事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します

交通事故と走行距離・走行時間の関係:若者と高齢者の事故率統計における意味

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年代別の交通事故率について記事を書いたら以下のコメントが散見されました。

「走行距離や走行時間あたりの事故率を見ないと意味ないよ」

「若者は仕事で走行距離が長いんだから単純比較するのはフェアじゃない」

でも、それって意味あるんでしょうか?

交通事故と「個人の」走行距離・走行時間の関係の統計

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平成30年中の交通事故の発生状況

警察庁 統計表のページに交通事故の統計がまとまっています。

  • 交通事故一般については、10代、20代の方が他の年代に比べて事故率が高い(上図)
  • 死亡事故率については、10代と80歳以上の高齢者が突出して高く、75~79歳、20~24歳が続く

結論としてはこのような結果が読み取れます。

しかし、交通事故と個人の走行距離・時間との関係について述べた統計はありません

そんなことをしても無意味ですからね。

走行距離が長ければ事故率が高いなら北海道はどうなる?

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平成30年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について

都道府県別の人口10万人当たりの事故件数(つまり事故率)と事故件数のデータ。

これを見る限り、広大な土地を誇る北海道事故率は決して高くありません。

厳密に測定しているわけではないのですが、北海道は走行距離が長くなるはずですから、この結果は走行距離の長短と事故率は影響しないということを示唆していると言えるでしょう。

むしろ、道路事情や地域特性が大きな因子だというこということが言えます。

静岡・佐賀・宮崎・群馬の事故発生件数の存在感が大きいのが分かります。

運転距離・運転時間を問題視する者へ:本質は疲労

「走行距離や走行時間が多いと事故率が高くなる」と考えている人は

『走行距離や走行時間が多いと疲労する』ということを前提にしているハズです。

だから本質は『(眠気含む)疲労状態での運転』であって「走行距離等」ではない。

日常生活で疲労していたなら、走行距離が短くても事故は起こりやすくなりますよね?

ですから、運転にかかった距離・時間のみを取り上げても意味がないのです。

飛行機や電車は個人毎の走行距離・走行時間のデータを取っているが

自動車の機構や部品が原因の事故であれば走行距離や走行時間そのものに意味がありますが、運転者に焦点を当てた話ではそれ自体は意味を成しません。

「飛行機や電車は走行距離等のデータを取ってるから自動車もそうするべきだ」

という人が居ますが、飛行機や電車の場合には1運行あたりの正確なデータが取れますが、自動車の場合には一般人の行動も含まれ、データ収集は困難でしょう。

データ採れって言ってる人は、人にチップ埋め込んですべてを管理するディストピアを目指してるんでしょうか?

若者・高齢者の比較で走行距離等を因子に加える意味

また、仮に年代別の比較において「若者は走行距離等が長いから事故を起こしやすい」と言えるとします。

その場合に「だから高齢者よりも事故率が高いわけではない」というような比較評価をするのは、単に高齢者の運転に嫌悪感を持つ者による自己論理の正当化に過ぎないでしょう。

その論理を持ち出したら、逆に「若者は運転を多くするから若者の運転は危険だ」ということになりますし、「だったら若者の運転を減らすべきだ」という方向の議論になってしまうんじゃないでしょうか。

先述の通り、走行距離等が運転に影響を与える本質は「疲労」なのですから、それを分析の因子に加えてしまうと、現役世代は働いていて疲れているから事故を起こしやすい、ということも言えてしまうのです。

でも、そういう方向の分析はおかしいですよね?

若者に限らず全ドライバーがこまめに休息を取るなどして気をつけるべき話でしょう。

社会全体の走行距離と事故率の統計について

多くの人が勘違いしてそうなこととして

【社会全体における事故率と走行距離との関係】

についての統計から、走行距離を分析因子に加えるべきと考えてる人が居るんじゃないでしょうか?たとえば以下のようなデータです。

自動車運送事業に係る交通事故要因分析検討会報告書(平成24年度)

http://nissintaxi.co.jp/25hp_pdf/20nen10mankir.pdf

この場合の「走行距離」は「世の中で使用される自動車の台数が増え」たり、「高速道路の延伸等で「交通の便が良くなった」場合に増えることになります。

このような分析をしている資料の中で、確かに「走行距離が増えたため、事故が増えた」のような記述がある場合があります。

これは非常にマクロな視点から分析しているものであって、年代別の個人の走行距離と事故率や事故原因とは連動しない性質の統計データです。

まとめ

  1. 走行距離等が長いと事故率が上がるなら、北海道の事故率が他の自治体より高くないのは辻褄が合わない
  2. 走行距離等が長いことが運転に影響を与えることの本質は「疲労が蓄積すること」
  3. 疲労は運転しない日常生活においても溜まる
  4. よって、走行距離等を年代別の事故率比較のために見ることは意味がない

交通事故はいつでも起こり得ます。

走行距離が100メートルでも走行時間が1分でも、ほんの不注意で事故が起きます。

もちろん、走行距離や走行時間について、特定の事故原因の分析において使わない、ということではありません。

あくまで年代別の事故率の比較において意味のある因子かという視点でのみの話です。

また、たとえば年代別の事故率と社会的コストを考える際に走行距離等を考慮することも、否定しているわけではありません。

以上