事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

小泉進次郎のレジ袋・プラスチック用品有料化と海洋プラスチックごみ問題

小泉進次郎、レジ袋有料化、プラスチック

小泉進次郎も大概ですが、歴史修正の匂いがしたので整理して記録に残します。

レジ袋有料化と小泉進次郎・世耕弘成経産大臣・原田義昭環境大臣

小泉進次郎に対してレジ袋・プラスチック用品の有料化と絡めて批判する言説がネット上では大量に溢れていますが、なぜかレジ袋有料化を決定した当時の世耕弘成経産大臣(当時)・原田義昭環境大臣(当時)に対して批判する人が少ないという謎。

小泉進次郎の任命責任として菅総理大臣の責任を問う声もちらほらどころではない。

当然、レジ袋有料化決定当時は安倍晋三内閣。この辺りを簡単にまとめます。

原田義昭環境大臣「レジ袋有料化は私が大臣主導で決定」

「レジ袋の有料化」と私の決意 原田義昭2019年11月03日 12:53

 なお、敢えて言うなら、「レジ袋有料化」は、この私が大臣主導で決定したものです。世界中では何カ国もすでに実行していること、さらにわが国では富山県が先行実施していることを学習した上で、私は、6月3日に記者会見を開いてその方針(「富山県方式」に準拠する旨)を明らかにしたものです。大臣というのは非常に強い権限を持っており、政治的責任を取る覚悟さえあれば、ほぼ何でも決断できる強い立場にあります。強い決意で臨んだこと、それ故にその後もしっかりフォローする責任を持つことを感じたものです。

令和元年(2019年6月3日)の環境大臣臨時会見においてレジ袋有料化報告がなされました。その趣旨・目的については以下。

「レジ袋の有料化」、7月1日から施行 – 原田よしあき | 衆議院議員原田義昭 福岡県第5区(筑紫野市・春日市・大野城市・太宰府市・朝倉市) 公式ホームページ魚拓

 昨年6月4日、私は環境大臣として「レジ袋有料化」の方針を発表した。長年に亘る社会的懸案であったのだが、有料化することで、国民全てにプラスチック使用の抑制とその意識付けになることを狙ったもの。これをどう具体化するかには、消費者対策、業界対策など多くの技術的課題が残された。以降、環境省と経済産業省との検討が進められた。

国民を啓蒙してやる」のが目的だったということはここで初めて語られています。

世耕弘成経産大臣:安倍内閣の海洋プラスチックごみ問題への取り組み

レジ袋有料化は経済産業省が所管であるため、世耕弘成経産大臣もこの制度に絡んでいます。

世耕経済産業大臣の閣議後記者会見の概要 (METI/経済産業省)2019年6月7日(火曜日)

レジ袋の有料化
Q:原田環境大臣がプラスチックのレジ袋の無料配布を禁じる方針を表明されていましてー省略

A:当然、このレジ袋の問題というのは、地球環境への負荷という観点から、しっかり踏み込んだ政策を採っていかなければいけないテーマだというふうに思っています。
ただ、法改正とか新法制定という議論が行われているわけでありますが、経済産業省としては、これは今の容器包装リサイクル法というものに基づいた、これは経済産業省と農林水産省と財務省と厚生労働省が共管をしている省令があるわけであります。

ー中略ー
いずれにしろ、今、プラスチック循環戦略というのが定められているわけであります。

この「プラスチック資源循環戦略」においても、「消費者のライフスタイル変革」が謳われているのが分かります。その先の話として「イノベーションの促進」があるようですが、官製の教条によって主導して人工的に市場の動きを変えようという意識が伝わってきます。

環境省_「プラスチック資源循環戦略」の策定について

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ここでは資源・廃棄物制約、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化、アジア各国による廃棄物の輸入規制に対応するためとありますが、大きな比重を占めるのは海洋プラスチックゴミ問題です。

