事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

兵庫県斎藤知事「朝鮮学校への補助金交付継続」:外国人学校振興費補助と公の支配

どうなるのか

兵庫県斎藤知事「朝鮮学校への補助金交付継続」

朝鮮学校を巡っては、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)による「不当な支配」の疑いが指摘され、国の高校授業料無償化(就学支援金)の対象外となっている。

自治体からの補助金については東京都や大阪府などが支出を停止しているが、令和3年度は全国11道府県が支出し、11道府県の総額は7275万円。うち兵庫県は全国最多の4740万円、全体の65・2%に上った。斎藤氏が知事就任後初めて県予算を編成した4年度は約3600万円を支出。今年度の当初予算にも盛り込まれており、具体的な額は今後決まるという。

  • 国の補助金⇒不支給。訴訟も「不当な支配」が認定された朝鮮学校が敗訴確定
  • 自治体の補助金⇒支出停止する所もあったが現在でも全国で11自治体が実施

兵庫県の斎藤元彦知事が「朝鮮学校への補助金交付継続」を表明したことが報道されていますが、この二つのうち、本件は後者の話です。

この話は誤解が多いので整理していきます。

国の高校授業料無償化(就学支援金)訴訟では「不当な支配」が認定

国の高校授業料無償化(就学支援金)に関して、東京・大阪・愛知・広島・福岡の朝鮮学校やその関係者が提訴していましたが、最終的には教育基本法16条の「不当な支配」が全て認定されて国が勝訴しました。

この話に関して「朝鮮学校は学校教育法の一条校ではなく各種学校だから不支給は当然ダー!」という言説がありますが、各種学校でも当該補助金が支給されている学校はあるので、給付の可否の話については関係ありません。

兵庫県は「外国人学校振興費補助」地方自治法・私立学校法・私立学校振興助成法に基づき

各自治体の補助金名目は名称が異なりますが、兵庫県の場合は「外国人学校振興費補助」であり、地方自治法・私立学校法・私立学校振興助成法に基づいています。

これは兵庫県企画部補助金交付要綱に基づいて交付決定がされているものです。

参考:兵庫県公報(平成24年3月30日第7号外)

兵庫県議会 令和 2年 2月第347回定例会(第4日 2月26日)    
No.5 知事(井戸敏三)

朝鮮学校は、学校教育法上の各種学校に位置付けられますが、本県の補助金交付につきましては、国の高等学校等に係る就学支援金とは根拠法令が異なり、地方自治法、私立学校法及び私立学校振興助成法に基づき実施しているものであります。
 本県が行う朝鮮学校への補助金交付の公益性については、平成27年9月29日の最高裁判所の判決で確定した同年2月3日の大阪高等裁判所の判決によりまして、まず、日本の幼・小・中・高校と同学齢の生徒が学んでいるということ、二つに、高校総体などスポーツや文化面においても同様の活動をしていること。三つに、多くの大学が高等部の卒業生に対して入学資格を認めていることから、地方自治法232条の2の公益上の必要がある場合の裁量権の範囲内と認められたものであります。
 さらに、同判決においては、本県の補助金交付に係る朝鮮学校は、学校教育法や私立学校法などの教育関係法規や県要綱等の規制を受けているので、憲法89条後段にいう、公の支配に属しているとされています。
 こうしたことから、本県が行う朝鮮学校への補助金交付は、公益性を持ち、許容されるものと考えております。今後とも朝鮮学校に係る補助金の公益性、教育振興上の効果等を十分に検討しつつ、補助金の適正な執行に努めてまいります。
 一言申し上げますと、補助金の交付に当たりましては、学校運営分と教育充実分とにそれぞれ2分の1ずつに分けまして交付をいたしているものでありまして、朝鮮学校だけに特別の対応をしているものではございません。

この制度は県内12校が対象で、朝鮮学校はそのうち6校です。

要するに朝鮮学校以外の学校も対象になっています。

なお、ここでも各種学校と一条校という違いのみがこの制度の対象になるか否かを左右するということはありません。

では、自治体が国と異なる方針を採っていることにつき、国はどう認識しているのか?

朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について(通知)と補助金の大幅減額について

朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について(通知) 27文科際第171号平成28年3月29日

27文科際第171号
平成28年3月29日

北海道外1都2府24県知事  殿

文部科学大臣
馳  浩                                                         

朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について(通知)

朝鮮学校に係る補助金交付については、国においては実施しておりませんが、各地方公共団体においては、法令に基づき、各地方公共団体の判断と責任において、実施されているところです。

朝鮮学校に関しては、我が国政府としては、北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総聯が、その教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識しております。

ついては、各地方公共団体におかれては、朝鮮学校の運営に係る上記のような特性も考慮の上、朝鮮学校に通う子供に与える影響にも十分に配慮しつつ、朝鮮学校に係る補助金の公益性、教育振興上の効果等に関する十分な御検討とともに、補助金の趣旨・目的に沿った適正かつ透明性のある執行の確保及び補助金の趣旨・目的に関する住民への情報提供の適切な実施をお願いします。

また、本通知に関しては、域内の市区町村関係部局に対しても、御周知されるよう併せてお願いします。
なお、本通知の内容については、総務省とも協議済みであることを申し添えます。

「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について」という通知が出ており、「ちゃんとチェックしろよ」という圧がかけられています。

補助金の額については、朝鮮学校の金額は減額されてきています。

令和4年度は約3600万円ですが、平成29年度は7300万円弱でした。

他方で、他の学校は増額している所もみられます。

平成21年度実績では約1億4000万円だった頃と比べれば大分マシになったと言えるでしょう。全国的にも当時から大幅に減額されているようです。

補助金支給をしなくなった自治体もある中で継続支給そのものについて批判する声があるのも確かですが、事情は各地において異なるものがあり、行政や住民の監視が適切になされているかが重要と言えます。

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