事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

共同通信「WHOライアンが日本の外国人入国禁止措置を批判、ウイルスは国籍を選ばない」⇒一般論を述べただけ

WHOライアン「ウイルスは国籍を選ばない」

共同通信によるWHOのライアン氏に関する報道がミスリーディングです。

共同通信の煽動記事をそのまま利用する日本メディア|Nathan(ねーさん)|note

 

共同通信「WHOライアンが日本の外国人入国禁止措置を批判」

共同通信 ウイルスは国籍見ないと批判 2021/12/2 07:45 (JST)12/2 14:38 (JST)updated

【ジュネーブ共同】世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するライアン氏は1日、新型コロナウイルスのオミクロン株出現を受けて日本が導入した全世界を対象とする外国人入国禁止措置について「疫学的に原則が理解困難だ」と指摘した。「ウイルスは国籍や滞在許可証を見るわけではない」と述べ、自国民か否かで判断するような対応は「矛盾している」と批判した。
 WHOは渡航の一律制限に否定的な見解を示し、ウイルス検査などを活用するよう呼び掛けている。ライアン氏は1日の記者会見で、日本の対応について「公衆衛生上の観点からも論理的とは言えない」と語った。

共同通信が「WHOのライアンが日本の外国人入国禁止措置を批判」とする記事をUP.

会見の動画を確認したら日本を名指しにしているわけではありませんでした。

そもそも外国人の入国をすべて禁じているわけでもありませんが、詳しくは以下で整理しています。

WHOの12月1日のメディアブリーフィングの動画

関係する部分は動画の34分38秒~40分のあたり。

ブリーフィングの進行役のChristian Lindmeier(CL)の発言から共同通信のトモ・〇〇チ記者(デグチorヒグチorキクチか)が質問していると分かります。

共同通信記者が日本の対策について否定するよう要請(!?)

Tomo

even after you sent out the advice saying that the blanket travel ban is not effective in presenting the international spread of the new variant. More and more countries are implementing such measures like Japan they're now banning all known Japanese to enter the country

Could you please send a stronger and clearer message to the countries which are acting not based on scientific evidence thank you.

※トランスクリプトを確認したら"all known Japanese" ではなく"all non-Japanese"でした。

これ、共同通信記者が質問じゃなくて「要請」してるわけです。

ちょっと意味がわからない言動です。

※訂正:"banning all known Japanese to enter the country" と書き出したところは"banning all non-Japanese to enter the country" でした。

CLとしてもどういう趣旨か分からなかったのでしょう。共感します。

以下、どういう質問であったのか確認を取っています。

CL

Tomo,we're not very sure if we understood everything right it was quite interrupted but if I get it right it was about the possible travel restrictions put up by Japan right now in planet. Is that what you're asking?

Tomo

Yeah basically. Could you please send it clear message that blanket travel ban is not effective.

CLは「今現在日本で採られている渡航制限について尋ねていると思ったが、何を訊いているのか?」と確認。

共同記者は「基本的にそうだ」としながら「日本国での」を外して一般的な言及の仕方で包括的な渡航制限が効果的ではないことを明確にしてくれと再度お願いしています。

この時点で、「日本国の対策」に関する質問ではなくなっているのが分かります。

「包括的な渡航制限」としか言っていないので、国民外国人関係ありません。

この一連のやりとりからは、「日本の対策は単なる例示」という扱いが為された、ということになります。

Dr Jaouad MahjourとMichael Ryann「ウイルスは国籍を選ばない」

先にDr Jaouad Mahjourが回答し、包括的渡航禁止はウイルスの流行を止めることは無いが、代わりに総合的な対処方法を採るべきであり、加盟国・地域はルールに則り、自身の国・地域を守るために追加的な措置を講じることができる、ただ、常に明確な公衆衛生上の正当性、科学に基づいていなければならない、と主張しました。

次にライアンが回答しています。以下、書き起こしですが、後日トランスクリプトが以下で公開されるハズです。

https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/media-resources/press-briefings

