事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

国交省が全ての日本到着国際線の新規予約停止を要請するも修正検討、HPに記載無し:国民の保護義務は無視か

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チャーター機は飛ばさないのだろうか?

 

国交省、全ての日本到着国際線の新規予約停止を要請

日経新聞 日本到着の全ての国際線、新規予約を停止 国交省が要請 2021年12月1日 16:32 (2021年12月1日 16:41更新)

NHK 日本到着の国際線の新規予約停止を要請 12月末まで 国土交通省 2021年12月1日 16時54分

朝日新聞 日本到着の全国際線の新規予約停止を要請 国交省、全ての航空会社に 高木真也2021年12月1日 16時58分

国土交通省は、12月末までの1か月間、日本に到着するすべての国際線で新たな予約を停止するよう航空会社に要請しました。
対象には海外にいる日本人も含まれていて、予約を取っていない日本人が事実上、帰国できなくなることについて国土交通省は「緊急避難的な予防措置だ」と説明しています。

朝日新聞によれば「要請は先月29日付だ。国土交通省は、年末年始に帰省する人などの予約が増えることが見込まれたためだという」とあるところ、日経新聞では「1日までに各航空会社に通知した。これから予約する場合は、年末年始に向けて帰国を予定する日本人でも原則として受け付けない。」とあり、要請が1日からの対応を求めていたのか、例外を認めるのかは不明。

ただ、例外対応するにも航空会社の負担が大きいため実質例外は無いでしょう。

どのメディアも「日本に到着するすべての国際線」と書いてるので、感染者がほとんど出ていない国からも一律に、という要請になっているということ。

メディアが先走った?そんなことってある?

ネットでは既に海外の航空会社でないと国際線予約不可になっているという報告が。

確かに海外航空会社を利用すれば良いのかもしれませんが、そもそも就航していない所もあるでしょう。

国土交通省HPに記載無し、大臣会見で言及無し

大臣会見:斉藤大臣会見要旨 - 国土交通省

2021年11月30日(火) 11:00 ~ 11:10
国土交通省会見室
斉藤鉄夫 大臣

(大臣)私から報告はありません。

この「要請」については国土交通省HPに記載無し、大臣会見で言及無しでした。

おそらく法的根拠が無く拘束力も無い通知をしたと思われますが、この場合、国土交通省のHPに掲載されないということがよくあります。

乗車拒否と受け取られかねない事案が発生したことについて関東の鉄道各社に注意喚起の通知が為されたことがありますが、この通知は国交省HPには掲載されませんでした。

しかし、今回の措置はそんな小さい話ではなく、海外に居る日本人が帰国できなくなるという重大な事案であるため、なぜ掲載されないのか?いくつかの海外の大使館HPを見てもこの事には触れていませんでした。

在外邦人にとっては「ノーチャンス」だったわけですが、わざとノーチャンスにしたとしか思えません。

これが許されるのは
①オミクロン株が凄まじい感染力
②既に全世界で広まっていて流行国・地域を限定する暇が無い
③重症化率・致死率が高い

こういう事情が揃って初めて正当化の俎上に乗るはずですが…

水際対策強化に係る新たな措置(20)(オミクロン株に対する水際措置の強化)令和3年11月30日では、入国者総数の引下げとして「日本に到着する航空便について、既存の予約について配慮しつつ、新規予約を抑制する。」とだけあり、新規予約をゼロにするとまでは書かれていません。 

日本人帰国需要への対応を検討という共同通信の報道

共同通信 日本人帰国需要への対応、工夫検討と国交省 2021/12/1 20:52 (JST)12/1 21:09 (JST)updated

国土交通省は1日、日本に到着する全ての国際線の新規予約受け付け停止を航空各社に要請したことに関連し、日本人の帰国需要に対応した工夫をできないか検討していると明らかにした。

書いている間に12月1日の20時52分にこういう報道が。

流石に航空会社などの各所が抵抗したんでしょう。

最初から詰めておくべき。

オミクロン株でヒステリックになり日本国民の保護という国家のミッションが軽視されたように見える

私はパンデミック対応の政策に常に科学的根拠を求める立場には懐疑的ですが(たとえば昨年1月末からの措置は「科学的根拠」が揃ってからでは遅かった)、今回の対応は日本国民・在外邦人の保護義務を軽視した対応であり、且つ、法的根拠に基づかない要請で民間企業の人権問題でもあり、支持できません。

国際法の文脈で語られる「外交的保護権」や「邦人救出」は、他国・地域の領域での危機に際して主権国家に与えられる権利として構成されていますが、その淵源にあるのは【国家は国民を保護する役割がある】という信念でしょう。

参考:在外邦人保護義務と憲法 ―外交的保護と邦人救出―

オミクロン株がそんなにひどいなら、日本政府は流行国に向けてチャーター機を飛ばして救出しないのだろうか?2020年1月末~2月初旬のチャイナ武漢ではやったでしょう?

そして宿泊療養施設での隔離(隔離要請)。

現在の外国人の新規入国・再入国禁止の措置については以下で整理。

「入国後の(つまり検疫通過後の健康観察期間中)隔離を無視して連絡つかない人が出る」ことから仕方がないとする向きもありますが、そのためにそもそも帰国できないようにしろというのは順番がおかしくて、「GPS付けろ」「罰則付けろ」という話。

※検疫時の検査のための待機中の逃亡等には検疫法上の罰則があるが、健康観察期間中にはそれが無い

今回の要請と似たような措置を採っている国が無いわけではない。例えばモロッコ。

しかし、衛生緊急事態宣言下であり、法体系も異なるために単純比較できない。

こうした厳しい制限に至ったのは日本の医療提供体制の脆弱性にも一端があるのかもしれないが…

オミクロン株ショックと岸田政権 医療危機の“主犯”を放置するな(2/3ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト 田中秀臣 2021.12/1 14:00

 日本の医療提供体制の脆弱性は筋金入りである。海外に比べて一桁違う感染者数のレベルでも医療資源のひっ迫を引き起こし、政府は長期にわたる緊急事態宣言で国民全体に多大な犠牲を要求してきた。

ー省略ー

学習院大学の鈴木亘教授は著書『医療崩壊 真犯人は誰だ』(講談社現代新書)で、日本の医療崩壊の「主犯級中の主犯」として政府のガバナンス不足を指摘した。

鈴木教授によるとコロナ禍は「想定外」ではなく、事前に対応可能な行動計画があったにも関わらず、平時でそのための準備が行われていなかったという。そのため、いざ危機が生じたときに政府内の縦割りの弊害が生じ、都道府県と政府の調整が難航した。地域をまたいだ医療資源の活用にも失敗し、基礎自治体(市町村)と地域の医療ネットワークの分断が起きた。

この問題意識はともかく、今回の岸田政権の対応はオミクロン株でヒステリックになり、国家の国民の保護義務を蔑ろにした余りに酷いもののように映ります。

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