【厚生労働省の統計不正問題】とは何でしょうか?
今国会を騒がせている問題ですが、間違った理解をしている人がそれなりに居ます。
また、メディアも誤解させる報道をしています。
どう誤解させるようになっているのかを整理します。
- 厚生労働省の毎月勤労統計不正問題は3つ
- 「安倍総理の関与による賃金上振れ」がアベノミクス偽装とする野党&メディア
- 「アベノミクス偽装」は30人以上の事業所の話
- 総数入れ替え方式から部分入れ替え方式への変更
- 「官邸が怒っている」は否定も報道が再燃
- 勤労統計で「実質賃金指数が上振れしたのは官邸の意向」なわけない
- 総理秘書官=総理が検討会に働きかけたことが問題?
- まとめ:厚労省の統計不正=アベノミクス偽装というフェイク
厚生労働省の毎月勤労統計不正問題は3つ
厚労省が【平成 31 年1月 11 日 毎月勤労統計調査において全数調査するとしていたところを一部抽出調査で行っていたことについて】というプレスリリースを出してます。
毎月勤労統計不正問題とは次のことを指します。
- 「500 人以上規模の事業所」全数調査をするとしていたところを一部抽出調査で行っていたこと
- 「500 人以上規模の事業所」統計的処理として復元すべきところを復元しなかったこと
- 調査対象事業所数が公表資料よりも概ね1割程度少なくなっていたこと
この中でも1番の「全数調査をするとしていたはずが一部抽出調査(サンプル調査)しかしていなかった」ということが毎月勤労統計不正の核心部分です。
しかし、野党やメディアは別の話と混同させようとしています。
「安倍総理の関与による賃金上振れ」がアベノミクス偽装とする野党&メディア
統計変更、政権の意向は? 秘書官「問題意識」→厚労省検討会→財務相「改善を」 野党「賃金上振れ狙い」|【西日本新聞】
厚生労働省の毎月勤労統計で、昨年1月以降の賃金上昇率が異常な上振れを示すことになったのは調査手法が変更されたためだった。厚労省はなぜ従来のやり方を変えたのか。経緯を検証すると、賃金上昇率の伸びでアベノミクスの成果を示したかった安倍晋三政権の意向が浮かんでくる。
厚生労働省の【毎月勤労統計の改善に関する検討会】において、検討会としては第5回の議事録で総入れ替え方式の方針だったのに第6回では部分入れ替え方式について話題になり、現実に部分入れ替えになったことが「安倍官邸の意向を受けたものであり、問題だ」という野党・メディアの動きがあります。
これは上述の厚労省の毎月勤労統計不正問題とはまったく別個の話です。
そして、なんら不正でも倫理上の問題ですらありません。
「アベノミクス偽装」は30人以上の事業所の話
事業所の規模とは、事業所規模1,000人以上、500~999人、100~499人、30~99人、5~29人に分類されています。
繰り返しますが、毎月勤労統計不正問題とは、「500 人以上規模の事業所」については全数調査をするとしていたところを一部抽出調査で行っていたことです。これは全数調査が義務なのにしていなかったという問題です。
野党・メディアが「アベノミクス偽装」と騒いでいることは30人以上499人以下の事業所(中規模事業所)の話です。こちらはサンプル調査で行われており、そのこと自体は問題ではありません。
※この部分は当初「30~99人の事業所の話」と書いてきましたが、訂正します。
両者はまったく別問題だということが分かるでしょう。
この二つが別個の話ということがわからないように報道がされてますし、野党も質疑において両者を明確に分けていません。
では、30人以上の事業所の話で何がアベノミクス偽装と言われているのか?
