「レジ袋有料化を日本学術会議が提唱した」について事実を整理しました。
結論としては【「日本学術会議がレジ袋有料化を提唱した」というのは直接的には誤りだが、その遠因であるプラスチックごみ削減の流れを後押しした提唱したのは事実で、レジ袋有料化の流れに貢献したことを元会長が誇っている】と言えるものでした。
- 東京新聞で大西元会長「きっかけの一つを作った」
- 平成31年3月のS20共同声明「海洋生態系への脅威と海洋環境の保全-特に気候変動及び海洋プラスチックごみについて-」
- S20共同声明がレジ袋有料化の法案についての国会審議に繋がる過程
- プラスチックごみ削減問題の一環でレジ袋有料化へ
東京新聞で大西元会長「きっかけの一つを作った」
「総理は多様性を認め、政策に生かして」 日本学術会議・大西隆元会長が本紙に寄稿 2020年10月8日 06時00分
◆レジ袋有料化も学術会議の提唱がきっかけ
日本学術会議の会員選考で、菅義偉首相が学術会議の新会員候補者のうち6名を任命しなかったことが批判を招いている。筆者は、2011年から17年まで同会議の会長を務めた。学術会議の活動を紹介しつつ、この問題を考えてみる。
微細なプラスチック片が分解されずに海に滞留し、摂取した魚、さらに人に害を及ぼすから、プラスチックの利用を大幅に削減しようというキャンペーンが、レジバッグ有料化やマイバッグ携帯につながった。このきっかけの1つは学術会議が海外の学術会議と手を携えて行った提唱であった。
東京新聞に日本学術会議の元会長である大西隆 氏が寄稿し、「きっかけの一つを作った」と主張していました。
この記事によって「日本学術会議がレジ袋有料化を提唱した」という言説が広まったのですが、記事にあるように「きっかけの1つ」と言っていますから、大西元会長自身が「成果」であると誇っている発言です。
では、「このきっかけ」の「この」とはいったい何でしょうか?
「微細なプラスチック片…というキャンペーン」なのか「レジバッグ有料化や…」なのか?
平成31年3月のS20共同声明「海洋生態系への脅威と海洋環境の保全-特に気候変動及び海洋プラスチックごみについて-」
「海外の学術会議と手を携えて行った提唱」という点から絞り込みをすると、サイエンス20 JAPAN 2019という東京の日本学術会議施設内で日本学術会議主催で開催されたカンファレンスにおいて、平成31年3月6日に採択されたS20共同声明「海洋生態系への脅威と海洋環境の保全-特に気候変動及び海洋プラスチックごみについて-」が該当します。
それ以前のもので同様の声明はないので、これで確定です。
この共同声明内には「レジ袋有料化」は一言も出てきていませんが、プラスチックごみによる海洋汚染の脅威を指摘し、その解消を提言しています。
そして、この提言がレジ袋有料化の「きっかけの一つ」と言えるだけの実質は国会審議において観測可能でした。
なお、「微細なプラスチック片…というキャンペーン」とは、平成31年1月に始まった環境省の「プラスチック・スマート」キャンペーン(魚拓)であり、そこではG20での活動が盛り込まれています。日本学術協会のS20声明はこのキャンペーンの「発足」には影響をしていないことは時系列から明らかですが、その「実施」には影響を与えたと言っても間違いではないハズです。
S20共同声明がレジ袋有料化の法案についての国会審議に繋がる過程
第198回国会 参議院 予算委員会 第11号 平成31年3月18日
○内閣総理大臣(安倍晋三君) このイノベーションには、海洋プラスチックごみ対策を始め、地球規模課題を克服する大きな可能性があります。
本年のS20提言にもありますが、例えば、海で分解される、先ほど申し上げましたような、バイオプラスチックのような素材が量産されれば問題解決に大きく寄与することになります。先般、S20に参加した各国の研究者にも申し上げましたが、革新的なイノベーションを起こすためには世界の英知を結集していく必要があります。G20の議長国として、S20のような世界の科学界と連携しながら、新たな汚染を生み出さない世界の実現を目指してリーダーシップを発揮していく考えであります。
S20共同声明は採択された3月6日に安倍内閣総理大臣に手交されています。
その後の国会審議ではS20提言が安倍総理大臣に海洋プラスチックごみ問題の認識を与え、G20に影響していることが伺えます。
