言葉の意味の捏造までするか。
- 「女史」が差別用語だという言説
- 1:有馬哲夫教授がAimy Stanley女史と投稿
- 2:Amy Stanleyエイミースタンレーが「女史」はダメと主張
- 3:David Ambarasデイビッドアンバラスが共同通信ハンドブックを引用
- 4:茶谷さやかなど他のラムザイヤー批判者が『「女史」は差別』と捏造
- 5:有馬教授への誹謗中傷、『「女史」は差別』の捏造に加担する日本人大学界隈
- 共同通信や朝日新聞ですら現在も敬称として使っている「女史」
- 業界どころか一社内でのルールに過ぎないものを日本社会の用語法として扱う愚
- まとめ:『「女史」という言葉が使われていたら差別用語だ』は捏造:ラムザイヤー論文を批判する能力はあるのか?
「女史」が差別用語だという言説
- 有馬哲夫教授(早稲田大学)が「Aimy Stanley女史」と投稿
- Aimy Stanleyが「女史」を使うのは不可能だ、と投稿
- David Ambarasや茶谷さやかが「女史」は差別表現だと投稿
- 他の日本人学者らが「女史はメディアでも使われていない」と投稿
「女史」が差別用語だという言説はこうした感じで広がりました。
2021年9月中旬以降の話です。
1:有馬哲夫教授がAimy Stanley女史と投稿
反ラムザイヤー派の論客Aimy Stanley女史は日本語が読めないことが判明しました。かなもダメだそうです。ということは内務省通達も陸軍通達もその他ラムザイヤー氏が註にあげた日本語文献は読めないことになります。 https://t.co/4KX34O7tvD
— 有馬哲夫 (@TetsuoArima) 2021年9月22日
話の発端は有馬哲夫教授(早稲田大学)がAimy Stanley女史と投稿したこと。
なぜかこれが「女性差別だ」とされました。
この話の前提があるのですが、「慰安婦は合意契約」だったとする経済学の論文を書いたマーク・ラムザイヤー氏への誹謗中傷が酷いので反対者の論を見ていったら論文の註にある慰安婦の契約書を無視している実態などを有馬哲夫教授が指摘。
それについて、ある一つのラムザイヤー批判文書の筆頭著者である歴史学者のエイミースタンレー氏が全く無視した上、Twitterで日本語が読めないと書いていました。
ラムザイヤー論文批判者のエイミースタンリー漢字読めずカナでも日本語読めないと曝露:慰安婦契約書も存在
スタンリーと申しますが、本当ですよ。歴史学部の教授です。普段は大学のページがすぐ出ますから、なんで見つけられなかったか分かりません。どうぞ。 pic.twitter.com/huG9CyE2Zv
— Amy Stanley (@astanley711) 2021年10月5日
したがって「日本語が読めない」という指摘は、彼女がきちんと史料を読まずに他者の論文を批判している点で学術上の不正行為である、という文脈で問われているものであり、単なる能力の揶揄ではないということ。
それすら「女性に対するハラスメントだ」などと言われていました。
2:Amy Stanleyエイミースタンレーが「女史」はダメと主張
有馬先生、私のcvをご覧ください。ここです。ノスウェスタン大学で日本史を教えている教授が本当にカナさえ読めないと思っていらっしゃいますか?「女史」でも不可能でしょう。 pic.twitter.com/Xfb9SnoXhN
— Amy Stanley (@astanley711) 2021年9月22日
「氏」と呼ばれても構いません。「女史」は問題です。
— Amy Stanley (@astanley711) 2021年10月22日
To clarify, he called me 女史 (not 氏) in a previous tweet. 女史 is absolutely not the standard way to address a university professor in Japanese. It does not, for example, appear in contemporary scholarly articles in reference to women academics. More: https://t.co/HhYOK5oAjm
— Amy Stanley (@astanley711) 2021年10月22日
You can argue about whether it’s *ever* appropriate to call a woman 女史 - Japanese style handbooks now say it is discriminatory language, even though it was acceptable in the past. But in any case, it is not standard in contemporary Japanese and using it makes a statement.