プラスチック資源循環戦略とG20大阪ブルー・オーシャン・ビジョン

「レジ袋有料化 来年4月から」G20会合で経産相 2019年6月15日 11時57分 NHK

15日から長野県で始まったG20=主要20か国のエネルギーや環境を担当する閣僚の会合で、世耕経済産業大臣はプラスチックごみを削減するためレジ袋の有料化を日本では早ければ来年4月から小売店に義務づける方針を明らかにしました。

海洋プラスチックごみ|外務省

令和元年に開催されたG20大阪サミットにおいて、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」なるものが策定されています。

国際的な動向としてはG7エルマウ・サミット(2015年6月)で問題提起されたのが発端で、安倍晋三内閣総理大臣(当時)も、G7シャルルボワ・サミット(2018年6月)の時から、G20でこれを議題にすると提議していました。

日本学術会議がレジ袋有料化を推進した?

また、「日本学術会議がレジ袋有料化を推進した」として政治家ではなく学者らを批判する向きもあり、以下で状況整理しました。

「レジ袋有料化を日本学術会議が提唱した」はフェイク?⇒S20共同声明の影響を大西元会長が誇っている - 事実を整える

結論としては【「日本学術会議がレジ袋有料化を提唱した」というのは直接的には誤りだが、その遠因であるプラスチックごみ削減の流れを後押しする提唱をしたのは事実で、レジ袋有料化の流れに貢献したことを元会長が誇っている】と言えます。

学術会議の資料において、S20共同声明が安倍総理や原田環境大臣に手交したことが「成果」のように語られています。

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レジ袋有料化は容器包装リサイクル法の省令改正

正式名称は【容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律】

来年7月から全国一律でプラスチック製買物袋の有料化がスタートします (METI/経済産業省)魚拓

省令の正式名称は【小売業に属する事業を行う者の容器包装の使用の合理化による容器包装廃棄物の排出の抑制の促進に関する判断の基準となるべき事項を定める省令の一部を改正する省令】

令和2年(2020年)7月1日から施行されました。

小泉進次郎のレジ袋・プラスチック用品有料化肯定発言と法案化

2020年7月末にプライムニュースに出演した小泉進次郎がレジ袋有料化について「国民の意識を変えるため」という趣旨の発言をしました。

ネットではこれを機に小泉進次郎を批判する話が加速しましたが、既述の通り、原田大臣時代から言われている目的について繰り返しているにすぎません。

ただ、現職大臣として政策を実施・強化していく立場なので、批判することが的外れであるとは思えません。もっと元ネタ(原田・世耕)に意識を向けたらどうか?とは思いますが。

小泉環境大臣「スプーン有料化、マイスプーン持ち歩きが増える」

環境省_小泉大臣記者会見録(令和3年3月9日(火)16:33~17:05 於:環境省第1会議室)

また、昨年はレジ袋の有料化がありましたが、この法律が成立して施行された暁には、レジ袋にとどまらず、例えばコンビニで今お弁当などを買えばスプーンやフォーク、プラスチック、使い捨てプラスチックを使われているものを無料でお客さまにお渡ししている状況にありますが、こういったことも無料で、無条件で、このワンウェイ、使い捨てプラスチックのスプーンやフォークが配られるということもなくなっていく。幅広く動いていく、世の中が変わっていくことになると考えています。詳細は、もちろん法律が成立した暁の、様々な細かいことを決めていく作業がありますが、そういったことに加えて、最後の排出段階においても今までの分別が3種類あったとすると、それが2種類になる。より国民の皆さんには、プラスチックの中での分別が必要なくなる、そういった手間が省けるということもメリットだと思います。日本は既にペットボトルにおいては相当循環型の、資源循環が進んでいますが、これに限らず他のあまねくプラスチックに関しては、そういった資源循環、サーキュラーエコノミーが進んでいくように、この法律の成立に全力を尽くしたいと思います。

「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が閣議決定されました (METI/経済産業省)

コンビニでスプーン有料化検討、小泉環境相「自分で持ち歩く人が増える」 : 政治 : ニュース : 読売新聞

小泉環境大臣はレジ袋にとどまらず、ワンウェイ(使い捨て)プラスチックとしてのカトラリーであるスプーンも無料で配られることを無くす、要するにプラスチック用品の有料化を狙っています。

