菅直人元総理大臣が在任中の中国漁船船長釈放事件について「指示はしていない」とツイートしてますが、福島原発の海水注入中止も似たような論調であったことを思い出す必要があるでしょう。
- 菅直人「中国漁船船長釈放の指示はしていない」
- 仙谷由人、前原誠司による菅直人総理大臣の指示の証言
- 福島第一原発への海水注入中止も「直接指示はしてない」が
- 武黒フェローらに海水注入中止の意向である態度を取った
- 菅直人こそ「総理の忖度」が問題:メディアはまったく指摘せず
菅直人「中国漁船船長釈放の指示はしていない」
尖閣諸島は我が国固有の領土であり、尖閣諸島をめぐり、解決すべき領有権の問題は存在していない。尖閣中国漁船衝突事案は、中国漁船による公務執行妨害事件として、我が国法令に基づき、厳正かつ粛々と対応したものである。指揮権を行使しておらず、私が釈放を指示したという指摘はあたらない。
— 菅直人(Naoto Kan) (@NaotoKan) 2020年9月8日
当時総理大臣だった菅直人は、「中国漁船の船長釈放の指示はしていない」と主張。
これは前原誠司氏の証言の報道を受けてのことです。
仙谷由人、前原誠司による菅直人総理大臣の指示の証言
2013年の仙谷氏の証言は①菅総理⇒②仙谷官房長官⇒③法務・検察当局というルート
2020年の前原氏の証言は①菅⇒②外務省⇒???⇒③法務・検察当局???というルートが証言されました。
「間に別の人物・機関を介在させた、法的権限の行使ではないから指揮権発動では無くなる」というのは【法の潜脱】以外の何物でもなく、「直接指示はしていない」からといって非難されない事にはなり得ません。
福島第一原発への海水注入中止も「直接指示はしてない」が
菅直人が安倍晋三へ名誉毀損で民事訴訟を提起していた中で、「福島第一原発への海水注入中止指示の有無」が争点になりました。
最高裁第三小法廷平成29年2月21日決定平成28年(オ)第1866号平成28年(受)第2347号
当該争訟の全体をまとめると、「菅直人氏の完全敗訴」です。
具体的には、海水注入中止指示を惹き起こした菅直人氏の間違った判断がなされたこと、菅直人氏側の虚偽公表が認定され、また、安倍晋三氏が虚偽の内容を主張したとは一言も触れられておらず、名誉毀損は不成立とされています。
最高裁は上告受理の申立を受け付けないという決定ですので、中身の話はありません。東京高等裁判所の判決文に、認定された事実関係が載っています。
武黒フェローらに海水注入中止の意向である態度を取った
高裁判決では以下認定されています。控訴人=菅直人総理大臣なので、わかりやすいように以下そのように表記を変更して引用します。
3月12日の時点において、1号機の原子炉を冷却することが最も重要な要請であり、淡水が枯渇した場合にはすみやかに海水を注入する必要があったことから、政府から海水注入の指示を受けた東京電力がその作業を進めていたところ、海水注入の判断について菅直人総理大臣の了解を得ようとして開催された本件会議の席上において、菅直人総理大臣が、その場面では本来問題にする必要のなかった再臨界の可能性を強い口調で問題にしたことから、会議の参加者が菅直人総理大臣は海水注入を了解していないと受け止め、そのため、東京電力も開始した海水注入について中断する旨の誤った決断をしたというのであり、菅直人総理大臣が本件会議において内閣総理大臣としてのある判断を示し、その判断が東京電力による海水注入中断という誤った決断につながったという意味において、菅直人総理大臣の「間違った判断」があったと評価されるのはやむを得ない。したがって、菅直人総理大臣の「間違った判断」があったとする意見・論評の前提となる事実については、その主要な部分について真実と認められるというべきである。
吉田所長に直接電話で海水注入中止の指示をした(実際は吉田所長の判断で中止されなかった)のは武黒フェローと東電本店ですが、その指示につながったのは総理大臣としての菅直人の言動であったということが認定されています。
これは「真実性」が認定されたのであり、「真実相当性の誤信」が認定されたのではありません。
判決文のそれ以前の記述では、より具体的な会議の状況について証言が紹介されています。
菅直人こそ「総理の忖度」が問題:メディアはまったく指摘せず
このように、「菅直人総理大臣」の言動こそが「総理の忖度」が問題視されてしかるべき話であるにもかかわらず、メディアは一部を除いてまったく指摘していません。
安倍総理に対しては森友学園の関連でその点について粘着していたのに。
以上