事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

旧皇族男系男子の養子・皇室復帰のための現行法体系の変更予測と光格天皇の先例

光格天皇の先例から学ぶべきことは多いと思う

旧皇族男系男子の養子や皇室復帰のための現行法体系の変更予測

1⃣法律の効果による皇籍復帰

2⃣立法化された皇室の養子制度による皇籍復帰→これを採用
①皇族が養子を取ることを禁止する皇室典範9条等の改正
皇室典範9条等を回避する特別法立法→これを採用?
 (1)対象範囲は書かない
 (2)対象範囲を明記→これを採用?

現時点ではこのように予想しています。

元々、法律に対象範囲は書かない方かな?と思っていたのですが、11月17日の衆議院内閣委員会の答弁で予測が変わりました。

その上で、どの者が対象になるのか?青年男子単独?夫婦養子?幼年男子養子?というところから始まり、皇位継承権は当代から?次代から?という分岐が出てきます。

皇室典範の改正の仕方を考えれば、旧皇族の男系男子の意向確認と国会での議論との時間的関係が決まってくると思われます。

また、どのレベルまでを国会で審議して、皇室会議等の別の会議体で決定をするのか、という話も、今後は争点になるのではないでしょうか。

旧皇族男子の皇籍復帰に必要な皇室典範の条文規制回避

・非嫡出子は皇族としない(皇室典範6条)
・皇族は、養子をすることができない(皇室典範9条)
・皇族以外の者及びその子孫は、女子が皇后となる場合・皇族男子と婚姻
する場合を除いて皇族となることがない(皇室典範15条)

現行皇室典範には、これらが定められています。

法律によるダイレクトな皇籍復帰にしろ、養子という行為を介在させるにしろ、皇室典範6,15条の禁止を回避する必要があります。

特例法の先例は【天皇の退位等に関する皇室典範特例法 平成二十九年法律第六十三号】があります。上皇陛下が今上陛下に「譲位」する際に立法化されたものです。

令和3年の有識者会議の設置根拠も、この法律の附帯決議によるものでした。

この有識者会議HPの所管は、「内閣官房皇室典範改正準備室」です。

「養子縁組(猶氏)+皇族女子との婚姻」という歴史上の先例

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/taii_tokurei/dai2/siryou6.pdf:八木秀次

夫婦養子以外の方法で皇籍復帰した場合、過去の先例と同様の状況になると言えます。

第119代天皇の光格天皇、現在の皇室に直系で連なる皇祖です。御称号は祐宮。師仁王(のちに兼仁王)。

後桃園天皇が危篤となった際に後継ぎ問題が生じたため、後桃園天皇の唯一の子である欣子内親王を新天皇の妃にする構想により、祐宮が9歳の時に危篤の後桃園天皇の養子となり(猶氏)、15年後に欣子内親王を中宮に冊立(婚姻)した経緯があります。

現行皇室典範では、皇族同士の婚姻は当然のごとく予定しています。

皇室典範12条 皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。

皇籍復帰した者が皇族女子と婚姻した場合、光格天皇と類似の状況になると言えます。

祐宮は閑院宮典仁親王(没後90年に太上天皇の尊号と慶光天皇の諡号が追贈)の第六王子であり皇族でしたが、「養子(猶氏)+皇族女子(前天皇の子)との婚姻」という手段をもって皇位継承されたということです。

「女性宮家」という用語と「皇族女子が婚姻後も皇室に残る」こと

現在の政府は、皇室典範特例法附帯決議に関する有識者会議の報告書を受けて、大きく3つの施策を検討しています。

  1. 内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとすること
  2. 皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の
    男子を皇族とすること
  3. 皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とすること  

このうち、③番については報告書では「①及び②の方策では十分な皇族数を確保することができない場合に検討する事柄と考えるべきでは」と主張されていました。

①は、メディアなどでは「女性宮家」と呼ばれることもあります。
報告書では附帯決議の文言の引用以外に「女性宮家」と記述されている所がない点は注意

が、考えられている実現形態にはバリエーションがあります。

その根幹は【女性皇族が婚姻後も皇室にとどまって公務を担うこと】です。

「女性宮家は女系天皇に繋がる」という危機感で語られることが多いですが、以下の場合はどうでしょうか?

