事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

石丸伸二の電子書籍が選挙期間中に配信、公職選挙法違反なのか?

法の趣旨を逸脱していないか?

石丸伸二の電子書籍が選挙期間中に配信開始

東京都知事選に出馬している石丸伸二氏の書籍【シン・日本列島改造論 / 石丸伸二】が発売されます。

Amazonのページを見ると、発売日が都知事選後の2024/7/10となっていますが、電子書籍版はレビューを見ると6月28日から配信されているようです。

しかし、これは公職選挙法違反ではないか?

公職選挙法の選挙運動文書図画の掲示頒布の規制逃れ?

公職選挙法142条には以下書かれています。

(文書図画の頒布)
第百四十二条 衆議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号に規定する通常葉書及びビラのほかは頒布することができない。この場合において、ビラについては、散布することができない。

~省略~

四 都道府県の議会の議員の選挙にあつては、候補者一人について、通常葉書 八千枚、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ 一万六千枚

公選法では、一定の場合を除き、選挙運動のために使用する文書図画の頒布・掲示について禁止されています。

さらに、禁止を免れる行為についても146条で禁止されています。

(文書図画の頒布又は掲示につき禁止を免れる行為の制限)
第百四十六条 何人も、選挙運動の期間中は、著述、演芸等の広告その他いかなる名義をもつてするを問わず、第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為として、公職の候補者の氏名若しくはシンボル・マーク、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布し又は掲示することができない。
2 前項の規定の適用については、選挙運動の期間中、公職の候補者の氏名、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者の推薦届出者その他選挙運動に従事する者若しくは公職の候補者と同一戸籍内に在る者の氏名を表示した年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状その他これに類似する挨拶状を当該公職の候補者の選挙区(選挙区がないときはその区域)内に頒布し又は掲示する行為は、第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為とみなす。

石丸伸二氏の電子書籍は、この規制に当たらないのでしょうか?

公選法142条の3のウェブサイト等を利用する方法による選挙運動?

(ウェブサイト等を利用する方法による文書図画の頒布)
第百四十二条の三 第百四十二条第一項及び第四項の規定にかかわらず、選挙運動のために使用する文書図画は、ウェブサイト等を利用する方法(省略)により、頒布することができる。

他方で、公選法142条の3では、ウェブサイト等を利用する方法による選挙運動のために使用する文書図画の頒布が許されており、電子書籍の場合はこれに該当するために違法ではない、ということなのでしょうか?

しかし、紙の書籍として確定している内容を選挙期間中に前倒しで表示させることは、書籍の頒布を特定の場合にのみ認めた趣旨に反していないでしょうか?

内容も、都知事選の最中に今般の都知事選に関する報道状況が書かれた上で、「非常に困難を極めた戦いになります」という現在進行形の文言があり、今般の都知事選を振り返るなどの一般的な政治活動と言えるのか疑問です。

試し読み⇒楽天Kobo電子書籍ストア: シン・日本列島改造論 - 石丸伸二 - 4920419000038

石丸伸二の電子書籍は公選法違反なのか?

中には都知事選で公約としているところの「政治再建」「財政改革」という文言もみあたります。この内容は「選挙運動のために使用する」に当たらないのでしょうか?

書籍の大半は安芸高田市での市政の経験を述べるものであるということは目次からは推察できますが、同時に後半には東京都における政策論について述べているものがあることも伺えます。

ただ、紙の書籍の発売日が選挙後になっているのは、選挙期間中に発売してしまったら違法になってしまう、という意識があるからでしょう。内容が「選挙運動のために使用する」ものでないというのであるならば、選挙運動期間中に紙の書籍で販売しても問題無いはず。

それを電子書籍なら回避できるとして配信しているのではないでしょうか?

なお、公選法142条の3第3項ではこの場合の頒布者のメアド等の明記を義務付けていますが、電子書籍内で書いてれば良いのか、端末画面にページ遷移なしでの表示を求めるものなのか。試し読みで見れる範囲では電子書籍中には連絡先の表示は見当たりません。

この規定がある事からして電子書籍は対象外とする趣旨である、と読み取る余地はあるのか?など、単純に適法だと言える話では無さそうです。

衆議院議員総選挙と参議院議員通常選挙の特定の場合に許される書籍頒布

(パンフレット又は書籍の頒布)
第百四十二条の二 前条第一項及び第四項の規定にかかわらず、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙においては、候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等は、当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等の本部において直接発行するパンフレット又は書籍で国政に関する重要政策及びこれを実現するための基本的な方策等を記載したもの又はこれらの要旨等を記載したものとして総務大臣に届け出たそれぞれ一種類のパンフレット又は書籍を、選挙運動のために頒布(散布を除く。)することができる。
2 前項のパンフレット又は書籍は、次に掲げる方法によらなければ、頒布することができない。
一 当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等の選挙事務所内、政党演説会若しくは政党等演説会の会場内又は街頭演説の場所における頒布
二 当該候補者届出政党若しくは衆議院名簿届出政党等又は参議院名簿届出政党等に所属する者(参議院名簿登載者を含む。次項において同じ。)である当該衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙における公職の候補者の選挙事務所内、個人演説会の会場内又は街頭演説の場所における頒布

ちなみに、衆議院議員総選挙と参議院議員通常選挙の特定の場合には、書籍頒布が許されています。

しかし、他の選挙における候補者陣営においても政策を訴える内容については有権者の判断に資するものと言え、なぜこの場合に限定されているのかは謎であるとは言えます。

ともあれ、現行法の規制がおかしくとも、それは守らなければなりません。法令が憲法違反である、という主張をするのであれば別ですが。

石丸氏側はこのような政策論・立法論を主張するのでしょうか?というか、言わなければ姿勢に疑問符が付きます。単に制度をハックして法令の陥穽を突いているだけになってしまうでしょう。。

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