事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

令和3年皇位継承ヒアリング開催の経緯

皇位継承ヒアリング

令和3年皇位継承ヒアリング開催の経緯から見えてくる問題点をあぶりだします。

「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議

「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議|内閣官房ホームページ

「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」(平成 29 年6月1日衆議院議院運営委員会・同月7日参議院天皇の退位等に関する皇室典範特例法案特別委員会)の一において示された課題について、様々な専門的な知見を有する人々の意見を踏まえ議論し整理を行うため

これが令和3年皇位継承ヒアリングの開催の趣旨です。

根拠に「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の附帯決議があるのが分かります。

この有識者会議では「女性宮家の創設等」が議論されましたが、その中には旧皇族の皇籍復帰、養子縁組、女系天皇の容認なども同時に議論されました。

「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」成立沿革とその附帯決議

天皇の退位等に関する皇室典範特例法(平成29年6月16日法律第63号)

閣法 第193回国会 66 天皇の退位等に関する皇室典範特例法案

衆議院提出時法律案・修正案

天皇の退位等に関する皇室典範特例法案:参議院

提案理由・衆議院議院運営委員長報告・参議院天皇の退位等に関する皇室典範特例法案特別委員長報告(附帯決議の内容)

○附帯決議(平成二九年六月一日)※衆議院附帯決議
一 政府は、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題であることに鑑み、本法施行後速やかに、皇族方の御事情等を踏まえ、全体として整合性が取れるよう検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告すること。
二 一の報告を受けた場合においては、国会は、安定的な皇位継承を確保するための方策について、「立法府の総意」が取りまとめられるよう検討を行うものとすること。
三 政府は、本法施行に伴い元号を改める場合においては、改元に伴って国民生活に支障が生ずることがないようにするとともに、本法施行に関連するその他の各般の措置の実施に当たっては、広く国民の理解が得られるものとなるよう、万全の配慮を行うこと。
右決議する。

○附帯決議(平成二九年六月七日)※参議院附帯決議
一 政府は、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題であることに鑑み、本法施行後速やかに、皇族方の御事情等を踏まえ、全体として整合性が取れるよう検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告すること。
二 一の報告を受けた場合においては、国会は、安定的な皇位継承を確保するための方策について、「立法府の総意」が取りまとめられるよう検討を行うものとすること。
三 政府は、本法施行に伴い元号を改める場合においては、改元に伴って国民生活に支障が生ずることがないようにするとともに、本法施行に関連するその他の各般の措置の実施に当たっては、広く国民の理解が得られるものとなるよう、万全の配慮を行うこと。
右決議する。

「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」に上掲のような附帯決議が付されることになったきっかけは、次項で示す、いわゆる「衆参正副議長とりまとめ」です。

「天皇の退位等についての立法府の対応」に関する衆参正副議長とりまとめ

天皇の退位等についての立法府の対応について

平成28年8月の天皇陛下のお言葉を踏まえての皇室のあり方をめぐる国民的な議論が行われていることを含めた各般の状況に鑑み、立法府としてどのような対応をとるべきか両議院正副議長において協議を行った結果、平成29年1月16日、本件については、両議院合同で取り組むことを合意しました。
 これを受けて、以下の会議等を開催しました。

累次の会議を経て、平成29年3月17日「天皇の退位等についての立法府の対応」に関する衆参正副議長による議論のとりまとめ 全体会議で了承、内閣総理大臣に手交されました。安定的な皇位継承に関する議論をすすめることについて附帯決議に盛り込む方針の根拠はここです。

5.安定的な皇位継承を確保するための方策についての検討及び国会報告につ
いて

安定的な皇位継承を確保するための女性宮家の創設については、政府において、今般の「皇室典範の附則の改正」及び「特例法」の施行後速やかに検討すべきとの点において各政党・各会派の共通認識に至っていたが、その検討結果の国会報告の時期については、「明示することは困難である」とする主張と「1年を目途とすべきである」とする主張があり、国会における法案審議等を踏まえ、各政党・各会派間において協議を行い、附帯決議に盛り込むこと等を含めて合意を得るよう努力していただきたい。

