抗インフルエンザウイルス薬であるタミフルと、副作用による異常行動(飛び降り)の因果関係と10代使用制限について。
- タミフルの10代使用制限は解除済み
- タミフルの副作用による異常行動(飛び降り等)との因果関係
- 抗インフルエンザウイルス薬と異常行動の検索結果について
- 「10代へのタミフル解禁後に異常行動が増加したからタミフルが原因だ」というデマについて
タミフルの10代使用制限は解除済み
「タミフル」の10代使用制限を解除 ─異常行動への注意喚起は継続[医療安全情報UpDate]|Web医事新報|日本医事新報社
厚生労働省は21日、抗インフルエンザウイルス薬7剤の添付文書改訂を日本製薬団体連合会に指示した。
「タミフル」(一般名:オセルタミビル)については、服用後の異常行動による転落死事例を理由に10代への使用を「原則として差し控える」としていた「警告」の記述を削除する。インフルエンザ罹患時には、薬の種類や服用の有無に関係なく異常行動が発現するという、厚労省研究班の調査報告に基づく判断。
タミフルの10代使用制限は2018年8月21日に解除済みです。
薬 生 安 発 0821 第 1号平成30年8月21日 厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長
なお、タミフル以外の抗インフルエンザウイルス薬については、年代別の制限はありませんでした。
タミフルの副作用による異常行動(飛び降り等)との因果関係
タミフルの副作用による異常行動(飛び降り等)の因果関係については、従前から慎重な評価が加えられてきましたが、前記の厚生労働省通知の直前には以下の決定がありました。
抗インフルエンザウイルス薬の安全対策について 平成30年7月13日 医薬安全対策課
○ 平成 21 年以降の非臨床研究及び 10 年に及ぶ疫学研究の科学的な知見を総括し、以下の事実から、タミフル服用のみに異常行動と明確な因果関係があるとは言えないことが確認された。
・ 抗インフルエンザウイルス薬の処方の有無、種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には異常行動が発現
・ タミフル及び他の抗インフルエンザウイルス薬ともに、発現頻度は10 代と 10 歳未満とで明確な差はない
○ インフルエンザ罹患時に異常行動が発現していることを鑑みれば、タミフルを含め、薬剤と異常行動の因果関係の否定も困難であり、因果関係は未だ不明と言わざるをえないが、タミフルのみ積極的に 10 代患者の原則使用差し控えの予防措置をする必要性は乏しい。
○ 今後は、タミフルの 10 代患者のみに強い注意喚起を継続するのではなく、いずれの薬剤の服用時も含め、インフルエンザ罹患時の患者全般に幅広く異常行動のリスクがある旨の注意喚起を強め、より一層医療関係者、保護者への周知徹底を図るべきである。
「薬剤と異常行動の因果関係の否定も困難 」という文言があるように、「因果関係が否定された」とは言えませんが「明確な因果関係があるとは言えない」という結論が出ています。
※「因果関係が否定される」と言い切られることは非常に稀。
また、10代の患者へのタミフル使用が差し控えられていましたが、それ以外の年代には使用が差し控えられていなかったということも分かります。
そのうえで、インフルエンザ罹患時には薬剤の服用をしているかどうかは関係無く、異常行動のリスクがあるとして、注意喚起がなされています。
議論の経過と関連研究については以下で報告されています。
タミフルと異常行動等の関連に係る報告書 薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会 安全対策調査会
抗インフルエンザウイルス薬と異常行動の検索結果について
現状、抗インフルエンザウイルス薬と異常行動と関連付けられるものとしてタミフルが有名ですが、後者で検索すると「異常行動」や「副作用」がサジェッションに上がることがあり、検索結果も2007年の厚労省の「警告」文書が上位表示されるなど、情報が更新されていません。
この事は厚労省に意見しましたが、反映されるとしても時間がかかるかもしれません。
「10代へのタミフル解禁後に異常行動が増加したからタミフルが原因だ」というデマについて
検索すると「10代へのタミフル解禁後に異常行動が増加したからタミフルが原因だ」というデマを書いているページがありますが、以下を引用していたので見ていきます。
平成29年度第8回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 資料
タミフル解禁後の2018/2019シーズンは、インフルエンザの流行が過去10シーズンでピーク時患者が最も多く、患者数が2番目に多かったという事情があります。
しかし、重度の異常な行動の報告数は4番目でした。
異常行動の服用薬別の報告件数では、タミフル(オセルタミビルリン酸塩)とその他の薬、そして服用無しとでは特に違いはないということが分かります。
それぞれの母数を考慮した評価においても、これは変わりません。
タミフル等の数字だけをみても、異常行動等の割合が意味のある増え方をしている事実はありません。
令和元年10月29日令和元年度第9回安全対策調査会 抗インフルエンザウイルス薬の副作用発現状況の推移
デマページは「医師が報告を控えているだろう」とかなんとか書いていますが、まぁ、そうするインセンティブなんて何も無いので、意味の無い妄想です。
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