Ryan

When we talk about risk-based approach or enhanced methods there are ways that you can de-risk travel in terms of having increased testing more testing before departure more testing on arrival and quarantine until negative testing. There's whole series of things that can be done. That will manage the risk of importation of desease or even exportning disease to another country, whichi falls short of blanket bans. There's also some inherent internal contradictions in these bands we've seen these before where you ban flights except for your own citizens. I mean epidemiolgically, I find it hard to understand the principle there is that some passport holders will have the virus and some won't does the virus read you passport does the virus know your nationality or where you're legally resident so therefore there are contradictions in this so our concern here is that we apply public health principles not political principles to selecting measures that are used to control the spread of disease. And that those measures are targeted at reducing transmission of the virus while presenting the least possible imposition on the individual's rights and freedoms of movement which is a cherished freedom all over the world. There are economic and social consequences to travel bans prticularly blanket travel bans but there are circumstances in which in modifying travel in reducing travel and in adding more checks within the process of travel can help to reduce or at least delay the spread of some disease.

まず最初の太字部分が「ウイルスは国籍を選ばない」と報道されている部分。

ただし、その後に『渡航を修正したり減らしたりすることは病気の感染拡大を減らしたり少なくとも遅らせることができる状況がある』、とも言及しています。

以下続き。

But that in no way should be even used as a single measure. The director general has said it intensifying current surveillance and testing in countries you are going to miss cases they're going to come in your land borders they're going to come in through third and fourth airports, so the idea that you can put a hermetic seal on most countries is just frankly not possivle we all that we've seen that happen before. And certainly there has to be consistency in that. If they are being applied they have to be consistent and certainly we've seen a lot of inconsistency with countries for example in Africa having banned travel and they haven't had a single confirmed case in other countries with confirmed cases and evidence of local transmission with no travel bans. So I'm not saying one is right or one is wrong. What I'm saying is I can't see the logic certainly from a public health or an epidemiological perspective.

ライアンは、「例えば」として「アフリカに関して、1つも確定例が出ていない国を渡航禁止にしながら確定例が出ている国には渡航制限をしないなどという措置が行われているが、それは公衆衛生や疫学の観点からは理解不能だ」と言っています。

同時に「何が正しくて何が間違っているといっているのではない」とも言っています。

要するに、専門家として公衆衛生や疫学の価値基準から判断した場合にはそのように映るが、各国の政策の是非を論じているわけではないということです。

ましてや日本国の政策を念頭に置いて主張しているわけではありません。

どの国にも当てはまるような、一般的な理屈を説いているにすぎません。

外国人と同胞とで扱いを分ける政策上の妥当性は存在する

「ウイルスは国籍を選ばない」というのは、確かにその通り。

この理屈を否定することは出来ないでしょう。厳密には人種によって多少の感受性の違いがあり得るのかもしれないが、一般的な科学的真実ではないだろう。

しかし、同時に、外国人と同胞とで扱いを分ける政策上の妥当性は存在します。

国家には国民の保護義務があります。国民は移動の自由・出入国の自由があります。

対して外国人には入国の自由はありません。

これは国際法・憲法のいずれにおいても常識です。たまに妙な思想にかぶれた人(弁護士でも居るが)が滅茶苦茶なことを言っていますが、相手にされません。

当該国の「キャパシティー」というものがあります。

物的人的資源が無制限ではない以上どこかで線引きして制限を加える必要があります。

そのための基準として国籍の有無が機能しています。これはどの国も同じ。

それは公衆衛生学や疫学の範疇ではないのでしょうから、その観点からは「理解不能」となるのは当たり前なのです。

共同通信記者のマッチポンプと煽り記事の問題

こういう記者会見における質問とその受け答えを都合よく構成した記事はメディアにおいて枚挙にいとまがありません。情報パンデミックです。

また、質問をして回答を得ながらその社では発言内容が書かれない、ということもよくあります。他のメディアでは書かれているように耳目を集める話題なのに。

記者会見ではない場面の話で最近で酷いのはオリンピックの選手村の話でしょう。

以下は共同通信がロシアメディアの報道内容について垂れ流したもののフェンシング協会の太田氏がロシアに確認したらまったく異なる話だったという案件。

悪質なまとめサイトのようなタイトル詐欺をする共同通信。

地方自治体から正式に事実誤認でクレームを受ける始末。

なるほど、若手記者が連続退職するわけです。

部内騒然 共同通信の若手記者が連続退職 原因の大半は“エリート上司”の言動(文春オンライン) - Yahoo!ニュース

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