事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

伊藤詩織、虚偽告訴等で書類送検されていた:山口敬之が告訴

伊藤詩織書類送検

伊藤詩織氏が書類送検されていたことがわかりました。

山口敬之が伊藤詩織を虚偽告訴等で告訴していた

 

山口敬之氏のFacebook投稿を見ると、罪状は「虚偽告訴」と「名誉毀損」てあるとしています。これは「性犯罪被害の刑事告訴」と「デートレイプドラッグ」に関する主張に対してであるということでした。

2019年6月に告訴状を警察に提出し、同年7月に受理、され、2020年9月28日に書類送検したことの連絡を警視庁から受けた、とのことでした。

なお、この間、告訴をしたことや告訴状が受理されたことは山口氏のFacebookでは投稿されていません。Twitterでは匿名アカウントが2019年8月の段階でこの事実を伝える投稿があったので、別の媒体で発信していたようです。

伊藤詩織の書類送検

山口 敬之 - 【伊藤詩織氏の書類送検について】... | Facebook魚拓

ー省略ー

警視庁は告訴状を精査した上で、私から3回にわたって聞き取りを行い、伊藤詩織氏の言動には捜査するだけの疑いがあると判断し、告訴状は昨年7月に正式に受理されました。

これについて先日警視庁より「今年9/28に書類送検した」という連絡を受けました。

伊藤詩織氏自身も、容疑者として取り調べを受けた事を先日認めています。

ですから伊藤詩織氏は、マスコミのルールに従えば、「被疑者」「容疑者」と呼ぶのが正しい。

ー省略ー

 

伊藤詩織氏が書類送検されたのは受理されてから1年以上経過した今年の9月28日のようです。伊藤側も「取り調べを受けた事を認めている」ということですが、警察による取り調べなのか検察によるものなのかは判然としません。

告訴状の受理と書類送検

刑事訴訟法

第二百四十二条 司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。

第二百四十六条 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。

「書類送検」というのはこのことを言っています。

「逮捕」や「起訴」とは結び付かない言葉であり、それだけで何らかの刑事処分が行われたという話ではありません。

「告訴又は告発を受けたときは、速やかに」とありますが、これは「捜査をした後に」という趣旨なのか、捜査をする義務があるのかについては何も語っていません。

告訴受理の義務については犯罪捜査規範にも記述されています。

犯罪捜査規範

(告訴、告発および自首の受理)
第六十三条 司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。

ただ、実際には記載事実が不明確なもの、記載事実が特定されないもの、記載内容から犯罪が成立しないことが明白なもの、事件に公訴時効が成立しているもの等の場合には、告訴状が返戻されるということもあります。

「被疑者」「容疑者」という呼称

山口氏は「書類送検されたので、マスコミのルールに従えば伊藤氏は「被疑者」「容疑者」と呼ぶのが正しい」と言っていますが、これは疑問です。

被疑者」は刑事訴訟法上の用語であり、逮捕されるほどの犯罪の蓋然性がなくとも、捜査機関から犯罪の犯人の疑いがあるとされる者(であり、且つ、起訴されていない者)に対して使われる用語です。起訴されれば「被告人」となります。

容疑者」の方がマスコミ用語です。マスコミルールとしては逮捕された場合にこの用語を用いますが、飯塚幸三などの場合にはこの用語を使っていないように、基本的に逮捕されていない者には使っていません。

逮捕されていないのに「容疑者」の語が使われる場合は、逃走していて身元が掴めていない場合や指名手配されているような場合であると思われます(※このあたりは注意が必要、海外報道の場合には若干扱いが異なる可能性も)

伊藤氏の場合にはそういうことはありませんので、「容疑者」という用語を用いることは通常は控えられるというのが実態のはずです。

以上