第一項でございますが、公職の候補者等は、当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず、寄附をしてはならないと規定しております。
 この当該選挙区内にある者とは、当該選挙区内にある全てのものを意味し、自然人や法人のほか、国や地方公共団体も含まれるところでございます。したがって、議員が歳費を受領しそれを国庫に納付するというのであれば、それは国に対する寄附であり、公職選挙法に禁止されているところでございます。 

「あれ?でも、国会議員が自主返納っていうの、どこかで聞いたことがあるけど?」

と、思った方。これは「歳費」のことですね。

歳費は国庫への返納・寄附が可能になる法改正がなされた

歳費も、かつては国への返納が違法になっていました。

しかし、法律第四十三号(令元・六・二六)によって改正されました。

いわゆる「歳費返納法」

国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案:参議院

法律第四十三号(令元・六・二六)
◎国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(昭和二十二年法律第八十号)の一部を次のように改正する。
附則に次の二項を加える。
参議院議員が、令和四年七月三十一日までの間において、支給を受けた歳費の一部に相当する額を国庫に返納する場合には、当該返納による国庫への寄附については、公職選挙法第百九十九条の二の規定は、適用しない。
前項の規定により歳費の一部に相当する額を国庫に返納するに当たつては、同項の措置が参議院に係る経費の節減に資するためのものであることに留意し、月額七万七千円を目安とするものとする。

参議院議員が7万7000円を目安にして歳費を国庫に返納できるようになりました。

国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律

国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律

上記ページは未だ更新されていないようですが、今後は追加されることになります。

文書交通滞在費は返納・寄附可能な規定なし

文書交通滞在費は返納可能な規定がありません。

このような状況なので、国庫に返納した場合には公職選挙法違反になるという、何ともくだらないことになっているのが現状です。

これも日本維新の会などが返納が可能になるようにするべきであると主張しています。

参議院選挙後に法案が提出されるのではないでしょうか。

まとめ

文書交通滞在費についての法律の状況が複雑であるために、誤解があります。

また、文書交通滞在費は使途の報告が法律で義務付けられていないという問題もあります。現在は日本維新の会だけが、自主的に報告をしているところです。

これも今後、公開義務化の法案が出たり、金額そのものを低額にするなどの方向になっていくでしょう。

こういった事情を知らない者がデマを流しているので、騙されないようにしましょう。

以上