— Amy Stanley (@astanley711) 2021年10月22日
「自分は教授だから教授と呼べ」と言っている時点で権威主義的ですし相手に対して呼称を強要する傲慢な態度なのですが、さらに「女史」はアウトであるという主張。
『「女史」が差別用語だ』という言説は、全てはこの主張を正当化するための捏造だったわけです。
Japanese style handbooks=「日本式のハンドブック」とはいったい何を指すのか不明ですが、以下で示すように、どうやら共同通信の記者ハンドブックのようです。
3:David Ambarasデイビッドアンバラスが共同通信ハンドブックを引用
「女史」has been considered a sexually discriminatory term for decades. If you're nostalgic for the days of Shōwa colonialism and Japanese-speaking comfort women, maybe you think it's a fine term. Or, you're just a pig making excuses for harassing @astanley711 1/2
— David Ambaras (@dambaras) 2021年10月22日
Trolls are so upset about their hero being called out re 「女史」that they went and edited the wiki entry. Here's an archived version. https://t.co/qwtvGqOJSM pic.twitter.com/KfS7NYRpmR
— David Ambaras (@dambaras) 2021年10月23日
Oh, and here's the Kyōdō Tsūshinsha reporters' handbook 9th edition, including 「女史」in its discussion of discriminatory or unpleasant terms. Where did I find this document? On the website of the Japanese govt's Gender Equality Bureau (男女共同参画局). https://t.co/IPCYxGCAm5 pic.twitter.com/ThqObSIaPZ
— David Ambaras (@dambaras) 2021年10月23日
https://archive.md/6t5K9 https://archive.md/IQwDv https://archive.md/LunJE
David Ambarasデイビッドアンバラスというアジア史を教える者。
彼もまた従前からのラムザイヤー論文批判者です。
共同通信の「記者ハンドブック」を引用して「女史は性差別用語だ」と主張。
アンバラスについては別途、私が直接やりとりをしている中でストローマン論法をも使った卑怯な投稿をしていたのでまとめます。
追記:多方面から指摘を受けても捏造を止めないアンバラス氏の態度について。
4:茶谷さやかなど他のラムザイヤー批判者が『「女史」は差別』と捏造
ちなみに、「女史」は性差別の例としてあげられるほどの差別表現として、記者ハンドブックに挙げられています。 pic.twitter.com/5tKEQaGt24
— Sayaka Chatani (@SayakaChatani) 2021年10月23日
…. and tweet a link to that (his criticisms of your scholarship).
— Robert Geller (@rjgeller) 2021年10月22日
I don’t think referring to you as 氏 is in any way disrespectful; that’s ubiquitous here. (教授 is a job title=職名, not an honorific.) His second reference to you should be 同氏, not 彼女 though. 2/
他、茶谷さやかなど他のラムザイヤー批判者が『「女史」は差別表現』と捏造。
5:有馬教授への誹謗中傷、『「女史」は差別』の捏造に加担する日本人大学界隈
女史は敬称のつもりかもしれませんが、男性を標準とし、女性を例外、下位、特殊とし、対語のない女性差別表現の一つです。『きっと変えられる性差別語』でも不均衡な扱いは差別となること例示しました。当初使われてましたが批判を受けてメディアではガイドラインができそれに即して使われていません。 https://t.co/7fvKgjmlCC
— 斉藤正美 (@msmsaito) 2021年10月23日
富山大学・非常勤講師(社会学・ジェンダー論)の斉藤正美。
ジェンダーと言語をご専門とする斉藤正美さんの「女史」という言葉の解説。女性差別表現の一つであり、もうメディアでは使われていない。 https://t.co/h3GtSebDCM
— 山口智美 (@yamtom) 2021年10月23日
モンタナ州立大学社会学・人類学部の准教授の山口智美。
共同通信や朝日新聞ですら現在も敬称として使っている「女史」
エイミーステンリ―やデイビッドアンバラスは共同通信の記事を確認したのだろうか?