総数入れ替え方式から部分入れ替え方式への変更
2015年9月16日 第6回毎月勤労統計の改善に関する検討会 議事録では、第五回の議事録において検討回としては総数入れ替え方式(ローテーション方式)にする方針だったのが第六回で突如部分入れ替えの話になっていたという点が指摘されたことが発端となりました。
部分入れ替え方式は、総入れ替え時に発生するサンプルの違いによるギャップ(サンプル対象企業の業績によって大きな影響が出る場合がある)の縮減を図る観点、また、ギャップの縮減により結果的に精度の向上に貢献する可能性もあることから検討されたのです。
これに関連して「総理秘書官が検討会の委員に働きかけた・実質賃金指数の低下に官邸が怒っている・入れ替え方式の変更によって賃金指数が上振れした」などと言われているのが現在喧伝されている「アベノミクス偽装」です。
「官邸が怒っている」は否定も報道が再燃
「官邸が怒っている」という話については2月12日の菅官房長官記者会見において否定されていました。
平成31年2月12日(火)午前 | 平成31年 | 官房長官記者会見 | 記者会見 | 首相官邸ホームページ
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) February 12, 2019
またイソコが存在していない事実を前提にして質問している
それについて菅官房長官が強い口調で「激怒していることはありません」と
この部分をあげつらう輩が出そうな悪寒。https://t.co/ZGsjztrYh9
これ、既に望月イソコが質問して菅官房長官が否定してる話なんだが、記事に「委員が厚労省担当者から聞いたと西日本新聞の取材に証言した」とあるように【二重伝聞】に過ぎないんですよね。https://t.co/kl4RN80MN9
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) February 15, 2019
二重伝聞の話で否定されている話を追加取材もなく再度報道する西日本新聞。
他の大手新聞も報じていました。それを受けて野党議員が国会質疑を行っていました。
みごとな連携プレーですね()
勤労統計で「実質賃金指数が上振れしたのは官邸の意向」なわけない
2015年に官邸が統計サンプリングの手法を提案する(違法でも倫理的に問題でもない)。見直して18年にサンプル変えた。それが何の意味が? 18年の数年前に安倍政権のいいようにサンプル変更させた? 手法変更でそんなこと不可能。数年前に経済状況を完全把握&サイコロの目も完全予見でないと無理 笑
— 田中秀臣 (@hidetomitanaka) February 24, 2019
この統計問題は、モリカケ以上に素人だましで、何にも考えてない人をいかにひっかけ、そしてまともな経済政策を「偽装」として貶めてることで、数段たちが悪い。この種の報道に引っかかる人は見込みがないか、基礎教養から出直した方がいいし、またこれを利用するマスコミや識者はどうかしてる
— 田中秀臣 (@hidetomitanaka) February 24, 2019
「サンプル調査の部分入れ替えで指数を良くみせかける」という神業はどうやったらできるというのでしょうか?
統計を良く見せるようにするには、そのサンプルが「全体の中で良い」ということがわからないといけません。つまり、全数調査をしないと不可能です。
サンプル調査である30人以上の事業所について、総理官邸がそんなことを狙うと考える意味が分かりません。この説を論じている者どもの理解力に苦しみます。
総理秘書官=総理が検討会に働きかけたことが問題?
さて、最後に「ガバナンス」の問題が残りました。これは問題なのでしょうか?
総入れ替え方式については3年毎に総入れ替えをしていました。
それに伴って統計データを遡って修正していたので、統計ユーザーから分かりにくいという不満があったし、問題点も指摘されていました。
それを考慮して欲しいと総理秘書官が委員に対して個人的な場で意見を言っただけで、何が問題なのかさっぱりわかりません。
「総理秘書官は所管省庁ではなく説明責任がないから」という指摘をする者が居ますが、意味不明なことを言ってる自覚がないのが世も末です。
「内閣側」の人間が何かする毎に、一挙手一投足が「権限行使」になると考えてるのでしょうか?そんなことは在り得ません。
【検討会で決めるべきとされたことを総理大臣が裏で結果を操作しようとした】
そういう疑念すら起こさせないべき、というのであればそれは「外形的公正性」の話でしょう。それは橋下徹氏が常々提唱していることです。
首相秘書官が首相を忖度するのは当たり前。首相を忖度しない秘書官など役立たず。首相が逐一指示を出さなくても、秘書官が首相の意向を汲んで動くのは組織行動の当然の原理。あとは外形的公正性をしっかり保つ行動をすべきで、この意識が霞が関には完全・決定的に欠けている。
— 橋下徹 (@hashimoto_lo) February 22, 2019
現段階では、総理秘書官がどういう経緯で意見を言ったのかという内容によっては外形的公正性の話になり得る、という程度です。
まとめ:厚労省の統計不正=アベノミクス偽装というフェイク
テレビ報道やラジオ、新聞記事から維新以外の野党議員による質疑に至るまで、常に「アベノミクス偽装」という無理筋のストーリーを前提にしています。
こんなどうしようもない疑惑をふっかけるだけで総理秘書官を参考人招致しようとするのですから、3分遅刻するよりもよっぽど国会運営費の無駄遣いでしょう。
以上