  • 女性皇族の配偶者に旧皇族などの限定を付す(皇籍復帰を視野に)

最初に「女性宮家」と言い出した者が女系天皇容認派であったために、「女性宮家=女系容認」という図式で理解する人が多いのですが(実際、そういう目論見であったのは確か)、論理的に考えれば上記のように男系男子による皇位継承の伝統ルールを毀損しない限りにおいて「女性皇族が婚姻後も皇室にとどまって公務を担うこととなる」状況を認めることはあり得ることになります。

では、「女性皇族が旧皇族と婚姻することで皇籍復帰させる」という手法は、採り得るのでしょうか?

「皇統に属する男系男子の女性皇族との婚姻による皇籍復帰」という先例は、存在しないようです。そのため、「養子」という手段が第一に考えられるべき、という見解が伝統派からは多いです。

ただ、「養子(猶氏)+皇族女子(前天皇の子)との婚姻」という先例と単純比較した場合、皇籍復帰が先か皇族女子との婚姻が先か、という違いしかないように見えます。

逆に考えれば、皇族女子との婚姻をする段階になっているならば、養子とすることにつき抵抗は無いと言い得るでしょう。

どの段階まで国会で審議して、皇室会議等の別の会議体で決定をするのか

旧典範・旧憲法はそれぞれ宮務法体系の頂点、政務法体系の頂点としてほぼ独立したものでした。

大日本帝国憲法

第74条 皇室典範ノ改正ハ帝国議会ノ議ヲ経ルヲ要セス

旧皇室典範 第十一章  皇族會議
第五十五條 皇族會議ハ成年以上ノ皇族男子ヲ以テ組織シ內大臣樞密院議長宮內大臣司法大臣大審院長ヲ以テ參列セシム
第五十六條 天皇ハ皇族會議ニ親臨シ又ハ皇族中ノ一員ニ命シテ議長タラシム

旧皇室典範の【皇会議】は、天皇が親臨し、天皇が皇族に議長となるよう命じる権限があり、基本的な構成員は皇族方となっていました。

臣籍降下に関する話し合いも、この皇族会議において行われていたように、旧皇室典範までは、天皇・皇族に皇室の構成に関するイニシアティブ・プレゼンスがあったということが分かります。

ところが現行皇室典範の「皇会議」は、2名の皇族と8名の「臣下」ら(衆参議長・副議長、内閣総理大臣、宮内庁長官、最高裁長官及びその他の最高裁裁判官、)で構成されることとなっています。

天皇には皇室会議に関わることが許されていません。皇室全体の話であるはずなのに、天皇がここに加われないというのは奇妙なことではないでしょうか?

この状況が何を産んでいるのか。

皇室の儀が政治マターになっているから、選挙に悪影響が出る議題についてはずっと避けられてきた。

悠仁親王殿下ご誕生で議論を止めてしまった政治家たち。

上皇陛下が譲位を申し出なかったら、今も議論は進んでなかった。

令和3年の有識者会議の設置根拠が「退位特例法の附帯決議」という事実からは、上皇陛下の思し召しが無ければ現在の政府の検討は進んでいなかった、ということ。

令和5年11月に自民党が麻生太郎議員を座長にした「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」を開催し始めましたが、妹君が皇室に嫁いだ彼の立場がある内に決まればよいのですが…

安定的な皇位継承の確保に関する懇談会 有識者報告書について政府から説明聴取 | お知らせ | ニュース | 自由民主党

皇室内の事柄に関する議論の場の制度変更は今後行われるべきだとして、現在の喫緊の課題については、どの段階まで国会でオープンにするのか?という点も重要。

具体的な人物の選定過程についてはオープンにするべきではなく、この点を問題視する党や人物には要注意と言えるでしょう。

旧皇族に対する報道被害をどう抑えるか:羽生結弦選手報道被害から考える

旧皇族を皇室に迎え入れる際に立ちはだかる最も悪質な障害が【報道被害】でしょう。

皇室に嫁いだ女性に対するバッシングが(女性)週刊誌を中心に行われてきたことは論を待たないし、記憶に残っている方も多いでしょう。

さらに、最近では羽生結弦選手が受けた報道被害がありました。

親族や関係者に対して、ストーカー行為や許可のない取材が行われ、誹謗中傷となる報道が為された、という悲痛な報告。

これと同様のケースを生じさせないようにしないといけないし、発生した場合のサンクション(制裁)を厳しくする社会の圧力が必要ではないでしょうか。

このようなメディアに力を与えているのは、この種の記事・報道に反応して拡散する我々国民であり、そこに気づく人がより増えていって欲しいと思います。

それが旧皇族に対する報道被害を抑えることに繋がることを信じて。

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