維新の会の議員が自分名義の政党支部への寄附をしているといわれています。
文書交通滞在費をそのように扱っているのですが、 これを違法だと言う者が居ます。
結論から言うとそれはデマであり、また、理由がある行為です。
- 文書交通滞在費とは
- 文書交通滞在費の国庫への返納は公職選挙法違反
- 自分の名義の政党支部等への寄附は違法でもなんでもない
- 政党支部等への寄附後は政治資金収支報告書に使途が記載
- 日本維新の会とその他の国会議員のお金の透明性
- 文書通信交通滞在費の公表は立法事実を確認するため
- まとめ:違法でも不当でもない
文書交通滞在費とは
国会法第38条
議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、別に定めるところにより手当を受ける。
第9条第1項
各議院の議長、副議長及び議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、文書通信交通滞在費として、月額百万円を受ける。
第9条第2項
前項の文書通信交通滞在費については、その支給を受ける金額を標準として、租税その他の公課を課することができない。
文書交通滞在費とは公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のために国会議員に対して毎月100万円が支給されるものです。
これは歳費等とは別個のものです。
ですから、その扱いも歳費等とは別個のものとなっています。
文書交通滞在費は使途の報告義務が無い
平成二十年二月十二日受領 答弁第一九号 内閣衆質一六九第一九号 平成二十年二月十二日
衆議院議員 鈴木宗男君 提出国会議員に渡される文書通信交通滞在費のあり方に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の文書通信交通滞在費は、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(昭和二十二年法律第八十号。以下「法」という。)第九条の規定に基づき、「公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため」支給されるものと承知している。
二について
法において文書通信交通滞在費について使途を報告する義務が課されていない理由については、承知していない。
三について
文書通信交通滞在費の平成二十年度予算額及び予算項目は、国会所管のうち(組織)衆議院(項)衆議院(目)議員文書通信交通滞在費が五十七億六千万円であり、(組織)参議院(項)参議院(目)議員文書通信交通滞在費が二十九億四百万円である。これらのいずれについても、法第九条に規定されている月額百万円に十二箇月を乗じ、更に各議院の議員定数を乗じて得た額を計上している。
四から六までについて
文書通信交通滞在費は、法の規定に基づき予算計上しているものであり、その具体的な使途については承知していないが、各議員において制度趣旨を踏まえた使途に用いられているものと考えている。文書通信交通滞在費の取扱いについては、国会において御議論いただくべき問題であると考えている。
文書交通滞在費は、その使途を報告する義務がありません。
そのため、政治資金収支報告書に記載する必要が無いため、その使途を国民がチェックすることができません。
実際には余って別の用途に支出されている
実際には、文書交通滞在費は使いきれず余っていると言われています。
そのため、余った分はその他の用途に支出されているのですが、上述の通り報告義務が無いために何に使われているのかが分かりません。
日本維新の会のみが自主的に使途を公開していますが、他党は不明です。
「じゃあ、余った分は国庫に返納すれば良いじゃないか」
こう思う人もいるかもしれませんが、残念ながら現時点では違法なのです。
文書交通滞在費の国庫への返納は公職選挙法違反
(公職の候補者等の寄附の禁止)
第百九十九条の二 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域。以下この条において同じ。)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。 -以下省略
「当該選挙区内にある者」の解釈については国会答弁があります。
189 衆議院 予算委員会 3号 平成27年01月30日
○高市国務大臣 公職選挙法第百九十九条の二の第一項でございますが、公職の候補者等は、当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず、寄附をしてはならないと規定しております。
この当該選挙区内にある者とは、当該選挙区内にある全てのものを意味し、自然人や法人のほか、国や地方公共団体も含まれるところでございます。したがって、議員が歳費を受領しそれを国庫に納付するというのであれば、それは国に対する寄附であり、公職選挙法に禁止されているところでございます。
