青山繁晴参議院議員が2017年1月12日から21日まで、「大雅堂」にて【現代アートに挑戦する青山繁晴展】を開いた際に、アート作品に値が付けられて販売されていたことが極一部のネット界隈で問題視されています。
どうやら切り取り・印象操作が行われているようなので、情報を整理します。
- 「ブルーリボンバッジを販売した」?
- ブルーリボンバッジのアートに値段を付けて販売するのはけしからん?
- 政治家の寄附行為として公職選挙法違反?
- 自己のアートを画廊に「提供」することは寄附になるのか
- 大雅堂は作品の譲渡を受けておらず、法的には直接販売していたのか?
- まとめ:違法ではないと思う
「ブルーリボンバッジを販売した」?
こちらは実際のアート展の写真ですが、確かにこのブルーのものについて、「ブルーリボンバッジ」と呼んでいる者は、当時の青山さんのブログのコメントにいくつもありました。
これが実際に展示されていたことについてはこちらの動画を参照:青山繁晴 個展「現代アートに挑戦する青山繁晴展」(本人解説あり)2017/01/12@京都・大雅堂 - YouTube
縁のシルバーが角度を変えると見え方が変わることから絵であるようには見えません。
ブルーリボンバッジのアートに値段を付けて販売するのはけしからん?
★たいせつな追加 ( 先ほどのエントリー「きのう、今朝、この昼と午後、今夜、あした」に補足 )|青山繁晴の道すがらエッセイ/On the Road
(値付けは、画廊の担当責任者と、青山千春博士が協議して決めました。今後も開催ができるようにするためです。ぼくらは利益を目的としていません。ぼく自身は値付けに一切、タッチしていません)
虎ノ門ニュースでも青山議員本人が値段設定に関わったことは無いと言っていました。
では、ブルーリボンバッジという拉致被害者奪還の意志を表明するためのものを、元の値段以上で販売するという行為の正当性はどうでしょうか?
実際に買った方が、青山さんのブログに書き込んでいます。
サイン|青山繁晴の道すがらエッセイ/On the Road:魚拓はこちら。
あなたに会えてよかった。【風街Kobeより】
ー省略ーただ一点、どうしても気になって頭から離れない作品がありました。
「拉致事件’17」です。
描きかけ?なのか未完成な朱色の「蘇」の字の上にブルーリボンバッチ。そうか、拉致事件が解決してないから未完成なのか。
早く完成した「蘇」になればいいな。
とその時は軽い気持ちで大雅堂を後にしました。ところが
大雅堂を後にしてチョコの美味しい店に行っても
チョコの美味しさが半分にしか感じないくらいあの「蘇」の作品のことが
気になって仕方ないのです。その気持ちは月曜になっても火曜になっても寝ても覚めても
気になって冷めてゆくどころかますます強くなっていきました。17日に仲間のご夫婦が大雅堂さんを再訪したので
あの「蘇」の作品がまだ売約されてないか確認したところ
夕方の時点でまだ売約されてないとのことでしたので
立て替えて買っておきましょうか?の親身なご提案を
「明日、私が行ってまだあったならば縁を感じて買います。」とお断りをしました。18日の昼に大雅堂に行くとまだそれはありました。
大雅堂の方は15日に行った私の顔を覚えててくださってて、
どうしても頭から離れないからと購入の意向を伝えると
「これはもっと早く売れると思っていたんです。なぜ残っているのか?
きっと貴男に買って頂くものだったんでしょう。」と。。。その後、青山さんが来られあの作品の解説をお聞きした途端に
正直言って購入したことを一旦、後悔しました。
なぜなら
私が思ってた以上のあの作品への青山さんの重い重い覚悟と想いを
知ってしまったからです。サインを頂くのに並んでいると私の前の方へのサインが
目に飛び込んできました。
「祖国は甦る」
蘇るではなく、甦る。
そうだ、青山さんはいつも「祖国は甦る」と言う。
じゃぁ「蘇る」っていうのは。。。。青山さんに『ぼくらの哲学』に「脱」のサインを頂く順番になった際、
まっさきに出た私の言葉が
「とんでもないものを買わせて頂くことになりました。」でした。青山さんの
「あの作品が最後まで残ってたらショックで。
拉致被害者の方々に申し訳ない。
IDCの方に買って頂けて本当に嬉しいです。」
の言葉で先程までの一旦の後悔はばっと晴れたのです!
言うまでもなく、青山さんのブログは本人が何度となく「全部見て公開・非公開を判断」していると言っています。よって、このコメントは青山さんから見て致命的な事実誤認は無いということでしょう。
そして、青山さんが値段をつけていないものの、売れることを期待していたということが伺えます。
気になるのは青山さんがどういう解説をしたのかということ。
芸術作品の解説を本人が展示の場でするというのはかなり異例だなとは思います。
これはなかなか判断が難しいですね。
青山さんと画廊との契約内容がどうなっていたのか、正直わかりません。
画廊の大雅堂側(青山千春博士もですが)による値付けについては口を出さないことになっていたのかもしれませんし、アート作品の全てに値段をつけることが決まっていたなら、ブルーリボンバッジのアートのみの値付けの撤回を求めるのは均衡を欠くと判断したのかもしれません。
青山さんがこの作品に込めた想いがどういうものか、知る由もありませんが、個人的には、ブルーリボンバッジという国民全員のメッセージが込められた物に対して、個人が追加的な意味合いを付加して値段を上乗せして販売するというのは避けるべきだったと思います。
政治家の寄附行為として公職選挙法違反?