プラスチック新法案には、「(2)特定プラスチック使用製品の使用の合理化」として、特定プラスチック使用製品(商品販売やサービスの提供に付随して消費者に無償で提供されるプラスチック使用製品)の提供事業者がプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制のために取り組むべき措置に関する判断の基準を策定するとしています。

そのため「マイスプーン持ち歩きが増える」とも指摘していますが、これは衛生面の観点から禁止している職場もあるくらいなので、コロナ禍の最中にこのような方針を有しているというのは理解しがたいです。

もっとも、こうした動きは環境省が令和元年5月に「プラスチック資源循環戦略」を策定した時点で、ある程度は既定路線であると言えます。

彼の発言が問題視されているのは別の観点=海洋プラスチックごみの削減には寄与していないという事実もあるでしょう。

レジ袋やカトラリー削減は海洋プラスチックごみの環境への影響に効果ある?

プラスチックごみ、カトラリー

https://www.env.go.jp/water/marirne_litter/conf/02_02doukou.pdf

プラスチックごみの漂着量ベースで見ると、漁網やロープ等の「漁具」が最も多く、レジ袋=ポリ袋やスプーン=カトラリーの割合は微々たるものです。

にもかかわらず、プラスチック資源循環戦略においても「消費者」に関する言及が多く、「事業者」に対する言及が少ないのはなぜなんでしょうか?

仮に、「ポリ袋やカトラリーは量に比して環境への負荷が大きい」という事実があるなら分かりますが、果たしてそのようなデータはあるのかどうか…

世界の中でゴミを排出しているのは?

https://www.env.go.jp/water/marirne_litter/mpl1-d2.pdf

世界の中でゴミを排出しているのは圧倒的に中国、そして東南アジア諸国だというのが分かります。これについては中国含めて危機感を共有しており、世界的な課題なので、プラスチックごみ削減に取り組むこと自体は正当だと思います。

しかし、なぜレジ袋やカトラリーなのか。

「着手的に手を付けやすいところから」なのか。

「政治的に手を付けやすいところから」という理由なのか。

その後にはより量が多い種類のごみに対する施策も講じる予定なのか。

いかに世界的な海洋プラスチックごみ問題への取組みが背景にあるからといって、雑なように映る施策では、実質増税の狙いがあるんじゃないか?と疑ってしまうわけです。

まとめ:レジ袋有料化・プラスチック用品有料化の経緯と経産省・環境省

  1. 2015年来からの海洋プラスチックごみに関する国際的な取組みと安倍内閣の方針が大きな比重を占めている
  2. レジ袋有料化は原田義昭環境大臣(当時)が推進
  3. レジ袋有料化は経産省所管であるため世耕弘成経産大臣(当時)も推進
  4. 日本学術会議はプラスチックごみ削減の流れを後押しする提唱をしたついでにレジ袋有料化に貢献したと元会長が誇っただけ
  5. 小泉進次郎環境大臣はレジ袋有料化の目的を「国民の意識を変えるため」と発言したが、原田大臣時代から変わっていない。
  6. 小泉進次郎環境大臣はさらにプラスチック用品全般の有料化を検討している
  7. レジ袋有料化や現在言われているプラスチックスプーンなどを削減しても海洋プラスチックごみ削減による環境保護へのインパクトは小さいと考えられている

ざっとこのような経緯です。

小泉進次郎も大概ですが、レジ袋有料化とプラスチックごみ削減のための施策は、それ以前の流れをある程度引きずっているという関係にあるため、小泉進次郎だけにヘイトが集まっているのは意味不明だなと思います。

小泉進次郎を批判するなという趣旨ではなく、小泉進次郎だけを叩いてもそれだけでは意味が無いということです。

もちろん、現職大臣なので、彼を叩くことの意味は確実にありますが、どうもサンドバックというかデコイ化しているきらいがあります。

これは消費税が5%から10%に引き上げることを積極的に推進していたのが麻生太郎議員だったのに、なぜか民主党政権が原因とされている言論状況に似ているなと思ったため、状況整理しました。

以上