事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

自動車のペダル・アクセルとブレーキ踏み間違い事故は若年層が最多なのか

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https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201905/0012340798.shtml

神戸新聞の記事で操作ミスによる事故について統計を参照したものがありました。

この記事の読み方と趣旨については誤解が生まれそうなので整理します。

自動車のペダル踏み間違い事故、若年層が最多

車のペダル踏み間違い事故10年で6万件、450人死亡 若年層が最多(神戸新聞NEXT) - Yahoo!ニュース

神戸新聞NEXT|総合|車のペダル踏み間違い事故10年で6万件、450人死亡 若年層が最多

警察庁や県警によると08~17年、アクセルとブレーキの操作ミスによる事故で全国では年間約6千~約9千人が負傷し、27~60人が死亡した。県内は183~447人で、12年を除き死者は1~6人だった。

 誤操作した運転手の年代をみると、実は10~20代が1万6188人(26・9%)で最も多く、次いで70歳以上の1万4623人(24・3%)。県内では70歳以上が541人(25・4%)で最多だが、10~20代も530人(24・9%)でほぼ並ぶ。

この記事を読んで、以下のように思った人もいるのではないでしょうか。

「10代+20代」と「70代+80代+90代~」では、他の年代よりも母数が多いと思われ、事故件数が多くなるのは当たり前では!?

じつは、これはそうではありません。

運転免許保有者数の年齢別統計

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警察庁 運転免許統計平成30年版

10代+20代は1103万6059人、70歳以上は1129万6951人です。

しかし、それ以外の年齢層は1300万人以上の構成比となっています。

運転免許保有者数は少ないにもかかわらず、「若者」と「高齢者」の事故件数が多い、という特徴が浮き彫りになってくるのです。

よって、このような年齢構成で比較をすることは何らおかしなことではありません。

次に疑問に思うのは「事故件数」ではなく「事故率」はどうなっているのか?という点でしょう。

交通事故総合分析センター(イタルダ)の操作不適事故の分析では高齢者が最多

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交通事故総合分析センター:http://www.itarda.or.jp/itardainfomation/info86.pdf

交通事故総合分析センター(ITARDA)の資料です。

その中で、「操作不適」事故の「割合」について、年齢層別に表したのが上図です。

「24歳以下」と「75歳以上」は一括り、それ以外は10年単位で構成。

このデータの場合は「75歳以上」が最も事故率が多く、次いで24歳以下の事故率が多いという結果になります。

これも、神戸新聞が間違っているのか?というと、そんなことはありません。

神戸新聞NEXTの記事の趣旨はアクセルとブレーキの踏み間違い等への注意喚起

神戸新聞の記事は交通事故数が多い事象を取り上げて、そこに表れた特徴から、アクセルとブレーキの踏み間違いなどの操作ミスについての注意喚起につなげるために書かれています。

決して「若者と高齢者のどちらが事故を起こしやすいか」という視点ではありません。

もっとも、望ましいのは事故「率」も含めて情報を提示することですし、母集団の数は適正だということが分かるようにしてほしいとは思います。

非常にざっくりとした括りとして、「若者」と「高齢者」が事故を起こしやすいのは周知の事実であり、その原因も分かってきています。

ですから、読者としては、それぞれの年代ごとに気を付けるべきことを認識すればそれで良いのではないでしょうか。

まとめ:若者・高齢者論争はやめないか

統計は切り口によっていろんな見方、評価の仕方ができてしまいます。

交通事故統計は、類型的な事故の特徴を把握した上での「注意喚起」が目的です。

決して誰かを危険視したり、貶めたりするために使われているのではありません。

「若者  vs 高齢者」のような対立構造を作るのではなく、他山の石として自分や身近な人が加害者にならないように気を付けることが神戸新聞やその他の統計データを読んだ者に求められるのではないでしょうか。

私も高齢者や若者の運転する車に同乗する事があるので、単に「ある年齢層は危険」と認識するところから進んで、より安全な運転をするように仕向ける方法を模索していこうと思います。

以上