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2021年10月24日
確認するのは簡単です。「site:https://t.co/2OKqEaoW7I "女史"」「site:https://t.co/kkXGuRaUEG "女史"」などで検索すればいいわけです。
すると、2010年代でもわんさかと「女史」を使ってるのが見つかるでしょう
※共同通信は"this.kiji.is"というURLを使用していたがグループ企業であるノアドット株式会社のドメイン名 nordot.appに移管しているため、検索であまりヒットしなくなっている(nordot.app上の他の配信社の記事がヒットしたりする)が、それでも以下のように見つかる。
https://imagelink.kyodonews.jp/detail?id=3406728
https://prw.kyodonews.jp/prwfile/release/M000010/200507251175/_prw_open.html
https://prw.kyodonews.jp/prwfile/prdata/0010/release/200406030810/index.html
レティシア・カスタ女史とLa Maison Cointreauが「コアントロー・クリエイティブクルー」を発足 | Maison Cointreau のプレスリリース | 共同通信PRワイヤー
https://archive.md/B2Kj7 https://archive.md/aR05T https://archive.md/OmFIC https://archive.md/vh2rM
プレスリリース/ニュースリリースを配信するページでも2000年代以降も普通に「女史」が使われています。
ビジネス界隈では当たり前に使われ、その文面の掲載を共同通信が容認しているということです。
47Newsだと複数の記事が見つかります。以下は一例。
LPGAツアー、新コミッショナーはプリンストン大のモリー・マーコックス・サマン女史に(魚拓)
朝日新聞の例は以下がその一例。
https://archive.md/KfyB2 https://archive.md/e6b4R https://archive.md/9z9W2
上から2012年、2009年、2019年の記事です。
歴史的人物に限らず、存命で現役で活躍している人物に対して敬称として、主に業績のある方に対して「女史」使用しているのが分かります。
他、NHKであっても同様に使用しているのがわかります。
業界どころか一社内でのルールに過ぎないものを日本社会の用語法として扱う愚
「女史」という言葉についての現状
— Ninigi_Yata (@Ninigi_Yata) 2021年10月23日
[参照]
文化審議会国語分科会
令和3(2021)年3月12日
新しい「公用文作成の要領」にむけて(報告)
「女史」は必ずしも差別ではないが、文脈を考えるというのが文化庁の見解です。下記を参照してください。https://t.co/LasWjI4Z8g pic.twitter.com/Xy3mAtPvj0
学術論文でも2010年代以降も「女史」という言葉が使用されている場合は多い。
「《未知の部屋への扉》としての箱庭療法:シグリット・レーヴェン女史とのインタビュー」など、現役の学会理事長へのインタビューを報告した2018年の寄稿文もある。
新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)令和3年3月 12 日 文化審議会国語分科会
文化審議会国語分科会令和3年3月12日報告書ではこのように書かれているが、直ちに偏見や差別につながる表現としているのではなく「文脈に配慮するように」という意味。
情報を伝える上で性別を示す必要がある場合とは、その功績の性質上、性別が重要な要素である場合などが考えられますが、「必要がなければ記載してはいけない」という書き方ではない。
また、「男性側に対応する語が無い」からといって必ずしも使用することが避けられるべきという話だとすると、おかしい。
たとえば「怪童」や「怪物」など、主に男性アスリートを指して能力の高さを示す用語があるが、女性に対してはこうした用語法は無い。
そういった一律の基準を示しているのではなく、「使用方法に注意しましょう」という注意喚起として受け取るべき内容。
共同通信の「記者ハンドブック」もそういう趣旨だろう。だからこそ共同通信の名を冠するHP上でも「女史」が当たり前に出てくるわけです。
※ハンドブックには「一般的に」差別表現とするのが不適当と思われる用語が複数みられるが、そうではなく一部の者から差別表現と捉えられてしまう危険のあるものとして記者と社を守る知恵であろう。
結局、彼らは①業界どころか共同通信という一社内での注意事項に過ぎないものについて(一応の業界ルールを定めていると言われることもあるが全く徹底されていないのがわかる)、②同社ですら使っている用語であることから絶対禁止事項として理解することは出来ないものについて絶対禁止事項として理解し、③日本社会全体で確立した用語法として扱う、という愚を犯しているわけです。
まとめ:『「女史」という言葉が使われていたら差別用語だ』は捏造:ラムザイヤー論文を批判する能力はあるのか?
『「女史」という言葉が使われていたら差別用語だ』は捏造でした。
こうした人物らが「ラムザイヤー論文」を否定しているのですが、この程度の確認すら怠る人物らが日本語の史料を膨大に参照した論文を批判する能力はあるのだろうか?
本件は単なる言葉の意味の捏造が行われていたというだけではなく、そうした展開にも繋がる話だという事です。
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