第198回国会 参議院 環境委員会 第3号 平成31年3月14日
○政府参考人(山本昌宏君) お答え申し上げます。
まず、レジ袋有料化義務化ということにつきましては、今、中央環境審議会におきましてプラスチック資源循環戦略の案を議論していただいておりまして、これを今年度中に取りまとめていただくという予定になっておりますが、その中に明示的にこれを取り込んでいるということでございます。
答申をいただいた後でございますが、六月のG20までに政府としてのプラスチック資源循環戦略を策定するということになっておりますので、この策定後、レジ袋有料化義務化だけではなくて、様々なリデュースの対策を含めた戦略に盛り込まれた施策を速やかに実施していけるように検討してまいるということでございます。
同時期にレジ袋有料化の議論がなされていましたが、同年6月のG20大阪サミット後に戦略策定することとなっていたようです。
第200回国会 衆議院 本会議 第2号 令和元年10月7日
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 林幹雄議員にお答えをいたします。
中略
G20大阪サミットでは、貿易について、自由、公正、無差別、透明性、公正な競争条件などの大原則を確認したこと、信頼性のあるデータの自由な流通を確保するための国際的なルールづくりをWTOのもとで推進するため、大阪トラックの開始を、トランプ大統領、習近平主席を始めG20の数多くの首脳の出席を得て宣言したこと、インフラ投資に関して、開放性、透明性、経済性、債務の持続可能性といった原則を、質の高いインフラ投資に関するG20原則として全てのメンバーの承認を得たこと、海洋プラスチックごみによる新たな汚染を二〇五〇年までにゼロにすることを目指す大阪ブルー・オーシャン・ビジョンに一致したことなど、世界の諸課題に団結して取り組んでいくとの力強いメッセージを世界に発信することができました。
その後、 大阪ブルーオーシャンビジョンが策定されたことを受けて、プラスチックごみ対策の一環でレジ袋有料化の制度設計が開始されました。
第200回国会 衆議院 環境委員会 第1号 令和元年11月8日
○小泉国務大臣 省略
そして、生態系や漁業にとっても深刻な問題になっている海洋プラスチックごみ問題については、六月のG20で大阪ブルー・オーシャン・ビジョンとして各国と共有した、二〇五〇年までに追加的汚染ゼロの世界を実現することを目指します。そのために、G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組に基づき、G20各国の具体的アクションを引き出していきます。
中略
国内においては、実効性のあるプラスチック対策を進めていくため、まず、国民に身近なレジ袋の有料化について、来年度の導入に向けて制度設計を進めます。
そして、同年の令和元年12月27日に、令和2年7月1日からのレジ袋有料化が決定されました。
プラスチックごみ削減問題の一環でレジ袋有料化へ
このように、日本学術会議と外国の学術機関の共同声明=S20声明がプラスチックごみ削減の流れを後押ししていたこと、プラスチックごみ削減の動きの一環としてレジ袋有料化の制度が設計されたことは、観測可能な事実であると言えます。
したがって、東京新聞が「レジ袋有料化も学術会議の提唱がきっかけ」と見出しをつけたことや、大西元会長が「この(レジ袋有料化や環境省のキャンペーンの実施)きっかけの1つは学術会議が海外の学術会議と手を携えて行った提唱」と書いたことは、何ら間違いではないということです。
「日本学術会議がレジ袋有料化を提唱した」というのは直接的には誤り(会議としての意思表示は確認できない。個々の会員らの働きかけの有無についてはここでは検討の対象外)と言うべきです。
ただし、大西元会長自身がそのきっかけをつくったことを自慢気に話をしていることから、そのような誤認を生み出したのは大西元会長の責任によるものですし、彼自身そのように思われても何ら問題ないという態度であると言えます。
一部、フェイクニュース媒体が「ファクトチェック」と称して令和2年4月7日の提言を引用していましたが(その誤りを指摘した記事⇒レジ袋学術会議はフェイクニュースなのか|Nathan(ねーさん)|note)、そういう情報のごみも削減していかないといけませんね。
以上