さらに、公職選挙法では、公職者による選挙区内の方への寄附が禁止されているところ、青山さんが作品を画廊に「提供した」ことがこれに抵触するのではないか?という疑念を持つ者も居ました。
アート作品の提供については事案を伏せて総務省に確認しましたが、明確な判断は得られませんでした。総務省には、「寄附」に関連する条文について確認したのみに終わりました。
公職にある者の寄附の制限については公職選挙法199条の2に規定されています。
(公職の候補者等の寄附の禁止)
第百九十九条の二 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域。以下この条において同じ。)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。ただし、政党その他の政治団体若しくはその支部又は当該公職の候補者等の親族に対してする場合及び当該公職の候補者等が専ら政治上の主義又は施策を普及するために行う講習会その他の政治教育のための集会(参加者に対して饗きよう応接待(通常用いられる程度の食事の提供を除く。)が行われるようなもの、当該選挙区外において行われるもの及び第百九十九条の五第四項各号の区分による当該選挙ごとに当該各号に定める期間内に行われるものを除く。以下この条において同じ。)に関し必要やむを得ない実費の補償(食事についての実費の補償を除く。以下この条において同じ。)としてする場合は、この限りでない。
まず、青山さんは参議院の比例区選出の議員です。
ですので、日本全国において、寄附が禁止されます。
アート展は青山さん個人の名において、現代アートを展示する目的で一般に対して公開されたものですから、但書きに該当するような事情もありません。
すると、残る問題は「寄附」に該当するのか?ということになります。
自己のアートを画廊に「提供」することは寄附になるのか
公職選挙法で禁止されている「寄附」とは以下のようなものです。
(収入、寄附及び支出の定義)
第百七十九条 この法律において「収入」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の収受、その収受の承諾又は約束をいう。
2 この法律において「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のものをいう。
3 この法律において「支出」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束をいう。
4 前三項の金銭、物品その他の財産上の利益には、花輪、供花、香典又は祝儀として供与され、又は交付されるものその他これらに類するものを含むものとする。
青山さんと大雅堂との間でどのような契約が交わされたのか、分かりません。
ただ、青山さんのブログに、「作品提供」の法的性質を示唆する記述があります。
★たいせつな追加 ( 先ほどのエントリー「きのう、今朝、この昼と午後、今夜、あした」に補足 )|青山繁晴の道すがらエッセイ/On the Road
画廊からの連絡によると、朝のオープンと同時に、どっと沢山の方が来られているそうです。
おそらくご存じなのでしょう。大半の作品が、今日を限りに見られなくなることを。
ぼくは75点の作品を出しました。
そのうち7割以上が、すでに個人によって購入されています。(値付けは、画廊の担当責任者と、青山千春博士が協議して決めました。今後も開催ができるようにするためです。ぼくらは利益を目的としていません。ぼく自身は値付けに一切、タッチしていません)
すなわち、多くの作品は今日の午後6時を過ぎると、個人蔵になります。
特別の事情などがない限り、一般には二度と公開されません。
ぼく自身も、見ることはできなくなります。ぼく自身は、本であっても、完成した瞬間から読者の手で別の生きものとして新しく生きると考えていますから、現代アート作品や、水彩抽象画などについても同じ考えです。
だから、自作との別れをあらかじめ受容しています。
「個人蔵」とはどういう意味でしょうか?
美術家が説明しているものを見つけました。
「個人蔵」は法人(美術館や病院等)以外の個人のお客様の手に渡った作品を意味します。
— 岡靖知(画集発売中) (@yasutomooka) March 7, 2018
作家自身が保有する場合は「作家蔵」と明記されます。
僕の場合は複製は作らないですね。似たような構図は少量ありますが、基本一点ものとなります。
「作家蔵」とは異なるものですし、本人も見ることができないと言っているのですから、所有権は青山さんには無いのでしょう。
とにかく、アート作品の扱いがどうなってるのか判然としません。
青山さんからアートが「無償で大雅堂に譲渡された」(つまり所有権が大雅堂に移った)のちに個人が購入したのか?
この場合には「青山さんが作成したアート作品は、寄附が禁止されているモノにあたるのか?」という問題になります。
または、青山さんは作品を出展する、大雅堂はそれをコーディネートして展示する。そのような関係において、何らかの債務の履行として大雅堂へ一旦は提供されたのかもしれません。
大雅堂は作品の譲渡を受けておらず、法的には直接販売していたのか?
それとも青山さんに所有権は残ったままで大雅堂は単に展示方法をコーディネートしただけであり、直接青山さんから個人へ売買により所有権が移ったという性質のものなのでしょうか?
ちなみに、公職の者が自分の持ち物を売却してはいけないという規定はありません。
そんなことをしたらブックオフに本を売るということもできません。
(国会議員がブックオフというのもそれはそれでなんかいやですが…)
ですからその場合には公職選挙法上の「寄附」にはあたらないということになります。
この場合は売れ残った作品は青山さんの手元に返還されたはずですが、どうなんでしょう?ちょっと可能性としては薄い気がします。
まとめ:違法ではないと思う
青山さんのアート作品群が「無償で大雅堂に譲渡された」としても、それが禁止されている寄附に当たるのかどうかは不明です。
青山さんの発言からは、アート作品はいったん大雅堂に譲渡されているように思います。
ただ、その場合であってもアート作品を展示するという、いわば債務を大雅堂が負っているようなものであって、公職選挙法が禁止しているような、相手方が単純に寄附を受けて利益を得るような状況とは一線を画している気がします。
私としては、これは違法でもなんでもないと思います。
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