このように、文書交通滞在費の国庫への返納は公職選挙法違反という、何ともくだらないルールになっているのが現在の法律です。
したがって、維新の会が文書交通滞在費を国庫に返納しないというのは当たり前です。
なお、歳費については自主返納が可能になるルールが作られました(不十分ですが)
自分の名義の政党支部等への寄附は違法でもなんでもない
そして、自分名義の政党支部に対して寄附をするというのも、公職選挙法違反を避けるためのやむを得ない措置であり、それは違法でもなんでもない、ということです。
公職選挙法
第百九十九条の二 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域。以下この条において同じ。)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。ただし、政党その他の政治団体若しくはその支部又は当該公職の候補者等の親族に対してする場合及び当該公職の候補者等が専ら政治上の主義又は施策を普及するために行う講習会その他の政治教育のための集会(参加者に対して饗きよう応接待(通常用いられる程度の食事の提供を除く。)が行われるようなもの、当該選挙区外において行われるもの及び第百九十九条の五第四項各号の区分による当該選挙ごとに当該各号に定める期間内に行われるものを除く。以下この条において同じ。)に関し必要やむを得ない実費の補償(食事についての実費の補償を除く。以下この条において同じ。)としてする場合は、この限りでない。
つまり、維新の会の議員が自分の政党・政治団体やその支部へ寄附はすることは、公職選挙法199条の2第一項但書きにおいて許されているということです。
政党支部等への寄附後は政治資金収支報告書に使途が記載
文書交通滞在費の残額を公職選挙法199条の2第一項但書きで寄附が許されている政党支部等へ寄附をしたあと、そのお金の使い道はどうなるでしょうか?
この場合の使途は、1円単位ではないものの、政治資金収支報告書に記載されます。
これは、法的義務が伴うものです。
もちろん、元々の文書交通滞在費の使途は「公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため」とあるため、余った分ということは、それ以外の支出であると言えます。
しかし、寄付をしなければ残額の使途の公開は法的義務が無いのですから、実際上は同じことです。むしろ、使途を公開することになるので、透明性はより高いことになります。
日本維新の会とその他の国会議員のお金の透明性
⑤
— 清水亮太/Ryota Shimizu (@3ryota3) July 6, 2019
なので
【おかしな制度の中でなんとか透明性を保つ方法を考え実行している維新】
をつっ込むのも自由ですが、お金の流れに疑問を持つのであれば
【おかしな制度を変えられるのに変えず、だんまりを決め込んでいる他の政党】
をつっ込んだ方が建設的だと思います。↓
図解するとこのようになります。
他の政党が文書交通滞在費月100万円のすべての使途を公開していないのに対して、維新の会は文書交通滞在費の「公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため」の使用分は自主的に公表し、残額は政治資金団体に寄附して、その後の使途は政治資金収支報告書で義務のある公表をしているということです。
他の国会議員は、本当は「公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため」に使用していないお金についても、建前上、その用途として使用したと言い張っているに過ぎないのです。
維新の文書交通滞在費の使途と領収書の画像は、以下で見ることが可能です。
文書通信交通滞在費の公表は立法事実を確認するため
維新がなぜ文書通信交通滞在費を公表しているのか?というと、維新の廉潔性を示すためだけではありません。
先述のように、文通費は使途の公表が為されていないので、「本当に月100万円の支給が適切なのか?」ということを検証することもできないのが現状なのです。
実際に利用している当事者らの感覚からすれば「文通費として月100万円も利用することはなく、余るでしょ、そんなに要らないよね」と思っている人が多い。
でも、改正法案を立法しようとしても「文通費は適切に処理されている」と政府答弁されて【立法事実がない】と言われてしまう。
だから維新は領収書も含めて公開して検証している、その過程でもあるのです。
まとめ:違法でも不当でもない
参議院選挙があるので、維新の会の議員がUPした領収書の画像を挙げて「維新が違法なことをしている」「違法でなくとも悪いことをしている」という印象操作をしている者がいます。
一般人は法律の規定が複雑なので誤解するのもやむを得ないと思いますが、公職者にある者が意図的に誤解を拡散している例もあります。この場合は誣告罪の可能性もあるので見つけたら注意しましょう。
以上