事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

斎藤法務大臣の送還忌避者外国人未成年の在留特別許可方針について記者会見まとめ

これで明確に

斎藤法務大臣の送還忌避者外国人未成年の在留特別許可方針

8月4日、斎藤法務大臣が送還忌避者外国人未成年の在留特別許可方針を記者会見で表明、5日に資料が公明党議員によりSNSにUPされたので、先行した報道による誤解を解く意味で上掲記事を書いていました。

7日に法務省HPが更新され記者会見上の発言が明らかになったので要点をまとめます。

法務大臣臨時記者会見の概要 令和5年8月4日(金)まとめ

法務大臣臨時記者会見の概要 令和5年8月4日(金)

冒頭発言を全て引用します。

次項以降では質問と応答を適宜参照したりかいつまんで紹介します。

我が国で生まれ育ったものの、在留資格を有していないことから、様々な困難を抱えている外国人のこどもの問題について、私として、真剣に検討してきたところですが、今般、基本的な方針を定めましたので、御報告させていただきます。
 この問題につきましては、帰責性のある親を除いて、こどものみに在留特別許可を与えるということとしますと、こどもの生活が立ちゆかなくなってしまい、一方で、帰責性のある親を含めて在留特別許可を与えるものとするには様々な支障がある場合もありまして、一刀両断でこうすべきという結論を出すことがなかなか難しい問題であると認識しておりまして、これまでもそのように申し上げてきたところです。
 もっとも、今般改正入管法が成立しましたことによりまして、庇護すべき者は適切に庇護する一方、送還すべき者はより迅速に送還することが可能となる結果、今後は、在留資格のないまま在留が長期化するこどもの増加を大きく抑止することが可能になると考えられます。これを前提とするならば、既に在留が長期化してしまったこどもに関しては、現行入管法において迅速な送還を実現することができなかったことを考慮して、特別の配慮を行うべきであるとの結論に至りました。
 そこで、今回、我が国で出生して学校教育を受けており、引き続き我が国で生活することを真に希望していると認められるこどもについては、家族一体として日本社会との結び付きを検討した上で、在留特別許可をしたいと考えています。
 もとより、在留特別許可の許否判断につきましては、諸般の事情を総合的に考慮して判断するものであり、親に看過し難い消極事情があるような場合には、在留特別許可を出せない場合も残らざるを得ません。
 ただし、今回の判断に当たりましては、過去の長期の不法滞在を消極評価しないこととしたいと考えています。
 その上で、今申し上げた方針で運用を行うことによりまして、学校に通っているこどもの多くに、家族一体で在留を特別に許可することができることとなります。
 その結果、今後の精査によるわけでありますけれども、我が国で生まれ育った在留資格のないこどもの少なくとも7割程度、改正法施行時点で学齢期に達しているこどもの8割程度に在留資格を与えることになるのではないかと考えています。

現時点での概算・見立てとして我が国で生まれ育った在留資格のないこどもの少なくとも7割程度、改正法施行時点で学齢期に達しているこどもの8割程度に在留資格を与えることになるのではないかとのこと。

子どもを中心として父親や母親も同時に在留特別許可を与えるが、成人した兄弟姉妹や祖父母なども個別事情を見て判断するとしています。

既に在留が長期化している者の救済:改正法施行前の時点で学齢期

  1. 日本で生まれている
  2. 未成年
  3. 改正法施行前の時点で学齢期(小中高校年代)に達している

既に在留が長期化している子供の救済を趣旨として、斉藤法務大臣の言葉や入管の資料上の文言からは、これらの要素を満たしている者が対象となるとしています。

つまり、これらの要素を単に「考慮」するのではなく、今回の方針の対象となるための「要件」として考えていることになります。

その上で、他の積極事情や次項のような犯罪等の行為など消極事情を考慮して総合的に判断していくと言っています。

他方で、記者からは以下のような者について質問がありました。

  • 今回の条件には当てはまらない日本で生まれた未成年
  • 日本で出生していない未成年
  • 施行までに成人に達する者

斉藤法務大臣は、これらについては今回の方針の対象外だが、通常在留特別許可判断をしているのと同様に改正法施行までは現行の在留特別許可の許否判断をすると回答しました。

参考:在留特別許可に係るガイドライン

他人名義パスポートでや偽装結婚など不法入国・不法上陸は原則対象外

斉藤法務大臣は、看過し難い消極事情、つまりは①出入国管理行政の根幹に関わる違反、②反社会性の高い違反行為、③一定の犯罪行為による実刑判決などを行っていた場合、原則対象外とするとしています。

具体例が会見で挙げられていたので並べます。

あくまで例示列挙なので、これに限りません。

従来のガイドラインに明記されていない行為についても触れられています。

  1. 他人名義パスポートの使用
  2. 偽装結婚
  3. 上陸審査における退去命令の無視
  4. 詐欺等の目的で偽造在留カードを行使
  5. 偽造在留カードの作成や売買に関与
  6. 偽装結婚の仲介
  7. 薬物の使用
  8. 売春等の反社会性の高い違反行為
  9. 懲役1年を超える実刑判決を受けた

在留資格について、子どもは「留学」、親は「特定活動」の付与を想定

斉藤法務大臣は、こどもについては「留学」、親についてはこどもを監護養育する就労可能な「特定活動」の在留資格を付与することになると想定をしているとしています。

一部報道では「定住者等」と、在留資格が書かれていましたが、会見上の発言としてはこの通りです。

今回の方針は申請手続化はせず職権判断・今後のガイドラインの申請主義化は検討中

【記者】
 今の質問の一つで、今、申請手続化すると。今のところ、要するに、在留特別許可、退去強制令書が出てしまったら、再審情願みたいな形で、行政手続化していないわけですが、それと行政手続化するというのも今回の法改正の趣旨としてあったかと思うんですが、それに反映させるということなのか、申請手続の概要そのものについては、これはいつになったら明らかにするんでしょうか。

【大臣】
 今回表明しました基本方針につきましては、手続(化する)ということではなく、職権で順次やっていく。先ほど申し上げました。お答え申し上げましたように、職権で順次許可を与える判断をしていくということになります。ただ、ガイドラインについて、それを法律で申請主義にするということについては、今、検討中なので、まだいつということは申し上げられません。

申請主義にするという話は改正後の入管難民法第五十条のことです。

今回の方針と今後の話は明確に分けられているのが分かります。

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