この方針の萌芽は、天皇の退位等についての立法府の対応に関し各政党・各会派からの意見聴取(平成29年2月20日)において示された各政党・各会派提出資料にありました。

会議開催の冒頭で「平成28年8月の天皇陛下のお言葉を踏まえて」とあるように、きっかけは上皇陛下による「譲位」に関するおことばでした。

「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことばとそれまでの経緯

象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば(ビデオ)(平成28年8月8日)

上皇陛下が「譲位」の意向を示されたのが上記のおことばの場面。
※このおことばによって譲位が決定・予定されるようになったものではなく、前掲の天皇の退位等についての立法府の対応によって特例法が制定・施行され儀式が執り行われることによって「退位」と「践祚・即位」が行われた。

これを受けて「退位特例法」が制定され、それに伴う皇位の安定的継承に関する議論をすすめるべきとされましたが、平成24年の有識者ヒアリングで議論をするべきとされながらその後、「皇位の安定的継承」や「皇族方の減少」というワードが国会で登場するのは平成29年であり、その間の空白が見られます

つまり、上皇陛下が譲位を申し出なければ、現在の議論は進んでいなかったと言えます。 それ以前の議論は、民主党野田政権時に開催された皇室制度に関する有識者ヒアリングまでさかのぼります。
(元URL:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/koushitsu/yushikisha.html

皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理 平成 24 年 10 月5日 内閣官房

(元URL:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/koushitsu/pdf/121005koushitsu.pdf

なお、今回の検討では、皇室の御活動維持の観点から、緊急性の高い女性皇族の婚姻後の身分の問題に絞って議論を行ったが、現在、皇太子殿下、秋篠宮殿下の次の世代の皇位継承資格者は、悠仁親王殿下お一方であり、安定的な皇位の継承を確保するという意味では、将来の不安が解消されているわけではない。安定的な皇位の継承を維持することは、国家の基本に関わる事項であり、国民各層の様々な議論も十分に踏まえながら、引き続き検討していく必要がある。
皇室制度については、この他にも、有識者ヒアリングにおいて識者から言及のあったとおり、様々な意見があり、今後、より議論を深めながら、国民の合意形成を進めていく必要がある。

さらにそれ以前は皇室典範に関する有識者会議報告書 平成17年11月24日

(元URL:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kousitu/houkoku/houkoku.html

があり、これが皇位の安定的継承に関する議論の最初のもので、悠仁親王殿下がお生まれになる前のことでした。

その後、悠仁親王殿下がお生まれになったことで、議論が停滞していました。

なお、平成17年有識者会議では女系天皇を認める方針が示されましたが、その報告書の内容の瑕疵について【女系天皇・女性天皇・女性宮家】皇室典範に関する有識者会議の報告書のデタラメぶり - 事実を整える

皇室の儀が政治マターになっていることによる議論の懈怠・遅延

平成17年から平成24年、その後の平成29年までと、平成31年4月30日の「譲位」から令和3年3月23日まで、皇位継承に関する議論に空白が生まれていたことを見てきました。

このような空白は、皇室の儀が政治マターにならざるを得ない法体系が原因です。

宮務を政治マターにしている現行皇室典範の位置づけ|Nathan(ねーさん)|note

まとめ:令和3年皇位継承ヒアリング開催までの経緯

  1. 平成17年:皇室典範に関する有識者会議報告書にて女系天皇容認の方針
  2. 平成18年:悠仁親王殿下ご誕生
  3. 平成24年:皇室制度に関する有識者ヒアリングにて女性宮家の創設が議論され、論点整理が示される
  4. 平成28年:上皇陛下による「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」で「譲位」の意向が示される
  5. 平成29年:天皇の退位等に関する皇室典範特例法附帯決議にて皇位の安定的継承に関する議論をすすめる旨が記述される
  6. 平成31年:退位特例法が施行
  7. 令和元年:今上天皇践祚・即位
  8. 令和3年:「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議が開催。旧皇族の皇籍復帰についても議論される。ヒアリングは3月23日から6月8日まで。今後、とりまとめ。

ひとまずはこのようにまとめられます。

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